68話:グランドホテル フィナーレ
愛人はすぐに話した。
「お、俺は、駅の購買でお土産を選んでいたんだ!証明できる者はいないけどよ!娘は見てないぜ!」
秘書も口を開く。
「わ、私はお手洗いに。その後は、トイレ付近で一服を。同じく、娘は見かけていません。」
探偵は考え込む。
「となると、駅において、娘を見かけた者はいないということになりますね。」
そのとき、荘介が不思議に思った。
「娘は、列車に乗っていたときに口紅をつけていたのですよね?いつ、娘は口紅をつけたのでしょうか?」
「!」
探偵が瞠目していた。
「そうか!そういうことか!」
探偵は何かに気がついたようだ。皆の方を見る。
「全てがわかりました。犯人は、あなただ!」
探偵は、ある人物を指差した。
探偵に指を差されたのは、秘書であった。
「そんな!なぜ私が!」
狼狽している秘書に、探偵が詰め寄った。
「あなたは、駅で娘を殺し、誰か判別できないぐらいまでぐちゃぐちゃにした。そして、それを隠して、11:00に死体が発見され、まるでその時間帯に殺されたかのように偽装したのです。」
「それはわかりました!なぜ、私が犯人になるのですか!」
探偵は秘書に近づく。
「あなた、トイレに行っていたのでしょう?その後はトイレ付近で一服していたと。娘は口紅を、トイレでつけたのではないでしょうか。なぜ、見かけなかったのですか?」
「ぐっ!」
秘書は口をつぐんでしまう。代わりに男Aが口を開く。
「でも探偵さん。私は見ました。列車が駅を出てから、娘が歩いていたのを。駅で殺されていたのならば、娘を見かけるはずがありません。」
「それこそが、犯人の狙いだったのですよ。娘が生きているように偽装することで、アリバイを作り出したのです。つまり、娘を演じた人間がいるのです。それは…」
探偵は、秘書とは別の人物を指差した。指を差されたのは、なぎさであった。
「え!?僕!?」
本人が一番驚いていた。探偵がなぎさに詰め寄る。
「あなたは、娘のメイドとして振る舞っていたが、秘書と協力して娘を殺した。そして、列車の中で娘に変装し、秘書のアリバイ作りに一役買ったんです。」
「ええ…」
なぎさが戸惑っていると、善永が耳打ちした。
「しょうがない。ここは犯人を演じて、この物語を早く終わらせよう。」
「そうか!そうだね!わかった!」
なぎさは魔法少女の姿になった。さすがに善永も驚く。
「どうした!?」
なぎさは杖を振り回しながら暴走を始めた。
「そうだ!僕が犯人だ!」
なぎさは杖から炎の弾を発射した。それは、探偵に命中する。それを見た作田が怒鳴った。
「お前!何やってんだ!」
「僕は犯人だ!それも、犯人だと判明したら豹変するタイプの!しっかりと、この物語のルールに則っている!」
なぎさは、杖を作田の方に向けた。そして、水の弾を発射した。それは作田に命中し、吹き飛ばした。
「ぐわあ!」
作田は受け身がとれず、その場で倒れた。その作田に、善永と荘介が歩み寄る。
「さて、出してもらおうか。この部屋から。」
「いやだあああ!死にたくないいいい!助けてくれえええ!」
「!?」
作田の豹変ぶりに、2人は動けなくなる。そのとき、作田が激しく燃え始めた。
「ぎいやあああああ!」
作田が断末魔を上げていて、3人はそれを呆然と見ているしかなかった。
「な、なんだ!?どうなって…」
なぎさが水の弾を発射して消火しようとしたが、4人とも強制的に部屋から追い出された。いつの間にか、4人とも階段のデッドスペースに戻っていたのだ。善永がドアを開けるが、先ほどの部屋は無くなっていた。
「そうか…あいつが死んだから、俺たちは追い出されたんだ…!」
「あれってもしかして、プールで戦った人と同じ…」
善永はドアをそっと閉める。
「その通りだ。あいつは、SOCIOLOGIの構成員だったんだ。まさか、生徒の中にもいたとは…!」
4人のもとに、斎藤親子がやって来た。
「いた!どこに行っていたんですか?てっきり別の場所に移動したのかと。」
「すみませんね。斎藤さん。実は…」
善永は、部屋での出来事を斎藤親子に話した。それを聞いて、英一が戦慄していた。
「そんな…生徒の中にも…」
英一はぶつぶつと何かを言いながら、どこかに向かうのであった。一太が首を傾げていた。
「どうしたんでしょう?」
善永は、去っていく英一をずっと見ていた。
善永の挑戦状:その舞台はシリーズ完結作『カーテン』の舞台にもなっている、『エルキュール・ポアロ』シリーズの第1作目となる、アガサ・クリスティの小説は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:神津恭介




