65話:ドアの向こう側
次の日、放課後、いつもの部室に、善永たちが集まっていた。
「あの2人、大丈夫かなぁ…」
「命に別状がないとはいえ、心配だよな…」
なぎさと荘介が話し合っているのを、善永は黙って聞いていた。
(この件は、思いのほか重要になりそうだ。もう少し調べてみる価値がありそうだ。)
いつの間にか善永も乗り気になっていた。そこには、父親譲りの正義感も関係していた。
そこに、2人の生徒が部室に入り込んでくる。見覚えのある顔だ。
「あんたらは!」
「お久しぶりです。」
「よう!」
一太と早明浦であった。久しぶりの再会に、3人は嬉しそうにしていた。
「斎藤さん!無事で何よりです!」
なぎさの嬉しそうな声に一太が反応する。
「いえ。なぎささんこそ。善永さんも元気そうで。」
一太が、七不思議の内容が書かれている紙切れに目をやる。
「生徒会長から話を聞きましてね。」
「俺は通りがかった。七不思議の調査だって?面白そうじゃないか。今日は何を調査するんだ?」
なぎさが、うーん、と考え込みながら、あるところを指差した。
「これにしましょう!」
なぎさが選んだ不思議に、早明浦や荘介が心躍らせていた。
「楽しそうだな!」
「こういうのが一番わくわくするよな!」
居ても立っても居られず、早明浦が部室を飛び出した。それを荘介や一太が追いかける。取り残された善永は目を点にしていた。同じく取り残されたなぎさが善永に寄り添う。
「皆、相変わらずだね。」
なぎさはくすっと笑う。善永はやれやれと呟いた。
「それじゃあ、僕たちも行こう!」
なぎさが善永の手を取り、部室を飛び出た。
「お、おい!」
「せっかく集まれる人で集まったんだから、その瞬間を大事にしようよ!」
なぎさの明るい顔に、善永は見とれていた。顔をほころばせながら、善永はなぎさに連れられるのであった。
5人はあるドアの前にやって来た。階段のデッドスペースに取り付けられていたドアだ。
『どこに繋がるのかわからないドア』
「通常は、開けても何もないドアだ。だが、あるとき、謎の部屋に繋がることがあるらしい。」
荘介が紙切れに目を通しながら言った。5人はそのドアを見つめる。
「あるときっていつだよ…」
漠然とした内容に早明浦が呆れている。荘介がドアノブに手を差し伸べた。
「早速開けるぞ!何回かやったら、どっかに繋がるだろ!」
「すみません。私は父を呼んできます。何かあったら大変ですから。」
一太がスマートフォンを取り出しながら、その場を離れていった。その間に、荘介はドアノブを回していた。
「どうだ!」
荘介は勢いよくドアを開けた。すると、こじんまりとした部屋が出現していた。とても階段のデッドスペースに収まるとは思えない。全員が固まっていた。さらに驚くことに、一人の人物が座っているのが見えた。
「おいおい…まじかよ…」
早明浦はその部屋に足を踏み入れようとする。
「早明浦!無闇に入るな!」
善永の警告に耳を貸さず、ついに早明浦は足を踏み入れた。それに続くように、荘介やなぎさも部屋に入った。
「ったく…向こう見ずだな…」
呆れながら、善永も部屋に入った。
「ようこそ。僕の部屋へ。」
部屋の中にいた人物が、部屋に入ってきた4人に静かに語りかけた。部屋に入る前はよく見えなかったが、よくよく見ると、制服を着ていた。
「紫…三年生ですね。なぜ、こんなところに?」
「僕、作田吉男は、よくここで物思いに耽るのさ。すると、ドアの前に君たちがいたんで、招待したんだ。」
なぎさが辺りを見回す。広さは7畳ぐらいだ。
「この空間は、あなたの兆能力なんですね?」
「そうだ。ドアを経由することによって、四次元空間を作り出す兆能力『グランド・ホテル』だ。」
(どこがグランドでホテルなんだよ…)
荘介はそう思った。4人はしばらく部屋を見回したり、作田に話しかけたりしたが、特に何もないと感じた。
善永が荘介に耳打ちする。
「これは、予算の話とは関係ないだろう。」
「そうだな。出るか。」
「失礼しました。」
善永たちは部屋を出ようとした、ドアに手をかけ、開ける。しかし、ドアを開けても、そこにあったのは壁だった。
「あれ!?」
「もう少しゆっくりしていけよ。なあ?」
作田は、紫色のオーラを発していた。
善永の挑戦状:一つの場所を舞台に、複数の登場人物のドラマを描く手法の名前にもなっている、1932年のアメリカ映画は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:フェアリーサークル




