62話:兆栄高校七不思議
病院を退院した善永は、学校に登校していた。放課後、いつものようにおんぼろ部室に入る。そこには、荘介となぎさがいた。
「…結局、いつもの3人になったんだな。」
善永が寂しそうに言う。
「うん…廃部こそ免れたけど、三年生は受験もあるし…本田さんは合わせる顔がないって、あれから会えてないし…」
「他の奴らは?」
「さあな。」
3人があれこれ会話を続けていると、一人の生徒が入ってきた。生徒会長の有賀だ。
「やあ。なんやかんや元気そうだね。」
「何しに来た!?」
善永は構える。有賀は、まあまあ、というジェスチャーをした。
「少なくとも、喧嘩を売りに来たのではない。」
「お前のことだ。また何か変なことでも企んでいるんじゃないだろうな。」
「それは…そうかもしれないが。」
「否定しろよ。」
善永は呆れた。側にいた荘介が尋ねる。
「で、何しに来たんですか?」
「うむ。君たちに協力してもらいたいことがあってね。」
「協力?」
3人はぽかんとしている。そのうち、善永が口を開いた。
「それは、都合がよすぎないか?あんだけ酷い目に遭わせておいて。」
有賀はすぐさま反論した。
「それはお互い様だろう。それに、君たちは学校の施設を壊したよね?誰だっけな?グラウンドの照明を爆発させたのは。」
「ぎくっ!」
なぎさが反応した。有賀は続ける。
「視聴覚室のテレビや、屋上のフェンスを壊した人もいたっけなぁ。」
「うげっ!」
今度は善永が反応した。
「それじゃあ、何をやってほしいんですか?」
なぎさと善永のリアクションを見ていた荘介が、有賀に質問する。
「七不思議の調査だよ。」
「え?」
思わぬ返答に、3人は呆気にとられた。
「はっきり言って、クイズ研究会の件について、私たち生徒会にも落ち度があった。そこで、しっかり責務を果たすため、クイズ研究会を廃部させる決断に至った原因である予算問題について調査しようと思ってね。あれは、誰かが横領していると考えている。」
「それはわかったんだが、なんで七不思議?」
「生徒会としては、あらゆる可能性を確かめたい。七不思議を調査すれば何か見つかるかもしれない。しかし、そんなのに生徒会のリソースを割きたくないからね。それで、君たちの出番ってわけだ。」
「体よく利用しようとしてません?」
「これは君たちじゃないと頼めないってのもあるんだ。というのも、興味本位で七不思議を調べようとした生徒が行方不明になっていてね。」
「だったら、警察に頼めばいいじゃないか。」
善永の発言に、有賀が顔をしかめる。
「警察はダメだ。絶対に。」
「なぜ?」
有賀は、善永の疑問に答えようとしなかった。
有賀はどこからともなく紙切れを取り出し、それを善永に渡した。
「これが七不思議の内容だ。兆能力の使用も認める。だから頑張ってくれ。」
紙切れに目を通した善永だが、渋い表情をしていた。
「どうしたんだい?そんな顔をして。」
「有賀、俺たちは、平和に暮らしたい。廃部の件もなくなったことだしな。」
「そう。じゃあ、学校の備品を壊したこと、親御さんに連絡しておくね。」
「やらせていただきます!」
善永の返事に、有賀はご満悦だった。機嫌がよさそうに部室を出ていった。
「ったく。自分勝手な奴だ…」
なぎさと荘介が、受け取った紙切れに目を通していた。
「でも、面白そうだ!せっかくだし、調査しようぜ!」
「おいおい…俺たち、いつの間にオカルト研究会になっちまったんだよ…」
善永は乗り気にならない。荘介がそっと言った。
「でも、そうしないと備品を壊したのが親に連絡されてしまうよ…」
「それはそうなんだが…うーん…」
(学校の備品を壊したのについては、親父も知らない…知られると…うう、想像しただけで恐ろしいな。)
善永は重い腰を持ち上げ、改めて紙切れに目を通す。
「それじゃあ、まずはこいつから調査してみるか。」
3人は、人気のない教室に来ていた。
「七不思議その1・『女のすすり泣く声が聞こえる教室』。17時から18時の間、この教室で女のすすり泣く声が聞こえるらしい…あほくさ。んなもんどこでも聞こえてくるだろ。」
「面白そうだ!」
荘介はかなりテンションを上げていた。善永はそれについていけない。
「なんでそんなに楽しそうなんだ…」
そのとき、
しく…しく…うう…
「この声は!」
どこからか、すすり泣く声が聞こえてくる。3人は辺りを見回すが、誰もいない。廊下などにも目をやるが、やはり誰もいない。
「…なんてこった…ガチじゃねーか…」
少し驚いた善永だったが、あることに気がつき、ロッカーに近づく。そして、それを開けた。そこには…
「うう…ぐすっ…え!?善永君!?」
女子生徒がいた。赤いネクタイをしており、一年生であることがわかった。
「お前、何してんの?」
「あっ…えーと…その…」
女子生徒はあせあせしていた。
「その、嫌なことがあったんで、ここで泣いてました…すみません…」
「いつもここで?」
「はい…そうです…」
「そうか。邪魔してごめんね。」
善永はそっとロッカーを閉めた。
「よし、帰るか。」
3人はこれ以上何も言うことなく、黙って帰宅するのであった。
善永の挑戦状:紀元前225年頃に「世界の七不思議」を提案した、古代ギリシアの人物は誰?
前回の『善永の挑戦状』答え:石の上にも三年




