30話:危険人物
なぎさは手に持っていたバットを落とした。
『おや!なぎささん、バットを落としてしまった!』
山南が投げようとするのを止め、様子を見ていた。他の野球部員が口々に言う。
「もしかして、びびったんじゃないのか?」
「やっぱり、魔法少女でもバッティングは難しいか?」
「まずい…これは、本当にまずい…」
一方、ベンチの荘介が頭を抱え、がっくしと気を落としている。
「どうした!なぎさに何が!?」
本田が心配そうに言う。宮ケ瀬が口を開いた。いつも元気そうに喋る宮ケ瀬だが、様子が違っていた。
「見てしまった…おそらく、あのガラス片ですわ…」
「何を見た!」
「自身の姿ですわ!」
バットを落としてから固まったなぎさに、球審が声をかける。
「おい!どうした!?早く、バットを持ちなさい!」
「ないで…」
「え?」
「近づかないで頂けます!?」
なぎさは球審に蹴りをかました。球審はそのまま吹き飛ばされる。
『どうした!?なぎささん、球審に暴力を振るった!』
永井がなぎさを止めようとする。そのとき、
すぱっ
という音がした。永井は何が起きたのかわからなかった。
「キャッチャーマスクが!」
いつの間にか、永井が身につけていたキャッチャーマスクが真っ二つになっていた。なぎさの方を見ると、持っている杖から鋭い刀身が顔を出していた。
「仕込み杖か!なるほど、どうりで重かったわけだ!」
篠原が動揺しながら言った。
「皆、試合中止だ!あの女を止めに行くぞ!」
荘介がベンチから飛び出て、なぎさ?の方に向かう。一太が尋ねた。
「どういうことなんですか!?あの人は…」
「説明すると長くなりますが…なぎさは鏡などで自身の姿を見ると、別人格『加賀美サリー』になるのです!優しいのは口調だけで、中身に関しては凶暴を擬人化したようなものです!」
荘介が鞭を出現させながら、サリーのもとに向かう。サリーは尻込みしていた永井に斬りかかろうとしていた。
「させるか!」
荘介が鞭を伸ばし、仕込み杖を持っているサリーの手に引っかける。
「荘介さん!あなたはいつも私の邪魔をする…!許されるものではありません!」
「許されないのはお前の存在だぜ!永井、逃げろ!」
荘介がそう言ったのを聞いて、永井はその場から逃げだす。
「どうなっているんだ!」
山南が近づいてくる。宮ケ瀬がそれを止める。
「近づかないでくださいまし!あの人には、下手に近づかない方がいいですわ!あなたはエースとして、皆を逃がしてください!」
山南はそう言われても困惑するばかりであった。そのとき、
『ノイソル』
サリーがそう唱えると、グラウンドにあった照明が爆発した。
「こいつ!魔法を使いやがった!」
観客も本格的に危険を感じ、悲鳴を上げながら逃げ惑う。
「皆さん、気をつけてくださいまし!」
「そいつの凶暴性はわかった!どうやってなぎさに戻すんだ!」
早明浦が竹刀を持ちながら尋ねる。
「単純だ!鏡を見せて、自身の姿を見せればいい!…できればの話ではあるがな!」
荘介が鞭を強く握りしめながら言った。
「ああ!鬱陶しいですね!」
サリーが持っていた杖が光る。
『レドヌ』
サリーの杖から雷が発せられる。その雷は、野球部員を避難させていた山南に向かっていった。
「こっちにきた!」
山南は突然のことに対応できず、雷が命中しそうになる。感電を覚悟したそのとき、どこからともなくビームが飛んできた。そのビームは雷を相殺した。
「危ないところだったな。」
「お前は!」
足を引きずりながら、善永がやってきていた。
善永の挑戦状:日本初の少女向けアニメの一つである、横山光輝原作の魔法少女作品は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:乱反射




