32話:他人は自分を映す鏡
サリーが手から魔法を出したのを見て、その場にいた全員が後ずさりする。
「お前…いつの間にそんな技を!」
「『ノーハンド・マジック』、私はそう呼んでいます。威力こそ落ちますが、杖が無くとも、魔法が使えます。」
『レドヌ』
サリーの手から雷を放出する。それは荘介を狙っていた。
「くそ!」
荘介はそれをなんとかかわす。
(こんなに人数がいながら、太刀打ちできないとは…!このサリーってのは恐ろしい女だ!)
黒部が立ち尽くしていると、サリーが狙いを黒部に変えた。
「こうなったら、黒部!致し方ない!アンチ・スケープゴートでサリーに!」
善永はそう言うが、黒部はただ立ち尽くすのみであった。サリーは黒部に向けて手をかざす。
『エマルフ』
手から炎の弾が出てきた。急速度で飛んできて、黒部はそれをかわすことができなかった。
「ぐわあああああああ!」
「黒部!」
黒部は吹き飛ばされ、意識を失った。宮ケ瀬や一太が黒部のもとに駆け寄る。
「善永!この女の下着を釣ってもいいか!」
「てめえ!こんなときに何言ってんだ!」
八ッ場の発言に善永が激昂する。
「違う!そうすることによって、動揺するんじゃないかと思ったんだ!下手に傷つけるよりはいいだろう!?」
「やっぱダメ!後でなぎさに怒られる!」
だが、何もしないわけにはいかなかった。サリーが魔法を使った。
『トゥクラッタ』
サリーが新しい魔法を使ったのだ。特に何も起きなかったように見えたが、突然杖がサリーの手に引き寄せられた。
「杖を引き寄せる魔法なのか!?そんなのもできんのかよ!もう対応できない!逃げられる奴は逃げろ!」
善永が皆を逃がそうと誘導する。それとは対照に、教師たちがやって来た。
「おい!さっきから何をやっているんだ!?スポーツ以外で兆能力を使うとは!」
「近寄ってはならない!あなたたちでも対応できない!」
「それは、俺でもかな?」
「!」
教師たちの声の中に、聞き覚えのあるものがあった。その者は真剣を持って飛び出し、サリーの方に、一直線に向かっていく。
「雄康のおっちゃん!…あんた未だに刀持ってるのか!」
「園田師範!師範の剣技を見ることができるとは!」
雄康だ。紫色のオーラを発している。彼の兆能力は、真剣を手に持つことで初めて発動できる『ソードマスター』。身体能力が向上し、剣の技術が高まる。
サリーが雄康に気がつき、仕込み杖で斬りかかろうとする。雄康は抜刀し、それを受け止めた。
「園田おじさん!あなたはいつも私の杖を受け止める!」
「そうしないと、俺が真っ二つになるもんでね!」
鍔迫り合いを続けながら、雄康が叫ぶ。
「荘介!俺が止めている間に、あの手を使え!」
「いいえ、俺よりも適任者がいますよ…!」
荘介がにやりとしながら言う。雄康は困惑していたが、背後に何者かが近寄ってくるのを感じた。善永だ。足の痛みも気にせず、サリーの方に向かっていた。
「俺がやります!」
「わかった!『せーの!』で俺が離れる!そのときに飛びかかれ!」
「え?」
善永は、雄康が「せーの」と言った時点で、サリーに飛びかかっていた。
「まあいいや!任せた!」
雄康が刀を納める。その間にも、善永がサリーを押し倒していた。2人は見つめ合う形になる。
「善永君!?…!まさか!」
「サリー、『他人は自分を映す鏡』ってのはよく言ったものだな。」
サリーは、善永の眼に映った自身の姿を見た。
「嫌だあああああ!まだ戻りたくないいいい!…」
サリーはしばらく断末魔を上げていたが、いずれ静かになった。荘介が胸をなで下ろしながら言った。
「やったな!善永!」
「まあな…荘介が小学生のときに思いついた、目を鏡にするって方法のおかげだ。」
善永が微笑む。静かになり目をつむっていたサリーだったが、ゆっくりと目を開ける。
「…えいちゃん…?…え!?えいちゃん!?」
元のなぎさに戻ったらしい。自身が置かれた状況に驚いている。
「すまん!」
善永は、焦りながらなぎさから離れる。なぎさが起き上がり、辺りを見回す。破壊された照明、倒れた黒部など悲惨な状況だ。
「まさか…僕が…」
なぎさが涙を流し始める。
「いいんだ!なぎさは何も悪くない!」
「でも!試合もなかったことに!」
「大丈夫ですよ。なぎささん。」
一太を始め、他のメンバーもなぎさを慰める。
「でも…でも…うわあああああ!」
グラウンドには、しばらくなぎさの泣き声が響き渡るのであった。
部活狩り編 終わり
次回:粛清委員会編開始
善永の挑戦状:アルバム『Bad』に収録されている、メッセージ性のある歌詞が特徴的な、マイケル・ジャクソンの楽曲は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:ひみつのアッコちゃん




