96話:風船は破裂するもの
マキは狼狽する。体を揺らすが、何かに吊るされていて、逃げることができない。
「よう。空の旅はどうだった?」
善永がにやにやしている。
「どうなっている!なぜ、俺はここに!」
マキが喚き散らしていると、善永がマキの頭上を指差した。
マキが見上げる。
「釣り針!エニィウェア・フィッシングか!」
よく見ると、善永の手元にはスマートフォンがある。善永は、八ッ場に電話することで、宙に浮いたマキを釣らせたのである。そして、善永の目の前にリリースするように頼み込んだのだ。
「さて、風船は無敵かもしれないが、その顔と頭は無防備なんだよな?」
善永は指の骨をポキポキ鳴らしている。
「お前は斎藤さんと有賀の仇だ。あの2人のどちらかがお前を倒す方がすっきりするだろうな。」
マキは震えながら善永を見ている。
「だがよお!お前みたいなくそったれ風船野郎は、俺が倒す!斎藤さんが手を汚さないためにも!腐った奴である、この俺が!お前を地獄に叩き落す!!」
「や、やめろ!俺が悪かった!」
「お前だけは絶対に許さん…一発では終わらせないぞ!」
そう言いながら、善永は勢いよくマキの顔面を殴りつけた。
「ぶびゃおう!」
マキは鼻血をたらす。続けて、善永の容赦ない蹴りが炸裂した。
「むめん!」
マキの顔から鼻血がたれ、歯が一つ落ちた。次に、善永の強烈なかかと落としが決まった。
「がっ!」
ついに、マキは気を失った。その瞬間、マキの体が発火し、周りにあったあらゆる風船が破裂した。それを善永が見ていた。そこにトミナガが燃えていたときのような哀れみはなかった。
「有賀…斎藤さん…斎藤先生…やりましたよ…」
善永は、マキが燃え尽きるまで、その場を離れないのであった。マキが燃え尽きたとき、善永は荘介やなぎさの様子を確認するため、部室に向かっていった。
部室に着くと、元通りになっていた荘介やなぎさが迎えてくれた。
「えいちゃん!無事でよかった!」
なぎさが善永に抱きつく。荘介は善永に歩み寄り、その肩を叩く。
「置いていかれたときはどうなるかと思ったぜ。」
「あれは…すまんかったな。」
三年生たちも安堵の表情で善永たちを見守っていた。
「だが、これで終わりではない。」
善永の発言に、皆が神妙な面持ちになる。
「俺たちが倒したのは、部下だ。ボスがいる。俺は、そいつを倒しにいく!」
「!」
「ついてくるか、こないかは任せる。ただ、それ相応の覚悟が必要だ。」
善永がどこかに向かおうとする。その場にいた皆が顔を見合わせるが、最初に荘介となぎさがついていった。それを見て、三年生も頷き、善永についていくのであった。
目的地に向かっている途中、ぼろぼろになった有賀が立っていた。
「お前、生きてたんだ。」
「勝手に殺すな!」
有賀は、どこかに向かう善永たちについていくのであった。
しばらく歩いていると、ある場所に到着した。善永はふと見上げる。理事長室と書かれたプレートが見える。善永は深呼吸して、理事長室のドアを開けた。小綺麗な部屋だ。黒色のソファーがあり、その向こうにデスクが見えた。そして、そこにいたのは…
「おや、皆お揃いで。何か用ですか?ノックぐらいしてもらいたかったんですが…」
ホワイトが、顔を隠しながら、ごそごそしていた。善永が口を開く。
「理事長、化粧でごまかしきれません。トミナガという男が死んだ今、あなたの正体が浮き彫りになる…」
「!」
ホワイトの動きが止まった。しばらく動かなかったが、ゆっくりと顔を見せた。善永以外の皆が驚愕する。
ホワイトの顔が老け込んでいたのだ。ほうれい線がくっきりとして、顔のしわも多くなっている。年齢は60歳ぐらいか。
「あんなに若かった理事長が…!こんな姿に!」
「ふふふ。あなただったんですね。トミナガとマキ、No.3親衛隊の双璧を倒したのは…」
ホワイトはにたりと笑う。善永は目をつむり、理事長室を俯瞰できる位置に視界を設置した。
「そんなに怖がらないで。私とおしゃべりしましょう?」
「断る。」
ホワイトは残念そうな顔をする。
「そんな酷い…ただ、一つ言っておきますけど、あなた方は私の兆能力範囲には入ってますからね?」
善永の挑戦状:本名を香田英一という、巨大風船に入るパフォーマンスで有名な大道芸人は誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:鈴木嘉和




