35話:恐怖の歯ブラシ
電動歯ブラシが善永の目めがけて飛んでくる。
「なんだよ!これ!」
善永はそれをかわし、目をつむる。そして、テレポートビジョンを発動した。電動歯ブラシは軌道を変えて、善永の方に向かってくる。
(物を操る兆能力…『付喪神』か?aiboに聞いてみよう…)
善永はズボンのポケットに入れていたスマートフォンに話しかける。
「aibo!物を操る兆能力といえば、『付喪神』だよな!?」
『善永さん!今日はいい天気ですね!』
「は!?」
aiboは善永の質問を無視した。今までは、少し風変わりな質問に対しても、丁寧に返してくれたaiboがだ。
「aibo!質問に答えろ!」
『善永さん!明日の天気は雨です!』
「!」
やはり、aiboは質問に答えない。
(どうなっている!なぜaiboは質問に答えない!)
そうしている間にも、電動歯ブラシが善永の目を狙って飛び回っている。
「ああ!鬱陶しいな!」
善永はアイビームで電動歯ブラシを撃ち落とそうとした。
(すばしっこいな!)
しかし、命中させることができなかった。それに、下手に撃つわけにはいかない。自分自身に命中させてしまう可能性があるからだ。善永は電動歯ブラシをかわすことしかできなかった。それを嬉しそうな顔で見ていた武田は、新たに電動シェーバーを取り出した。
「筋書はこうだ。髭を剃ろうとしたら、誤って喉を切ってしまった!完璧だ!」
そう言いながら、それを投げつけた。電動シェーバーが宙に浮き、善永めがけて飛んでいく。電動歯ブラシをかわしていた善永が動揺する。
「なぬ!?」
善永は後ずさりをした。ただでさえかわすのに必死なのに、攻撃がさらに加わってくる。善永は決心する。
「こうなりゃ、本体を直接叩く!」
善永は洗面台近くに立っていた武田の方に向かっていく。武田は逃げるようにトイレから出た。善永は、2つの電気製品による攻撃をかわしながら、武田を追いかける。
「待ちやがれ!お前から仕掛けてきたんだろうが!」
武田は善永をじっと見ながらも、逃げ続ける。しばらく武田を追い続ける善永だが、後ろから激しく何かを吸い込むような音が聞こえてきた。ふと振り返ると、キャニスター型の掃除機が善永を追ってきていた。
「うわああ!なんだこれ!」
善永は武田を追うことではなく、掃除機から逃げることに集中することにした。階段にさしかかったとき、武田は階段を素通りしたが、善永は階段を駆け上がった。
「なんだと!?」
(どうだ!掃除機なら追いかけることはできまい!)
善永が階段を駆け上がっていると、電動歯ブラシや電動シェーバーも動きを止めて、その場で落下した。
「そうか!奴の視界に入っていないと、操ることができないのか!ってなると、付喪神ではないぞ!あの兆能力は、物に魂を込める…それゆえ、本人の視界から外れても動くことができる!付喪神じゃないとすれば…」
階段を素通りした武田が後戻りしようとした。
(まさか、追いかけるのをやめるとはな!)
これは悪手であった。階段にさしかかったとき、踊り場から善永が飛びかかってきたのが見えた。
「馬鹿が!不意打ちを予見できなかったのか!?」
善永は、階段付近を俯瞰できる位置に視界を設置していた。これによって、不意打ちのタイミングを見計らっていたのだ。
「うわあああ!」
善永は拳にオーラを纏わせていた。そして、そのまま強烈なパンチを武田の腹部に打ち当てた。武田は後方にあった教室の中に飛ばされていった。
「ふん。なめるなよ。aibo、聞こえるか?」
『はい。なんでしょうか。』
「電気製品を操る兆能力とかってあるのか?対処法は?」
『はい。『フリー・アプライアンス』ですね。相手の視界から離れることで、逃れることができます。』
aiboはしっかりと善永の質問に答えた。
「そうか。お前もあのとき、操られていたんだな。元に戻って嬉しいよ。」
安心した善永は、その教室に入っていき、武田の様子を見ようとした。教室に入った瞬間、巨大なテレビが点いているのが見えた。
「ここは、視聴覚室だったか!」
そのテレビには、井戸が映っていた。
臭いに悶絶していた荘介は今にも気絶しそうだ。それでも、立ち上がることを諦めない。
「そろそろ倒れてくんない?次に行きたいのだが。」
「!…次…だと?」
永倉のぼやきに、荘介は反応せずにいられなかった。
「そうだ。他の部員も…ふふふ。」
永倉は不気味に笑う。それを見て、荘介は怒りに燃えた。
「お前らの思い通りにはさせない!!絶対にな!!」
荘介は力を込め始めた。すると、なんとか立ち上がることができた。さらには…
「オ、オーラの色が…」
荘介の発するオーラの色が青みがかっていた。
善永の挑戦状:ダイソンの掃除機がその代表である、掃除機の中でも、遠心力を利用してゴミと空気を分離するのは何式の掃除機?
前回の『善永の挑戦状』答え:チオアセトン




