第14話 『喊声』
城門前の広場では、武尊が町人たちに最後の指導を行っていた。鍬を握る農夫、包丁を手に震える女性、木刀を構える若者——
一人の女性が前に出て、震える声で言った。「私の子を鬼に食わせたくない……。武尊様、教えてください。本当に私達は勝てるのですか?」彼女の目には涙が浮かんでいたが、決意も宿っていた。
武尊は彼女の手を取り、穏やかに答えた。「きっと勝てる。私達は表で戦う、あなたは中で子供を守るんだ。いざとなれば逃げて隠れてくれ。それでもいいんだ」
年老いた農夫の源次が、震える手で鍬を握りながら一歩前に出た。
「わしは戦なんてしたことねえ。鬼なんぞ、話でしか聞いたことねえんだ。正直にいうと、とても怖いんだ。……そんな年寄りが、ほんとに役に立つのか?」
武尊は源次の目を見つめ、静かに短刀を鞘から抜き、篝火の光に刃を映した。「源次殿、俺も怖かった。砂浜で仲間を失い、死ぬことしか考えられなかった」
武尊は一瞬目を閉じ、連真の生首が脳裏に浮かぶのを抑えた。「だが、怖いのは俺たちだけじゃない。鬼も、合いの子族も、何かを守るために戦ってる。俺たちは、家族を、故郷を、守るためにここにいる」
武尊は源次の肩に手を置き、穏やかに続けた。「家族のために戦うんだ。俺も、仲間達の仇を討ちたい。だが、それ以上に、生き残って、誰かを守りたい。源次殿、お主は松明を灯し続けるんだ、それが我々に闘志を与え続ける。それも立派な闘いだ」
源次は武尊の手をじっと見つめ、ゆっくり頷いた。「……わかった。武尊様がそう言うなら、わしもやる。孫のために、娘のために、生きるために……」彼の声は震えていたが、力が宿り始めていた。
その様子を見ていた他の町人のたちも前に出た。「源次爺さん、私もやるよ!子供たちを鬼なんかに渡さない!」その声に、周囲の町人たちや武士らが「おお!」と声をあげた。
篝火の光が、武尊たちの顔を照らし、広場に希望の火が灯った。武尊は短刀を鞘に収め、夜空を見上げた。「連真、俺はもう逃げない。生きるために戦うぞ」
その時、鏑矢がいくつも放たれ、うなるような甲高い音が空に響いた。そして地上では法螺貝の太い音、寺院の陣鐘が町に響き渡った。
武尊が海の方向へ顔を向け、声を張り上げる。
「来るぞ!全員配置へ着くのだ!」




