74話:手ごわい教師
小熊が手のひらから人魂を発し、それをトラの形に変化させていた。
『形成:寅』
(ここは、距離をとる!)
善永は、小熊から逃げた。しかし、トラが追いかけてくる。
(一つの視界を小熊の背後―視界①―に、一つの視界をビジョン・シェアで惑わせるために俺の家―視界②―に設置した!最後の一つは、このトラにアイビームを当てるため、俺の近く―視界③―に設置する!)
善永は、視界①と視界③からアイビームを発射するが、小熊とトラにそれぞれかわされてしまう。善永は逃げ続けるが、トラの方が素早い。善永の前に回り込み、飛びかかってきた。善永はそれを避けるものの、トラはすぐに善永の方を向き、再び飛びかかってきた。
「ふっ。甘いな。」
善永はアイビームを発射した。飛んでいる最中のトラはそれをかわすことができない。ビームが命中して、そのまま爆発四散した。
(相手が攻撃してくるタイミングに合わせて、アイビームを命中させればいいだけだ。)
善永は視界①に切り替えた。すると、小熊が、てくてくと歩きながら、新しい生物をオーラで生成していた。それは蛇のように思われたが、よくよく見ると宙を浮いていた。
「嘘だろ…龍を生成しやがった!」
『形成:辰』
小熊は、オーラで全長10mにもなる龍を生成した!それは、小熊の手を離れ、どこかに向かっていった。善永は視界①から視界③に切り替える。すると、龍が向かってきているのが見えた。
「図体がでかい分、ビームは当てやすそうだ!」
善永は、視界③からアイビームを発射するが、龍は体をくねらせ、それをかわす。そしてそのまま善永を、その大きな口で食らおうとする。
「そこだ!」
善永は、視界③を自身の目前に設置し、そこからアイビームを発射した。ビームが龍の口内に入り込み、そのまま体を貫く。龍は消滅していった。
(よし!奴の生物に対応できるようになってきた!)
善永は、視界①に切り替える。そこには、小熊の背中と、自身の姿が見えた。
「いつの間に!」
小熊は善永に語りかける。
「さすがだ。善永。首都警察の息子ってだけある。だがな、同じレベル3でも、格の違いってのがあるもんだ。」
小熊は、手から新しい生物を生成していた。
「お前がどれだけ俺の作った生物を破壊しようと、新しいのを作ればいいだけなんだ。ただ、それだけなんだ。」
その生物は、ネズミだった。ただし、一匹だけでない。多数のネズミを生成していた。
『形成:子沢山』
「うわああああ!」
善永は再び逃げだす。逃げる善永を多数のネズミが追いかけてきた。
(数が多すぎる!たとえ、ビームを命中させても、全部を倒すのは無理だ!)
不幸中の幸いだったのは、思いのほかネズミがのろかったことだ。全速力で走り続ければ、ネズミに追いつかれることはなかった。善永は、階段にさしかかり、そこを駆け上がる。デッドスペースに作田と出会ったドアがついている、あの階段だ。ネズミたちも階段を上がろうとするが、蹴上に足止めをくらって、善永ほどスムーズに上がってこれていなかった。善永は、階段で苦闘しているネズミたちに、容赦なくアイビームを浴びせる。一匹が爆発すれば、周りにいたネズミを誘爆させることができた。
「ざまあねえぜ!」
しかし、安心する余裕などなかった。ネズミたちを踏み台にしながら、イノシシが階段を駆け上がってきていた。
善永は再び逃走する。イノシシは、一直線に突進してきた。善永は、突進してきたイノシシを横に避けた。
(動きを見切れば、簡単にかわせるな…って!)
善永はあることに気がつく。前方からニワトリがこけこっこーと鳴きながら走ってきていた。ニワトリはその鋭い嘴で善永の目を狙っていた。ばたばたと羽ばたかせながら、善永に飛びかかる。善永は、前転して、ニワトリの攻撃をかわした。しかし、心休まる瞬間などない。後ろからイノシシが突進してきていた。善永は、横に転がることでそれもかわした。
「鬱陶しいな!こいつら!」
ニワトリが踵を返して、善永の方に向かってくる。イノシシの方も善永に狙いを定める。さらに運の悪いことに、生き残ったネズミの群れが、階段を上がりきって、こちらに向かってきているのが見えた。
善永、ピンチ!
(と思う奴は三流だ。むしろ、これはチャンスだぜ。)
善永はイノシシとニワトリの攻撃を避け、そこから逃げることなく立ち止まる。生物たちは善永めがけて一直線にやってくる。
一方、階段前で立ち止まっていた小熊がはっとする。
「!…ビジョン・シェアの効果がなくなった。まさか!」
小熊は焦って階段を駆け上がり始めた。2階に到着した小熊は、善永を発見する。その周りには、何もいなかった。
「いない!あれだけ形成したのに!」
「甘かったですね。小熊先生!」
善永は、全ての視界を背後に設置し、そこから和同文殊光線で向かってきた生物を一掃した。生物を一掃することはできたが、善永は生物の爆発に多少巻き込まれ、その場で動けなくなっていた。小熊がほくそ笑む。
「だが、これで終わりだな。」
小熊は、新しい生物を生成しようとした。が、そのとき砂の塊が飛んできた。小熊は、生物の生成を中断し、それをかわした。
「あ、あなたは!」
小熊は、砂の塊を発射した人物の顔を見て驚愕した。
「小熊先生、奇遇ですね。こんな時間にお会いするとは。」
紫色のオーラをゆらゆらさせながら、英一が廊下に立っていた。
善永の挑戦状:十二支の中で、通常うるう年になるのは、子、辰とあと一つは何?
前回の『善永の挑戦状』答え:オーガナイザー




