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あぁ……我が先祖よ  作者: かましょー
上巻 〜血の呼び声〜
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第9話 『 異色の融合 』

翌日――。


真の鬼との戦いに向け、城下町と城内は慌ただしい熱気に包まれていた。


昨日まで怯えていた町人たちは、今や武器を手にしている。武尊や合いの子族の指導のもと、剣の振り方、間合いの取り方、陣形の組み方を必死に学んでいた。


ぎこちない動き。震える手。


それでも、確かな意志が宿り始めている。


「足を止めるな!動き続けろ!」


武者達の声が響く。


その指導は荒いが、真剣であった。武者達が“死地”を知っているからこそ、その言葉には重みがあ


る。




一方、


合いの子族達もまた、別の一角で武者たちを相手にしていた。


「鬼は正面から来るとは限らん」


赤い合いの子――ゴウキが低く言う。


「速さ、力、そして残忍さ……その全てが人間を上回る」




青い方は名をソウガといった。


「常識で測るな。生き残りたければ、常に“最悪”を想定するんだ」とソウガも人間達に助言する。


木刀を持った人間たちは息を呑みながら、その言葉を聞いていた。


異形の者から武士達が戦いを学ぶ――考えられぬ光景だった。


だが今は違う。


生きるためならば、誇りすら飲み込むしかない。




その時だった。




広場の端に、新たな影が現れた。


背の高い、一人の女。


しなやかな歩み。背には長弓。腰には薙刀。


長く黒い髪が風に揺れ、その眼差しは鋭く、まっすぐ前を見据えている。




人々のざわめきが、波のように広がった。


合いの子族も、武士も、町人も――その存在に自然と視線を向ける。


女は広場の中央に立つと、声を張った。




「我が名は(ともえ)


その声は、よく通った。




「桃藤様の命を受け、この地に馳せ参じた」




一拍置く。




「真の鬼を討つため――力を貸す」




その言葉に、空気が引き締まる。


巴の視線は、人間たちを、合いの子族たちを順に捉え――


やがて、キビへと向けられた。


鋭い視線と視線が、静かに交差する。




キビが歩み寄る。


巴の背の弓、腰の短刀に目をやる。


その目は、他の武士に向けるものとは違っていた。


測るような、見極めるような眼差し。




「巴、と言ったか」


キビが静かに口を開く。




「……あそこだ」


顎で示す。


広場の遥か先――一本の松の木。


「その矢、届くか?」


ざわめきが止まる。


巴は何も言わない。




ただ、ゆっくりと弓を取った。




空気が張り詰める。




武尊も、桃藤も、ゴウキもソウガも――自然とその動きに目を奪われていた。




弓を引く。


その姿に、一切の無駄がない。


巴が小さく呟く。




「……右上の枝だ」




次の瞬間――


矢が放たれた。


風を裂き、弧を描き、それは遠くの太い松の木の主枝ではなく、宣言した右上の枝へ見事に突き刺ささった。




「……!」




一瞬の静寂。


そして――歓声が上がった。


「すげぇ……!」


「当てたぞ……!」


どよめきが広がる中、


キビの口元に、ほんの僅か笑みが浮かんだ。


それは一瞬だった。


それを見たソウガが、小さく笑う。


「……キビがああいう顔をするのは、久しぶりだな」


ゴウキも黙って頷いた。


だが、キビはすぐに表情を戻した。


「悪くない」


そう短く言ったキビは、


「鬼の皮膚にも通る矢に変える」


と、それだけ告げて背を向けた。




――その後も。


城には続々と人が集まり始めた。


各地から駆けつけた武士団。そして、武装した僧たち――僧兵。


鬼襲来という不測の事態により、軍備を固めるには時間が足りず、数はまだ足りていないであろう。だが、“戦う意思”は集まりつつあった。


桃藤はその光景を静かに見つめていた。




増えていく仲間たち。


交わされる声。鍛えられる刃。


だが――


その瞳は、決して楽観していなかった。




(……死闘になる)




分かっている。




この中のどれだけが、生き残るのか。


そもそも――勝てるのか。


不安は、消えない。


それでも。


桃藤は目を逸らさなかった。


ただ静かに、己の軍を見つめ続ける。


迫り来る“その時”に向けて。

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