83話:職業体験
善永は一太に声をかけた。
「斎藤さん、有賀はどうしたんですか?それに、その人は…」
そのとき、一太が善永に掴みかかろうとした。咄嗟に善永は、掴みかかろうとしてきた一太の手を払いのけた。
「斎藤さん!どういうことですか!」
善永が戸惑っていたとき、鈴木が善永に囁いた。
「川路善永、君はダンサーになれ。そして、踊り疲れて、そこで斎藤に殺されるんだ。」
「え?」
突然、善永が踊り始めた。ブレイクダンス、フラメンコ、タップダンス、サルサ…とにかく踊りまくる。
「どうした!?善永!」
周りが困惑しているが、一番状況を理解できていないのは善永だ。
「わからん!でも、体が止まらないんだ!」
なぎさと早明浦は呆然と善永の踊りを眺めていた。
「すごい!『おかあさんといっしょ』の踊りもろくに踊れないえいちゃんが、あんなにキレッキレのダンスを!」
「ああ!目が奪われるぜ!」
「お前ら!感心してないでさっさとどうにかしてくれ!」
そう言われて、なぎさが善永に近づこうとした。
そのなぎさに、鈴木は呟く。
「雪代なぎさ、君は邪魔な存在だ。警察官として、校内をパトロールしていろ。」
それを聞いて、なぎさは何も言わずどこかに向かい始めた。3人の奇行に、早明浦は異変を感じた。オーラを発し、鈴木に攻撃しようとした。早明浦が、竹刀に帯電させながら、鈴木に飛びかかる。鈴木は、それをかわし、早明浦に囁いた。
「早明浦鈴之助、君は寿司職人だ。黙って寿司を握っていろ。」
早明浦は、寿司を握る動作をする。それを黙々と続けた。
「お前、俺たちに何を!」
善永が、踊りながら、鈴木を睨んでいた。
「知る必要はない。ここで死ぬのだからな。」
「!」
善永が踊っている横で、一太が構えていた。いつ、何かをされてもおかしくない。
「させるか!」
善永は目をつむり、アイビームを発射し、一太を牽制した。
(すまない!斎藤さん!今ばかりは許してくれ!)
「なるほどな。テレポートビジョンか。」
鈴木が善永の兆能力を見定めていた。
(皆の状況を見るに、戦えるのは俺だけか!)
鈴木が善永に狙いを変えた。じりじりと歩み寄る。それをアイビームで牽制しながら、善永はスマートフォンに話しかける。
「aibo!」
『どうも。善永さん。今日はいい天気ですね。』
「相手をダンサーにしたり、寿司職人にしたりする兆能力ってなんだ!?」
『そんな兆能力はありません。』
「なんだって!?聞き方が悪かったか!それじゃあ、相手に催眠をかける兆能力は!?」
『それは『完全催眠』です。目を合わせることで、あらゆる催眠をかけることができます。』
(違う!あいつは、目を合わせることなく、俺をダンサーにし、早明浦を寿司職人にした!)
「無駄だよ。だって、この兆能力は、世界で俺だけが持つものなのだから。」
「世界でお前だけだと!?」
善永は驚愕した。
一太の攻撃をかわしつつ、善永は鈴木の兆能力が何かを推理する。
(俺はダンサーになった。なぎさは警察官…早明浦は寿司職人…どれも『職業』だ…俺たちに『職業』を体験させている…なぜ、そんな回りくどい指示をする?別に、俺に自殺を強要する方法もあるじゃないか…)
善永は鈴木の方を見る。鈴木は腕を組んで、踊りながらも一太から逃げる善永を愉快そうに見ていた。
(なぜあいつは、見ているだけなんだ?それは、あいつにできることが俺たちに『職業』を体験させること以外にできることがないからだ!)
善永は鈴木に接近しようとする。しかし、鈴木は後ずさりして距離をとった。
(やはりな…こいつにできるのはそれだけだ。そして、俺たちにこのような行動を強要するには、『条件』があるんだ!その『条件』は、相手に強要するのは『職業』だけであるということだ!つまり、こいつの兆能力は…)
善永が口を開く。
「相手に『職業』を強制的に押しつける…それがお前の兆能力だな?」
鈴木は目を見張っていた。
「ほう…この短時間で俺の兆能力をそこまで見極めたか。まあ、おおよそ正解といったところだな。」
善永の挑戦状:スペイン南部・アンダルシア発祥の、情熱的な表現と力強いリズム、音楽との一体感が特徴のダンスは何?
前回の『善永の挑戦状』答え:綾小路麗華




