28話:野球部の意地
四番のバッター、アロマが打席に立つ。
『四番!キューバからの助っ人!アロマさんです!』
『公式試合での本塁打数10!四番に相応しい打者です!』
「俺!打つ!ホームラン!」
アロマがバットをぶんぶん振り回す。空気を切り裂く音がマウンドにまで聞こえてきた。一太が汗を垂らしながらボールを手に持つ。
(せっかく皆が5得点も稼いでくれたんだ!ここからは死守です!)
一太は全力でマッドボールを投げる。しかし、アロマは難なくボールを打ち返した。
「そんな!」
『おー!ボールはレフトに飛んでいく!かなり高い!荘介さん、鞭を伸ばすも風にあおられた!八ッ場さんも向かいますが、ダメか!高さが足りないか!?』
『キューバまで飛んでいきそうな勢いです!捕りに行くには、ビザとパスポートが必要になりそうです!』
ボールは場外に飛んでいき、あっさり一点取られてしまった。その後もホワイトスモークの赤坂やコレクターの永井によって、一太のボールが打たれる。そして…
『七番バッター、骨川さん!』
骨川が打席に立つ。キャッチャーの黒部が話しかける。
「さっきみたいに料理之鉄人を発動したらどうだ?お得意のブロードボイルでキャッチャーを攻撃してみろ。」
骨川は相手にせずバットを構える。オーラこそ発していたものの、ブロードボイルはしていなさそうだ。黒部は続ける。
「その足で走れるかな?」
黒部が一太にサインをする。一太は頷き、ボールを投げた。
『骨川さん、打った!』
ボールはレフトに飛んでいく。レフトを守備していた荘介が鞭を伸ばす。が、鞭の先端には触れたものの、ボールは滑ってどこかに飛んでいった。
『荘介さん、捕れません!そのまま場外に飛んでいった!』
「そうか!油を発生させて、それをバットに行き渡らせたのか!そんなこともできるとは!」
そう驚いている黒部に、からかうように骨川が言った。
「走る必要はなかったな。」
『これで、野球部は合計4得点!』
『2回の時点で壮絶ですね!』
野球部の勢いは止まらない。
『八番バッター、芦屋さん!』
『足がかなり速いとのことです!』
芦屋がバットを勢いよく素振りしている。それを見て守備が警戒した。
「八番バッターだぞ!そんなに警戒するな!」
点数が迫られていることもあり、一太は緊張していた。
「一太!大丈夫だ!リラックス!」
ファーストの本田が声をかける。一太は深呼吸し、ボールを投げた。
『投げた!おや!芦屋さん、バントの構えだ!素振りは関係なかった!』
転がったボールを黒部が拾い、見上げる。しかし、芦屋の姿が見当たらない。
「黒部!ボールは持ったままだ!」
篠原がそう言ったのを聞いて、黒部はボールを持ったまま構える。すると、三塁に芦屋が立っているのが見えた。
『見えましたか!?芦屋さん、一気に三塁まで進んだぞ!』
「そうか…自身の移動速度を高める『ワイルド・スピード』か!」
荘介が何かを思い出すように言っていた。
『さあ、野球部、追いつくか!九番バッター、三矢!』
ここは、一太が見事に三振を奪う。だが、一太のマッドボールに適応した半崎や鎗田によって、塁に進められ、1得点を許す。
『ここで同点だ!流石野球部!意地を見せる!』
続いて石山から三振を奪い、迎えるは四番アロマ。
『四番、アロマさん!』
現時点で、塁にいるのは半崎と鎗田。ここでホームランでも打たれたら、この先クイズ研究会は厳しくなる。
(ここは、絶対に打たせない!絶対に!)
一太は、深呼吸をして、ボールを投げる。アロマがフルスイングでボールを打ち返す。
『飛んでいった!ライトの八ッ場さんの方に飛んでいく!これは対応できるか!』
八ッ場はとにかくボールを追いながら走る。
「くそっ!これ以上、野球部の流れにはさせない!」
八ッ場は釣り竿を出しながら、高くジャンプする。
『八ッ場さん!飛んだ!釣り竿を伸ばし…消えた!ボールが消えました!八ッ場さん、捕球できました!』
「よくやった!八ッ場!」
メンバーが八ッ場を称えながらベンチに戻っていく。八ッ場も満足げな顔をしていた。
こうして、4回までは一進一退の攻防が続く。お互いが相手の兆能力を知ったことによって、対策がなされるようになったのである。そして、得点が変わらぬまま迎えた5回表、野球部からタイムの申し入れだ。
『野球部!ここでタイムだ!』
骨川のもとに永井と監督と思わしき人物が近づく。何かを話し合っているようだ。いずれ、骨川はベンチの方に戻っていった。それと同時に、音楽が流れ始めた。これまた聞き覚えのあるメロディーだ。
「レッド・ツェッペリンの『移民の歌』か…これでやってくる奴といえば…!」
八ッ場がぼそっと呟いた。よく耳にするブラントの雄叫びがグラウンドに響き渡る。音楽と歓声に迎えられながら、一人の選手がマウンドに向かっていた。
『ここで救援投手!山南恵南さんだ!』
善永の挑戦状:映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』では挿入歌として使用された、冒頭部分のブラントの雄叫びが有名な、レッド・ツェッペリンの楽曲は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:美墨なぎさ




