21話:チーム結成
下着泥棒の件も解決し、善永たちは部室に集まっていた。
「というわけで、真犯人のこいつには、贖罪として入部してもらうことになった。」
「帰宅部三年、八ッ場丁三郎。よろしく。」
「よろしく!」
皆、歓迎ムードであった。なぜなら、
「これで、メンバーが揃ったということだな!」
本田が嬉しそうに言った。
「ああ、後は勝つだけだな。」
篠原も笑顔で言っている。そんな中、八ッ場は呟いた。
「めでたい人たちだね…」
「なんだと!」
「だってそうだろう?相手は現役の野球部…それに対して、こっちは寄せ集めだ。勝てると思うかい?」
「…」
誰も言い返せなかった。善永が口を開く。
「八ッ場の言う通りだ。俺たちは野球の素人。全員な。だから、今日から特訓だ!」
「はっ!それでも難しいだろう!」
八ッ場が冷笑している中、黒部が立ち上がった。
「俺の存在を忘れてしまっては困る。この『サッカー界のカスパロフ』をな!」
皆が黒部の方を見る。
「サッカーじゃん…野球じゃないじゃん…」
八ッ場がぼそっと呟いていたが、黒部は気にせず喋り続ける。
「いいか!ポジション決めや作戦は俺に任せろ!皆は、捕球とか基礎的なことだけを練習すればいい!それと、これは兆能力ありのレギュレーションだ!兆能力をいかに応用するかを考えるんだ!」
「そうですわ!無色オーラを使用しないことと、相手そのものを攻撃しないこと、これら2つさえ守れば、何をやってもいいのですわー!」
無色オーラとは、レベル3の者だけが使用できる高等技術である。オーラの色を無色にする技術で、これによって兆能力の使用を悟られないようにするのだ。アンフェアだとして、スポーツでの使用は禁じられている。もっとも、高校生で兆能力がレベル3に到達している者などまずいないので、あまり気にする必要はない。
「やれやれ、殊勝なことだ。」
八ッ場は目をつむりながらため息をついた。
「お前もやるよな?じゃないと…」
「わかってるさ。やるよ。やりますから。だから、下着泥棒の件だけは本当に勘弁してください。」
八ッ場が下着泥棒事件の真犯人であることは、クイズ研究会の部員以外は知らない。その弱みを握られているのだ。
「そうと決まれば、身だしなみを…はっ!」
宮ケ瀬が手鏡を取り出そうとするが、何かに気がつき、そのまましまった。
「失礼。つい…」
「いや、いいんだ。気を遣ってくれてありがとな。」
宮ケ瀬と善永のやりとりを、早明浦が不思議がる。
「何を謝っているんだ?」
「すまないな。メンバーも揃ったし、これは言っておかなければならないことなのだが…」
善永の話に、皆が耳を傾ける。
「なぎさがいるときは、鏡を出さないでくれ。なぎさは、鏡で自身の姿を見ると…まずいんだ。」
「具体的に、どうまずいのですか?」
一太の質問に、善永は口をつむぐ。
「言えません…いや、言いたくありません…」
「?…そうですか…わかりました。気をつけます。」
善永、荘介、宮ケ瀬、そして当のなぎさは険しい顔をしている。
「ごめんなさい…面倒をおかけします。」
「気にしなくてよい!人には、一つや二つ、苦手な物があるもんだ!」
八ッ場が貧乏ゆすりしながら言う。
「そろそろ行かないか?時間がないんじゃないの?」
「そうだな!早くグラウンドに向かおう!俺が一番に着いてやる!」
「サッカー部の人間として、競争には負けん!」
そう言って、早明浦が部室を飛び出していった。宮ケ瀬や黒部がそれに続く。
本田や篠原は、彼らの行動を愉快そうに見ながら、歩いて部室を出ていく。部室に残された善永が呟いた。
「本当に賑やかな奴らだな…」
なぎさがくすっと笑いながら言う。
「そうだね!早く僕たちも行こう!僕は、何か差し入れを買ってくるよ!」
そうして、なぎさや善永たちも部室を後にするのであった。
試合当日まで、あと数日に迫っている。クイズ研究会のメンバーたちの特訓が始まる!
善永の挑戦状:釣りの用語で、魚が一匹も釣れない状況のことを何という?
前回の『善永の挑戦状』答え:外道




