22話:特訓の日々
メンバーが揃ってからの放課後は、野球の練習をする日々だ。
黒部はそれぞれの兆能力を生かせるよう、ポジションを考えている。他のメンバーは、捕球やバッティングなど基本的な練習をする。
善永と一太は、ペアになってキャッチボールをしていた。すると、善永は変な方向にボールを投げた。一太がそれを取りに行く。
「えーと、確かこの辺りに…ありました!」
飛んでいったボールを見つけ、それを拾う。元の位置に戻るため振り返ると、善永が立っていた。
「どうされたのですか?」
「斎藤さん、一つ聞きたいことが。」
「ええ。構いませんよ。」
「オーラ感知機のことなのですが…」
「!」
一太が持っていたボールを落とした。
「やはり、知っているんだな。」
その反応を見て、善永は言った。
「そうですか…あなたも知ってしまいましたか…そうです。この学校のオーラ感知機は作動していません。」
「やっぱりそうか!…生徒会と教師だけが知っているんですね?」
一太がボールを拾いながら言う。
「ええ、そうです。」
「なぜ作動しないんですか?」
「壊れているんですよ…そして、それを直すお金がないのです。」
善永から乾いた笑いが出る。
「冗談はやめてください…ここは、腐っても名門私立ですよ?金がないなんて…」
一太が即座に返す。
「クイズ研究会の強制廃部処分も、予算の赤字に起因しています。」
「まじかよ…」
善永はショックを受ける。
「そういうわけで、オーラ感知機が壊れていることを隠すことで、凌いでいるのです。どうか、このことはご内密に。さあ、早く戻りましょう。一秒が惜しい。」
そう言って、一太は走っていくのだった。善永はその場で考え込む。
(斎藤さんは、八ッ場のことを知らない…ってことは、あいつは生徒会の人間ではないはずだ…なぜ、オーラ感知機のことを?)
善永も戻ろうとしているとき、メンバーのもとに山南が近づいているのが見えた。
「あいつは!」
善永は急いで皆の方に走っていく。山南はメンバーに話しかける。
「どうやらメンバーが揃ったらしいな?…ん?10人もいるのか。なるほどな、ちゃんと控えも用意したってわけだ!」
「いいえ、私は出ません。」
なぎさが口を開く。山南はなぎさを見て、鼻で笑った。善永はむかっ腹が立ったが、なんとか落ち着かせた。山南が品定めするようにメンバーを見渡す。そのとき、何者かに目をつけた。その者は山南に対して背を向けている。
「お前、まさか!」
山南がその者に急接近し、肩に手をやる。山南はその者を振り返らせた。
「八ッ場!お前、なぜここにいる!」
「八ッ場さん、山南さんと知り合いなのですか?」
八ッ場は黙っている。
「野球部を辞めたと思えば、クイズ研究会に入部したのか!この恥知らずめ!」
「!」
皆が八ッ場の方を見る。
(元野球部だったのか!オーラ感知機のことは、生徒会の山南から聞いていたのだろうな。)
山南は激昂している。
「当日は覚悟しておけ!こうなったら、とことんぶちのめしてやる!」
吐き捨てるように言って、山南は去っていった。善永が八ッ場に近寄る。
「なぜ俺たちに元野球部であることを隠していた?」
八ッ場は、帽子のつばに触れながら、静かに口を開いた。
「だって、言ったら、僕に野球のこと聞こうとするでしょ。面倒くさいことに。」
「…」
善永はしばらく黙り込んだが、一太や荘介の方を向いた。
「斎藤さん、二太郎君に連絡を。荘介は新聞部だ。」
「あー!いいよ!野球のことなら、何でも聞いてくれ!」
八ッ場のこともわかったところで、皆は再び練習に励んだ。
そして、ついに試合当日となった。会場はグラウンドだ。観戦の生徒で賑わい、まるで体育祭の盛り上がりだ。教師たちですら、どちらが勝つかを予想している。実況の二太郎がマイクを持つ。
『さあ、今日の午前突如として発表された、野球部対クイズ研究会の野球試合です!ご覧ください!この人数、そして歓声を!スポーツへの兆能力使用を反対するサークルが騒いでいますが、それさえもかき消す盛り上がりです!』
会場は歓声に溢れた。
『まずは、クイズ研究会の選手入場です!』
クイズ研究会の部員たちが、生徒たちの声援を浴びながら入場する。
「頑張れー!」
「期待してるぞ!」
『会場の声援を浴びながら、クイズ研究会の部員たちが入場しています!いやー、よく揃えました!』
『どのように戦うのか、見ものですね!』
『それでは、野球部の選手入場です!』
すると、野球部の部員たちが、同じく生徒たちの声援を浴びながら入場してきた。
善永の挑戦状:『道楽の行き止まり』と言われる趣味は何?」
前回の『善永の挑戦状』答え:ボウズ




