表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/109

95話:仇

有賀は助けを呼ぼうとするが、声が出ない。涙だけがぼろぼろと流れていた。いずれ、使用人が異変を感じ、家中パニックとなった。なんとか消火されたが、書斎とその周辺の部屋は真っ黒こげになった。

そして何よりも、有賀家にとって悲しかったことは、言うまでもなく幾太郎が焼死したことだ。葬式には多くの親戚が参列した。葬式では、彼が生前よく聞いていたチャイコフスキーの『眠れる森の美女』が流された。多くの参列者がそれを聞いて感傷に浸っていた。

その中で唯一、有賀だけは違った。それを聞いていると、あの出来事が思い出される。

(やめてよ…)

有賀は耳を防ぐ。それでも、音楽は鳴りやまない。

(やめろ…)

有賀は頭を抱える。それでも、耳にはチャイコフスキーの音楽が入ってくる。


「やめろっつってんだろおおおおおおお!チャイコフスキーなんか流すんじゃねええええええ!」


その日以来、有賀はチャイコフスキーの曲を一切受けつけることができなくなった。どうしても、幾太郎が死んだ日のことを思い出してしまうからだ。しかし、今回の場合、燃えているトミナガを目にすることで、チャイコフスキーの曲が流れるという現象が発生した。

マキがその様子を面白おかしく見ていた。


「懐かしいなぁ。有賀幾太郎。組織から抜けようとしたんで、俺が赤い風船を飛ばしたんだっけなあ…」


「…今なんて言った?」

「聞こえなかったか?俺がお前の父を殺したんだよお!」

その瞬間、光の光線がマキの左胸を貫く….ことができなかった。マキの周りに多種多様な風船が浮かんできて、マキを防御していたのだ。

「こうしてべらべら喋っている間にも、風船を浮かべていたのに気がつかなかったか?」

善永がマキの側にゆっくり歩み寄る。

「だが、攻撃できないのはお互い様だな。ここで風船を破裂させ、爆発でも起こしてみろ。お前も巻き込まれる。」

マキは、モヒカンを整えながら、善永の背後を見つめていた。

「そうだな。挟んだ者が勝つってわけだ。俺のようにな。」

有賀がばっと振り返る。風船が浮かんでいて、有賀と善永にゆっくりと近づいてきていた。

それでも善永は笑っていた。

「つまり、俺の勝ちってわけだな。」

その発言の意味を、マキは理解できなかったが、じきに知ることとなる。マキの後ろからビームが飛んできた。それはマキの肩を貫通し、さらにマキの目の前にあった赤い風船に命中する。

(こいつの兆能力はテレポートビジョンだったのか!俺の背後に視界を設置し、そこからアイビームを撃ちやがった!)

マキの目の前で風船が爆発する。その爆発によって、周りの風船も破裂し、大惨事を引き起こす。雷が落ちる、ムカデやヒルが辺り一面に飛び散る、ナイフがスズメバチを突き刺す…しばらくそのような状況が続いた後、教室の中に浮かんでいた風船はほとんどなくなっていた。その場にいた全員が息を切らしている。

「殺してやる…父の仇!」

「待て、有賀!斎藤先生の仇だ!そしてそれは、俺が討つ!」

「なんだと!?私がやる!」

「いや!俺が!」

2人がくだらない言い争いをしている間に、マキはごそごそ音を立てていた。善永は驚愕した。マキが大きな風船に入っていたのだ。マキの頭だけが風船から出ている形になっている。大道芸人の風船太郎を思い出す形だ。さらに、マキの頭にいくつかの風船が生え、マキを浮かばせた。風船おじさんこと鈴木嘉和を思い出す形だ。


『フルアーマー・バルーン』


「ここは逃げの一手だ。ビーム攻撃が2種類もあるのは厄介なんでね。」

「逃がすか!」

善永はアイビームで、マキの頭に生えている風船を狙う。同時に、有賀がビームでマキの体を包んでいる巨大風船を狙う。どちらも命中したが、どちらもはね返されてしまった。

「無駄だ。フルアーマー・バルーンは、あらゆる攻撃をはね返す。逃げるにはうってつけの技だ。あばよ!」

マキは教室の窓から外に出る。その際、赤い風船がいくつか飛んできて、善永に迫った。善永が立ち尽くしていたとき、有賀が赤い風船を受け止めた。

「有賀!」

有賀の近くで赤い風船が爆発する。有賀は立っていたが、白目をむいていた。


「川路善永…!譲ってやるよ…!ただし、絶対にあいつをやれよ!」


そう言って、有賀は倒れた。善永は強く頷き、窓から身を乗り出す。そして、和同文殊光線を発射した。しかし、それでもマキの風船には通用しない。

「無駄って言葉の意味を知らないのか?」

マキがせせら笑っていると、目の前に異変を感じた。

「!…なんだこの景色は!」

マキの視界には、別の世界が映っていた。

「そうか!ビジョン・シェアか!だが、そんなことをやって、どんな意味があるのかな?」

マキは余裕ぶっていた。しばらく自由に飛んでいれば、いつかは逃げられると思っていたからだ。しかし、それは甘い考えであった。視界に映っていた景色を楽しんでいると、辺りがざわざわし始めた。それと同時にビジョン・シェア状態が解除される。

「え!?」


マキの目の前には、善永が腕を組んで立っていた。


善永の挑戦状:風船を付けたゴンドラでアメリカを目指したが消息不明になった、「風船おじさん」の名で知られた人物は誰?


前回の『善永の挑戦状』答え:『くるみ割り人形』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ