77話:善永の決心
雄康は、倒れた小熊を抱え上げる。
「小熊先生!どうしたんですか!」
「…家庭科室…家庭科室…」
小熊はうわ言を言いながら、息絶えていった。善永は血まみれになったバッジを拾った。
「おっちゃん。このバッジが犯人だ…まさか、燃えるだけじゃなかったとはな…」
雄康は小熊の目をそっと閉じた。善永は拳を強く握りしめる。
「おっちゃん…俺はSOCIOLOGIが許せない…!」
雄康は、善永を一瞥したが、すぐに小熊の方に目をやった。
「ガキだな…そんな正義感で倒せるような相手だと思うか?」
小熊をそっと寝かして、雄康はどこかに向かっていった。善永もついていく。
「ついてくんなよ。」
「嫌だ。」
雄康は頭を掻きむしる。
「正義感だけは親父に似やがって…」
雄康と善永は、家庭科室に到着した。そこには、荘介たちがいた。なぎさもいつの間にか意識を取り戻していた。
「お前ら!なぜここに!?」
雄康は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。なぎさがおずおずと答える。
「あの、家庭科室を調べようと思って…」
「そうじゃねえ!」
善永が雄康の側を通り過ぎ、雄康の方を向いた。
「おっちゃん!俺は決心した!俺はSOCIOLOGIに立ち向かう!」
なぎさは善永の顔をじっと見ていた。
(いつになく真剣な顔だ…こんなえいちゃんは初めて…)
「僕も立ち向かいます!これ以上、誰かの悲しい顔は見たくない!」
なぎさは、天童のことを思い出していた。善永となぎさを見て、荘介も頷いた。
「俺もこいつらと一緒に戦います!かれこれ10年以上も一緒にいる身ですから!」
雄康は言葉に詰まる。しばらく考え込んでいた。
「善俊に話をつけておけ。俺ではお前らを止められん。」
雄康は、スマートフォンを取り出しながら、家庭科室に入っていった。善永たちも家庭科室に入る。しばらく家庭科室を調べていたが、これといった何かは見つからなかった。雄康が呟く。
「一見、何もなさそうだが…」
同じく家庭科室を調べていた善永が、あることに気がついた。
「家庭科室ってプールが見えるんだな。」
善永は窓の方に目をやっていた。そこからプールが見えていたのである。プールといえば、黒部や宮ケ瀬が救急搬送されたことを思い出す。
「何か関係がありそうだが…」
(そういえば、さっき小熊先生と戦っていたとき、作田と出会った例の階段もあった。さらに、家庭科室の上にある教室は!)
善永は天井を見上げる。
(天童と戦った教室だ!七不思議の調査で出会った奴がここ周辺に集中している!小熊先生は、家庭科室で何を見つけたんだ…!?)
善永は熟考する。だが、結局家庭科室では何も見つけることができなかった。小熊の処理をするために残った雄康を除いて、皆は帰宅した。というか帰宅させられた。英一は…雄康が、亡くなった小熊のもとに戻ってきたときには姿を消していた。
家に着いた善永は、善俊に全てを話した。返ってきた答えは…
「認めるか!そんな危険なこと!」
善俊は激昂していた。善永の顔は腫れていた。何度かぶたれたようだ。
「善俊さん!やめて!」
敦子が善俊を宥めるが、善俊の怒りは収まらない。
「僕はお前を甘やかしすぎた!レベル3になったからといって、つけあがるなよ!」
善永は善俊を睨んでいる。それが善俊の怒りを増長させた。
「なんだ!その目は!」
善永は黙って紫色のオーラを発した。それには、両親のどちらもが驚いた。
「善永…お前!」
善俊は、しばらく無言になったが、静かに言った。
「それがお前の決心なんだな?なら、その覚悟が本物か、確かめてやる。ついて来い。」
善俊は、善永をどこかに引き連れる。敦子はそれを止めることができない。心配そうに2人を見送るのであった。
善永の挑戦状:断固実行すれば、何物もこれを妨げることはできないというたとえを、「断じて行なえば何も之を避く」という?
前回の『善永の挑戦状』答え:磯村英一




