93話:三年生の助け
「篠原さん!」
善永は、久しぶりの再会に、感極まっていた。さらに嬉しいことに、助けにきたのは篠原だけではなかった。一人の生徒が釣り竿を持って篠原の背後から登場した。
「僕もいるよ。善永。」
八ッ場が釣り竿を振るっていた。すると、善永の側にいたなぎさがふっと消えた。そのなぎさを、一人の生徒が受け止めた。本田だ。
「本田さん!」
本田が少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「善永、あのときはすまんかったな…」
「いいんですよ!全部生徒会が悪いんで!」
「おい。君たちにも落ち度はあったろう。」
本田は嫌がるなぎさをあやしていた。
「なぎさ、しばらく俺のもとで大人しくしていようね。」
「嫌だ!えいちゃんの側がいい!…でも、八ッ場さんに抱っこされるよりかはましか。」
「なんでだよ。」
善永と有賀が篠原のもとに駆け寄る。新しい風船がふわふわと飛んできていて、いくつかが破裂していた。ナイフや雷が落ちてくる。その場にいた全員が、咄嗟にそれらをかわす。
「善永!僕がどこかにリリースしてやる!どこがいい!?」
八ッ場が釣り針を善永の側に垂らす。善永はそれを制服に引っかけた。
「3階に頼む!」
「わかった!任せろ!」
八ッ場は、勢いよく釣り竿を振るう。善永がふっと消えた。善永を引っかけていた釣り針を、有賀が手にとった。
「なんのつもりだ?」
「私も頼むよ。」
八ッ場は釣り竿を振るおうとしない。有賀がぼそっと言った。
「アイザック・ウォルトンは言った。『釣り師は、全ての魚を愛する』とね。もしリリースしてくれたら、下着泥棒の件はなかったことにしてあげよう。」
「ちっ。貸しだからね。」
舌打ちをしながら、八ッ場は釣り竿を振るった。それによって、有賀も善永がリリースされた地点―3階廊下―に降り立った。善永が驚く。
「お前もかよ!」
「いいじゃないか。私がいた方が心強いだろう?さて、どうやって風船の使い手を特定するかな。」
善永は窓から見下ろす。ふわふわしていた風船が急上昇を始めた。それらは3階の窓から校舎内に入ろうとする。
「くそ!思いのほか早めにばれた!」
善永と有賀は迫りくる風船から走って逃げる。赤い風船が爆発したり、黒い風船からナイフが飛び出てきたりする。2人はそれらをかわしながら、走りまくる。途中で有賀が口を開いた。
「音だ。音で認識している。」
「!…そうか!でも、結局どうやって?」
有賀は振り返り、手の平から光電弾を発する。それを窓のクレセント錠に投げつけた。有賀の光電弾は、金属に触れるとばらばらに飛び散る。金属でできたクレセント錠に触れた光電弾は、ばらばらになりながら、風船に命中してはそれを破裂させていた。
「おそらく、どれかの風船に盗聴器をつけているはずだ…それで私たちを特定しているんだ。音や匂いで特定しているのであれば、真っ先にお前を狙えるはずなのに、そうしていない。だからこそ、盗聴器と考えるのが自然だ。」
「有賀、もしそうだとしたら、破壊するのは悪手だぜ。」
「何?」
善永は有賀を手招きしながら、どこかに向かう。しばらく走っていると、ある部屋に着いた。そこは、放送室であった。迫りくる風船を見ながら、善永と有賀は急いで放送室に入る。そこには、一太の弟・二太郎がいた。
「あ、善永さん。」
「やあ。二太郎君。ちょっとお願いしたいことがあってね。」
「いいですよ。善永さんの頼みなら。」
「助かるよ。それじゃあ、放送を始めて、音楽を大音量で流してくれ。」
「ええ。わかりました。」
二太郎は言われた通り、校内放送を始めた。そして、音楽を大音量で流し始める。善永が放送室を出ようとしたとき、二太郎が口を開いた。
「あの…善永さん…あなたが父の無念を晴らさなくても…」
「二太郎君、いいんだ。君は、立派な父親の遺言に従って、あの人のような立派な大人になるんだ…!」
そう言って、善永は放送室を後にするのであった。二太郎は呆然としていたが、涙を流しながら善永の無事を祈るのであった。
善永が放送室を出た途端、目の前に風船がわんさか浮いているのが見えた。
「まずい!」
善永は咄嗟に風船から遠ざかる。有賀もなんとか善永についてきていた。校内には音楽が響き渡る。廊下でもはっきりと音楽を聞くことができた。校内にいた生徒たちは突然流れ始めた音楽に困惑している。そんな中、有賀は善永の意図に気がついていたようだった。
「川路善永、やはり、君は私を倒しただけあるな。」
「まあな。後は、しらみつぶしに調べる!」
善永たちはしばらく廊下を駆け回っていた。2階にも下りて、ひたすら廊下を走り回る。すると、キーンという音がどこからか聞こえてきた。
「聞こえてきたぜ!不快な音がなぁ!あの教室だ!」
善永たちはある教室に入った。そこには、大きな機械と、紫色のオーラを発したまま耳を防いでいる2人の男がいた。1人は、リーゼント頭の男、ホワイトの秘書だ。
もう1人は、見おぼえのない男だが、モヒカン頭が特徴的だ。
善永の挑戦状:17世紀イギリスに活躍した作家で、特に『釣魚大全』で有名なのは誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:『道化師』




