92話:恐怖の風船
「!」
その場にいた全員が身を伏せ、ほふく前進で部室を出た。すると、たくさんの風船がぷかぷか浮いているのが見えた。赤い風船、青い風船、緑の風船、黒の風船、黄色い風船などカラフルだ。
(この風船だ!こいつが斎藤先生を!)
しばらく風船を眺めていると、黄色い風船が破裂した。そこから雷が発生し、有賀に命中しそうになった。
「ちっ。当たればよかったのに。」
「おい誰だ!?舌打ちしたのは!?」
有賀が喚いていると、今度は青い風船が破裂した。そこから水があふれ出し、伏せていた4人を水浸しにする。善永はスマートフォンを取り出す。
「aibo!」
『ごきげんよう。善永さん。』
「風船を出現させる兆能力ってあるのか?」
『それは、『アタック・バルーン』でしょう。風船によって様々な攻撃をすることができます。』
善永はスマートフォンをしまい、改めて風船を確認した。赤が爆発、黄が雷、青が水であるようだ。
「皆、風船の色で攻撃が変わる!それを見極めて避けるんだ!」
善永の発言に、3人が返事をした。そんな中、ある人物だけが聞き返した。
「え?なんだって?聞こえないぞ。善永。」
荘介だ。善永が荘介の方を見て、もう一度伝えようとしたが、
「だから!…って、荘介!?お前どうしたんだ!?」
できなかった。荘介が年老いた姿になっていて、それに驚いたためだ。白髪が生え、ほうれい線がくっきりしている。
「善永。耳が遠くなった!もう少し大きい声で頼む!」
荘介以外の人物は、どう声をかけてやったらいいのかわからなくなった。そうしている間にも、黄色の風船が破裂した。雷が落ちる、と思い全員身構えるが、何も起きなかった。
「馬鹿にしやがって!フェイクも混ざってやがるのか!」
(それだけじゃねえ!どこかに『アイス・エイジ』の使い手がいる!理事長…つまりNo.3だ!)
善永は辺りを見回すが、ホワイトたちの姿が見当たらない。それでも、彼方から新しい風船が飛んできていて、善永たちを苦しめ続ける。
「とりあえず、風船が飛んでくる方に向かうしかない!」
善永はほふく前進で進み始めた。それを見て、有賀やなぎさも続く。しかし、年老いた荘介だけは、それについていくことができなかった。
「おい!待ってくれよ!はぁ…はぁ…」
進むのをやめ、善永が振り返る。
「荘介!!お前はそこにいろ!!お前の近くに視界①を設置しておくから、何かあったらそれで守る!!」
「え?なんて?」
「もういい!」
善永は再び進み始める。風船は善永を追いかけてきていた。
「なるほど。狙いは君のようだね。相当恨みを買うね。君。」
「お前よりかはましだ。」
しばらく進んでいると、校舎の2階にある窓から風船が出てきていた。
「あそこか!」
善永は目をつむり、風船が出てきている窓近くに視界を設置した。風船が出現しているのは見えたが、そうさせている人間の姿は見当たらない。
「どういうことだ!?」
有賀が口を開く。
「風船の中に、相手の位置を探索するものがあると予想する。例えば、あの緑が怪しい。」
有賀は緑の風船に指を差し、光のビームを発射した。それは緑の風船を貫き、破裂させる。すると、風船の中からムカデやヒル、スズメバチなど、山で目にする危険な生物たちが出てきた。
「きゃあああ!」
なぎさが悲鳴を上げ、顔を伏せる。善永や有賀が、ビーム攻撃でそれらの生物を駆逐した。
「こういうときは、aiboに聞くのが一番だ!aibo!」
『どうも。善永さん。』
「アタック・バルーンの風船の色と攻撃には、どんな組み合わせがあるの?」
『それは、使用者によって異なります。なぜなら、色に応じた効果は、使用者自身によって変えることができるからです。これを利用して、パーティのサプライズで人々を喜ばせることもできます。』
「とんだサプライズだぜ…全く!」
善永が歯ぎしりしていると、後ろから誰かが泣く声が聞こえた。
「うわあああああん!怖いよおおお!」
「なぎさ!?」
善永が振り返る。そこには、子どもになったなぎさがいた。制服のサイズが合っておらず、極度に怖がっていた。
(よりにもよって、閉じ込め部屋に入れられていた頃のなぎさか!)
「まずいな…このままだと、全員老けるか若返ってしまう…!」
善永は後退し、なぎさに話しかける。
「なぎさ、しばらくここでお留守番できるよな?」
「嫌!えいちゃんと一緒にいたい!」
なぎさは善永にしがみつく。離そうにも離せないため、仕方なくその場に留まることにした。
「有賀、こうなったら、この場所で片っ端から風船を割るしかないな。」
「そうだね。ぷぷっ!」
「お前、今なんで笑った!」
有賀が笑いをこらえながら、黒い風船に光のビームを命中させる。黒い風船は破裂し、中から無数のナイフが飛び出てきた。
「嘘だろおおお!?」
「う!カバレフスキーの『道化師』が流れてきた!」
それは、有賀や善永では対応できそうになかった。
善永がなぎさを庇い、目を伏せる。が、ナイフが刺さった様子はない。奇跡的に刺さらなかったのかと思い、目を開けた。すると、ペンキが善永たちを覆いかぶさっていた。
「善永!大丈夫か!?」
後ろから声がする。振り返ると、そこには篠原が立っていた。
善永の挑戦状:特に第2曲の『ギャロップ』は運動会でよく使用される、カバレフスキー作曲の組曲は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:アドバルーン




