80話:動く影、深まる謎
3限の時間、善永たちは真面目に授業を受けている。そんな中、体育館側にある倉庫。そこで2人の人物が、辺りを気にしながら、何か話し合っていた。
「今日、俺のスマートフォンに通知が来た。No.3からの伝令だ。」
「へえ。」
片方の人物―これをAとする―がスマートフォンをもう片方の人物―これをBとする―に見せつける。
「川路善永を抹殺しろ、とのことだ。こいつは、親族や親戚に警察関係者が多くいるし、独自に学校を嗅ぎまわっているらしい。」
「ふーん。No.3もだいぶ焦っているんだね。僕たち、No.3親衛隊にそれを頼むなんて。」
Aが眉をひそめる。
「ああ。門番を3人やられたからな。おっと、川路善永の写真を見せないとな。」
そう言って、Aは善永が写った写真をBに見せた。その写真は、クイズ研究会全員が揃った集合写真であった。それを見たBが、興奮した。
「あー!三田荘介だぁ!」
「知り合いか?」
Aの質問に、Bが嬉しそうに答えた。
「まあねぇ。なんせ、彼が0歳の頃から知ってるよぉ。ひひひ。」
「そ、そうか…とにかく、今日の放課後、どこかで落ち合って、川路を抹殺しよう。」
Aは、辺りを気にしながら倉庫を後にした。残されたBは上を向いていた。
「ひひひ。荘介ぇ…久しぶりに会いたいなぁ。お前が一番お気に入りなんだよぉ。」
Bは、不気味に笑い続けるのであった。
放課後、善永たち5人のクイズ研究会部員たちがある場所に向かっていた。それは生徒会本部である。そこに入ると、生徒会長の有賀が何かの書類に目を通していた。有賀の他には生徒が一人いるだけであった。
「おや、クイズ研究会の諸君、ごきげんよう。聞いたよ、黒部君と宮ケ瀬君が入院したんだって?大変だったね。」
「まあな。」
善永は、暗い表情をしながら、有賀に歩み寄った。そして、紙切れを有賀に渡した。
「これは?」
「七不思議についての調査報告だ。」
有賀は渡された紙に目を通す。
「ふーむ。予算問題に直接関係しそうな結果ではなかったか。まあ、そうだろうね。」
「は?」
有賀は少し間を置いて言った。
「予算問題の容疑者を一人に絞ることができたからね。」
「なんだって!?」
思わず善永は大きな声を出す。有賀は、しーっと、指を口に当てた。
「気持ちはわかるが。大きな声は出すな。」
「すまん…それで、誰なんだ?」
「…斎藤英一先生だよ…」
驚きの名前に、善永たちは言葉が出なかった。特に驚いたのが、一太だ。
「そんな!父が!?」
一太は、これまで見たことがないぐらいに、取り乱している。荘介やなぎさがそれを落ち着ける。
「気持ちはわかるさ。私も到底信じることができなかったさ。頭の中にサラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』が流れたよ。」
善永も信じられない様子であったが、一方であの人に対する疑問があるのも事実だ。特にそう感じたのは、小熊と戦ったときだ。夜の学校で、英一は何をしていたのだろうか。
「これに関しては、私たちで調べさせていただく。君たちはよくやってくれたよ。備品の件はなかったことにしよう。」
「最後に聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「なんだい?」
善永は、有賀に尋ねた。
「生徒会は、なぜ首都警察の捜査を拒んできたんだ?」
「どこでそれを!」
有賀が動揺している。
(やはり、何かあるな…)
有賀は咳払いをした。
「それについては、こちらで答えることができない。さあ、わかったら出ていってくれ。」
有賀は、善永たちを追い払った。ため息をついた有賀は、ぼそっと呟いた。
「やはり、厄介な男だね…川路善永…」
追い出された善永は舌打ちする。
「やっぱり、生徒会も怪しいな。」
「えいちゃん…もう何がなんだかわからないよ…この学校、どうなっているの?」
「そうだな…謎が多すぎる。」
状況や人物を整理すると次の通りである。
①この学校では、SOCIOLOGIの人間によって、何らかの計画が秘密裏に進められている。また、学校の予算が何者かによって横領されている?
②小熊正一。元SOCIOLOGI構成員。独自で計画について調査。死亡。家庭科室を調べていた。
③斎藤英一。妻をSOCIOLOGIに殺され、強く恨んでいる。予算を横領した犯人?
④生徒会。20年間に渡り、外部の人間が学校に侵入するのを拒んできた。
⑤理事長。そこまで調査できていないが、秘書ともども何を考えているのかわからない。歳をとらないという噂も何か怪しい。
「こうなってくると、全員怪しいな…誰かがSOCIOLOGIの幹部だと思うのだが…」
荘介が口を開く。善永も頷いた。それでも善永は、英一だけは信じたかった。
しばらく考え込んだ善永はある提案をした。
「まずは、生徒会本部を調べてみたい。あそこにも謎が多い。だが、有賀の存在が邪魔だ。」
「であれば、私が生徒会長を引きつけましょう。」
「じゃあ、俺も。」
一太と荘介が有賀を引きつけるため、生徒会本部に再び入っていった。
善永の挑戦状:日本女子大学の第7代学長も務めた、農村社会の研究で活躍した社会学者は誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:リプレイ




