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兆兆発止 第2部 学園戦争  作者: ぱんろう
兆栄高校七不思議編
66/109

66話:グランド・ホテル

一方、斎藤親子が階段のデッドスペースに到着した。

「ここです。」

「このドアの向こうには何もないはずだが…」

英一がドアを開ける。英一の予想通り、ドアの向こう側には何もなかった。一太が首を傾げる。

「おかしいですね…皆さんどこに?」


部屋を出られなくなった4人は、あたふたしていた。

「あの、出してもらえます?もう出たいんですけど。」

善永がドアノブに手をかけながら、作田に頼み込む。しかし、作田はにやにや笑っていた。

「同じ舞台でも、人が違えば様々なドラマが見える。僕は、それが好きでね。」

「はあ。」


「よーい、アクション!」


作田の突然すぎる言動に、4人は困惑した。早く出してほしいと、心の底から願っていた。そのとき、

しゅぽぽぽぽぽ!

部屋のどこかから、汽笛を鳴らしながら汽車がやって来た。それは、4人の目の前で止まった。

突然現れた列車に、4人は頭が混乱していた。

「うわあああ!どうなっているんだ!?」

作田は4人の様子を注意深く観察している。

「舞台は青列車…大富豪の娘が死亡した。その娘は、高価なルピーを持っていたが、それを盗まれてしまう。犯人捜しが始まるぞ。」

汽車から数人の男女が降りてきた。善永たちはそれをただ見ているしかなかった。

降りてきた一人の男―これをAと呼ぶ―が口を開く。

「犯人は、この男に間違いありません!この男は、殺された妻を疎ましいと思っていたのです!」

Aは善永を指差す。

「は、はあ!?」

列車が登場した時点で困惑しっぱなしの善永だが、さらに困惑した。そのとき、別の男が口を開いた。その男は、卵型の頭に、大きな口髭をたくわえていた。

「この男…どっかで見た顔だな…」

その男が口を開く。

「どうでしょうか。確かに、彼にはアリバイがありません。ですが、決定的すぎる。証拠とは、不満の残るものなんです。」

「最後の一文、聞いたことあるセリフだな…そうか。あの探偵か!」

その男を仮に探偵と呼ぼう。


あまりの急展開に、早明浦がため息をついていた。

「ついていけん。こうなったら、無理矢理にでも出させてもらう。」

早明浦は、青色のオーラを発しながら、持っていた竹刀に帯電させる。そして、そのまま作田にそれを振りかざそうとした。

「カット!」

作田がそう言ったとき、列車から降りた人々が早明浦に襲いかかり始めた。

「!?…なんなんだよ!」

早明浦は竹刀を振り回すが、人々はそれを巧みにかわし、早明浦に掴みかかった。

「何してんだ!撮影中だろ!」

「エキストラがしゃしゃり出んな!黙って立ってろ!」

各々罵倒しながら、早明浦を殴りつけていた。

「早明浦!」

善永たちがそれを止めようとするが、できなかった。ついに、早明浦はぼろぼろになって倒れた。呆然としている3人に、作田が言い放った。


「いいかい?この部屋では、僕が監督であり、絶対だ。それに従わなければ、君たちはそうなる。さあ、再開しよう。アクション!」


その瞬間、Aが口を開いた。

「そ、そうなると、誰が怪しいんですか?他に怪しいのは、娘の愛人、娘のメイド、娘の父である富豪とその秘書ですが…」

探偵が荘介の方を見た。

「どう思う?」

「…え?俺!?」

荘介は、しばらく考え込んだが、何も思いつかなかった。そんな荘介に、なぎさが耳打ちした。

「とりあえず、怪しい人を指差したら?」

荘介は、愛人に指を差す。愛人は必死に否定していた。

「私が!?とんでもない!娘の死体が発見されたのは3号車だろう?そして、死体が発見されたのは11:00!私はそれまでずっと、10号車にいたんだ!」

「ふーむ。君、もう少し考えて指を差しなさい。」

「す、すんません…」

探偵に注意されて、荘介はげんなりした。なぎさが再び、荘介に耳打ちした。

「秘書はどう?なんか怪しい。」

荘介は、秘書を指差した。

「私が!?とんでもない!私は、娘が死んだ時間、12号車にいました!」

荘介は再び探偵に注意される。これら一連の流れを見て、善永は戸惑う。


(くそっ!この兆能力なんなんだよ!ただ四次元空間を作るだけじゃないぞ!)

『グランド・ホテル』は、四次元空間を作り出すだけの兆能力ではない。自分自身が思い描くストーリーを、部屋の中で実現することができる。部屋の中にいる人間は、必ずそれに従わなければならない。また、ストーリーによって出現した人々は、何度でも復活できてしまう。

現在、部屋の中ではミステリー劇が始まっている。善永は容疑者の一人・娘の夫役になっていて、荘介は探偵の助手役になっている。

善永は作田の方を見る。

(無色オーラ状態のアイビームであいつを撃つか…)

善永は、ゆっくり目をつむる。

「そこ!寝るな!」

作田が善永を怒鳴った。善永は思わず目を開ける。

(野郎…よく見てやがるな。こうなったら、堂々とやってやるか。)

善永が紫色のオーラを発したとき、周りにいた人物が善永を睨んだ。

「ははは、冗談ですよ。」

善永は慌ててオーラを消滅させる。

(ちくしょう!このストーリーを終わらせるしかないのか!?)


善永の挑戦状:青列車の中で起きた殺人事件をエルキュール・ポアロが解決する、1928年発表のアガサ・クリスティの作品は何?


前回の『善永の挑戦状』答え:『グランド・ホテル』

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