88話:ユー・オンリー・リヴ・トゥワイス
かつて、世界三大兆能力者と呼ばれた者たちがいた。『テレパシー』のミスター・リード、『サイコキネシス』のハンフリー・デイヴィッド、そして『念写』のフランツ・アウステルリッツ・フェルナンド伯爵だ。
このうち、リードとデイヴィッドは、首都警察とSOCIOLOGIとの抗争で命を落とした。3人の中で唯一生き残ったフェルナンド伯爵だが、その2人を失ったショックからか、長生きはできなかった。今から15年前に死亡してしまったのだ。
佐藤は、死亡したフェルナンド伯爵のDNAを採取し、0歳だった荘介に植えつけた。
その事実を聞いて、その場にいた全員が驚愕する。特に驚いたのは、他でもない、本人だ。しかし、荘介以外の人間は、驚いている暇などない。目の前の敵に集中しなければならなかった。
「ひひひ!病院で一目見たときから思ったよぉ!この子は将来、イイ男になるとね!本当にイイ男だよぉ!伯爵以上かもねぇ!」
佐藤は恍惚の表情で荘介を見つめていた。やがて、佐藤は荘介に指図した。
「さあ、その念写で本来の力を出すんだよぉ!」
荘介の体が勝手に動き始める。そして、マスケット銃を出現させた。フェルナンド伯爵の兆能力・念写は、心の中で思ったものを具現化することができる。鞭以外のものも出現させることができるのだ。
(なんでこんなものを!?)
荘介はマスケット銃を構える。銃口は、真剣を持った女と交戦している早明浦を狙っていた。
(早明浦!逃げろ…!)
佐藤が荘介の耳元で囁く。
「さあ、撃つんだ…撃て!」
荘介は銃の引き金を引いた。銃弾が、早明浦の肩に命中する。
「うぐっ!」
「早明浦さん!」
女と交戦していた一太だが、佐藤の方を振り向く。その一太の腹部を銃弾が貫いた。
「がはっ!」
一太は、腹部を押さえながら、その場で倒れた。
(うわあああああああ!)
荘介は自責の念に駆られた。しかし、体は動き続ける。今度は、男との交戦に集中していた善永に銃口を向けた。
(善永あああああ!)
荘介は銃の引き金を引いた。善永はそれをかわしてみせた。
(善永!)
「荘介!待ってろ!こいつをやったら、すぐお前を解放する!」
善永はアイビームを男に向かって発射していた。厄介なことに、男は雷でそれを打ち消していた。なぎさも魔法少女の姿になって応戦していたが、雷への対応に苦戦していた。
「あの魔法少女が厄介だなぁ…僕と同じぐらいかわいいし。荘介、撃っちゃおうよ…ひひひ!」
荘介はなぎさに銃口を向ける。なぎさがそれに気がつき、走り始めた。
「ちっ!頭のキレる女だなぁ…」
なぎさは男の背後に回っていた。もし銃の引き金を引けば、なぎさではなく男に命中する。
「いいや。あの頭悪そうな竹刀野郎を撃とう。」
荘介は早明浦に銃口を向ける。早明浦は女に苦戦しており、銃口を向けられたことに気がついていない。荘介は銃の引き金を引く。銃弾が放たれ、それは早明浦の足に命中した。
「いてぇ!」
早明浦は片膝をつけて痛みに悶える。そこに、女が真剣を振り下ろそうとしていた。早明浦は、気力を振り絞って、竹刀でそれを受け止めた。
「ふふ…帯電している竹刀は、ちと耐久が上がっていてなぁ!」
早明浦はそのまま真剣を払いのける。そして、すかさず竹刀を、ゴルフクラブでスイングするかのように振り上げ始めた。
『園田流奥義・漏電翔鯉』
竹刀は激しく電気を発しながら、女にぶち当たる。女は感電しながら、発火し始めた。
「すまねえな…そうでもしないと、俺が死ぬんだ…」
ふらふらと立ち上がった早明浦の肩を、銃弾が貫いた。早明浦は声を上げる暇もなく、崩れ落ちるように倒れていった。荘介の顔からは涙がこぼれている。
(やめてくれ!これ以上友達を傷つけたくない!)
それでも荘介の体は動き続ける。銃口を善永に向けた。男と交戦していた善永が、荘介の方に振り返る。そこを男が狙おうとしたが、なぎさによって妨げられた。
「荘介…」
善永と荘介が見つめ合う。荘介は何も言わず、ただ涙だけを流していた。
(善永!こっちを見ないでくれ!逃げろ!逃げるんだ!)
荘介の指が、銃の引き金を引こうとしている。止めようにも止められない。側で佐藤が不気味に笑っている。そしてついに…
ぱんっ!
荘介は銃の引き金を引いた。
善永の挑戦状:日本が舞台になっているのが特徴である、映画「007」シリーズの5作目にあたる映画は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:アウステルリッツの戦い




