29話:炎のエース
山南がマウンドに立つ。
『山南さん、マウンドに立ちます!』
『『炎のエース』!山南さんは、抑えとして公式大会で数々の勝利を掴んできました!ですが、今回は早めの登場ですね!』
「山南さんだ!山南さんにチャレンジできるのか!?」
ベンチの荘介がやけに興奮していた。青色のオーラを発しながら、山南がボールを手に持つ。
(俺は9回に出されることが多かった。どうやら、監督も焦っているらしい…)
バッターは宮ケ瀬だ。にこにこしながらバットを構える。
「今度こそホームランを打ちますわ!」
「ほざくな!俺が投げる以上、お前らはバットを振ることなどできない!」
山南が全力でボールを投げる。そのボールは、炎を纏っていた。
『投げた!炎のボール!』
宮ケ瀬はバットを振るものの、当たらない。
『空振り!』
宮ケ瀬は唖然としていた。
(なんて速さですの!?それに、あの炎…)
「『パイロキネシス』だ。手の平から炎を出すことができる兆能力。」
八ッ場が独り言のように言った。それを聞いていた篠原が呟く。
「まさに、『炎のエース』か。」
結局、宮ケ瀬は三振空振りでアウトになった。次のバッターは八ッ場だ。山南は恨めしそうに八ッ場を見る。
「八ッ場…」
「山南、悪いな。君の活躍はこれで終わりだ。」
山南は、ショートの鎗田に声をかけた。
「鎗田!あれを頼む!」
鎗田は頷く。そして、ダストメイカーを発動し、ゴミ箱を出現させた。
「『四次元ゴミ箱』!いつでも、どこでも、あらかじめ準備しておいたゴミを出現させることができる技だ!」
ベンチの荘介が叫んだ。
「それで何をするのかな?」
八ッ場が笑っている。鎗田はそこからガラス片を取り出していた。鎗田は、そのガラス片を宙に浮かべる。が、それ以上は何も起きなかった。
「てっきり、それで僕を切り裂くのかと思ったよ。」
「本当はそうしたいところだがな!」
山南が炎のボールを投げる。八ッ場がバットを振ろうとしたそのとき、
(眩しくて、ボールが見えない!)
八ッ場はバットをボールに当てることができなかった。
『空振り!八ッ場さんも当てられない!』
『やはり山南さん、違いますね!』
(確かに山南の実力は本物だ。だが、あいつ!鎗田って奴!奴が出したガラス片が、太陽光を反射して、妨害している!眩しいし、鬱陶しいことこの上ない!)
ガラス片が反射した光の妨害によって、八ッ場さえも三振空振りでアウトになった。これが山南の実力か、とクイズ研究会の部員たちが戦慄している。次のバッター、善永に代わったなぎさが打席に向かおうとした。
篠原があることに気がつき、なぎさに声をかける。
「なぎさ!杖を忘れているぞ!」
魔法を出すための杖を、ベンチに忘れていたのだ。
「あっ!すみません!」
なぎさがベンチに戻り、篠原から杖を受け取る。
「ありがとうございます!打ってきます!」
そして、なぎさは再び打席に向かっていった。篠原は笑顔で見送ったが、同時に違和感を覚えた。
(あの杖滅茶苦茶重かったな…あんなの持てるなんて、かなり力持ちだな。)
なぎさは、杖を打席近くに置いて、バットを持つ。
『八番バッター、なぎささん!』
『野球部員ですら、彼女にメロメロです!』
(うう…やっぱり、恥ずかしい!この年でこの格好は!…でも、えいちゃんのため!えいちゃんは、部室と僕との思い出の場を重ね合わせ、その居場所を守るために頑張ってきた!その頑張り、絶対に無駄にしない!)
山南がボールを持ち、なぎさの方を見る。
(たく…どいつもこいつも、可愛い女の子に見惚れるなよ…でも、こうして見ると、本当に可愛いな…)
山南がボールを投げようとしたとき、なぎさはあるものを見てしまった。
それは、鎗田が浮かせていたガラス片に映った自身の姿であった。
善永の挑戦状:拡散反射ともいう、光が凹凸のある面で様々な方向へ反射することを何という?
前回の『善永の挑戦状』答え:『移民の歌』




