60話:テレポートビジョン レベル3
有賀は、善永にビームを放とうとした。しかし、それはできず、突然目を押さえ始めた。
「どうなっている!目が!目があ!」
善永は笑っている。
「そいつが第一の新技『ビジョン・シェア』だ。俺の視界を、任意の対象と共有することができる。」
有賀には屋上を俯瞰した世界が見えていた。目を開けようが、閉じようが、その世界がずっと目に残る。しばらくすると、見えていた世界が変わった。今度は豪邸が見えた。
「俺の家だぜ。どうだい?…おや?おふく…お母様が今晩の支度をしているな。今夜は、カレーか。楽しみだなぁ。」
再び見える世界が変わった。見覚えのない景色が広がる。
「これが、俺の兆能力範囲の端っこだな。現在地から5km…そして。」
視界が屋上に戻ってきた。
「どうだったかな?テレポートビジョンツアーは。3つの視界を楽しんでもらえたかな?」
有賀は、手に持っていた光の剣を振り回す。
「やめろおおお!」
善永はその様子を鼻で笑う。有賀は声を震わしながら尋ねた。
「なぜだ!?なぜ、立っていられる!?」
善永は答えた。
「俺のテレポートビジョンは、監視カメラと密接な関係にある。わかるだろ?監視カメラの映像を巻き戻すように、俺自身の状態を巻き戻すことができるんだよ。これが、第二の新技・『リプレイ』だ。」
「リプレイだと…?ふざけやがって!」
「もっとも、5分経過すれば、元に戻ってしまうがな。タイムリミット5分の中で、お前を倒す。」
「やれるもんならやってみろおお!」
有賀の周りに光のリングができていた。善永は呆れていた。
「ご乱心だな。生徒会長。落ち着けるために、俺の家をもう一度見せてやろうか?」
「それが一番不愉快だ!」
光のリングが放射状に広がっていく。それは善永に迫ってきていた。それでも、善永は微動だにしない。
「レベル3のアイビームを見せてやる。」
善永は、遥か彼方からアイビームを発射した。それは光のリングに命中する。善永はそれらが相殺し合うだろうと思っていたが、そうならなかった。光のリングが回り込むように善永に迫ってきたのだ。
「なんだって!?」
善永は咄嗟にしゃがみ、光のリングをかわした。目を押さえたままの有賀が笑っていた。
「俺が操る光には2つの顔がある!1つは、光電弾のように、粒子としての顔!そしてもう1つは、波としての顔だ!」
善永がかわした光のリングは、フェンスにぶつかると、新しいリングを発生させた。それは、善永の方に向かってくる。
「川路善永!俺はな!どんな壁にぶち当たろうと、迂回してでも先に進んでやるさ!」
善永はかわすことしかできない。かわせど、かわせど、光のリングが新しい光のリングを生み出している。
「なんて野郎だ…!俺に攻撃の隙を与えないつもりか!」
善永が動けないでいると、有賀がじりじりと距離を詰めてきていた。光のリングは、都合がいいことに、有賀を避けて広がっていた。
(くそ!既に3分経過している!この状況を打破しなければ!)
「こうなりゃ、弁償も覚悟だ!」
善永は、フェンスに向けて3本のアイビームを発射した。それはフェンスを破壊し、光のリングが抜け出る空間を作り出した。
「なんてことを!修復するための費用がないというのに!」
有賀は、狼狽しながら、手から光の弾を出す。光電弾だ。一方の善永は、全ての視界を自身の背後に設置していた。
「これが最後の一発勝負だッ!いくぞ!!有賀栄太郎!!」
「来いッ!!川路善永!!」
善永は、背後から3本分のアイビームを発射した。
3本のアイビームが束なり、一つの巨大ビームにまとめられた。
(こいつが、俺の最終奥義・『和同文殊光線』!)
対する有賀は、光電弾をアンダースローで投げた。光電弾が低めに飛んでいく。
和同文殊光線と光電弾がぶつかり合う。しばらく拮抗していたが、和同文殊光線が光電弾を貫通し、有賀の方に向かっていく。ついにそれは、有賀の腹部も貫通した。有賀の体に巨大な穴が開く。
「そんな…馬鹿な…!」
有賀は、崩れ落ちるように倒れた。これで有賀を倒すことができた。しかし、危難は去っていない。光電弾がばらばらになって、善永の方に飛んできていた。
(壱極集中で受け止めるか!?いや、それでも…)
そのとき、体に穴が開いた。リプレイの効果が切れたのだ。
(こんなときに…)
ばらばらになった光の弾は、そのまま善永の体を貫通した。
「くそ…!相撃ちだなんて…!」
善永は、その場でぶっ倒れた。
善永の挑戦状:智慧を司る菩薩に由来する、凡人であっても三人集まって考えれば、知恵が出るものだということわざを何という?
前回の『善永の挑戦状』答え:川路利良




