17話:命がけのパス
荘介がフェンスを飛び越えたことは、誰もが動揺した。
「荘介!」
「いいから!てめえはそこでパスを待っていろ!」
『誰か、飛べるタイプの兆能力持っている人いますか!?『バードストライク』とか!いない!?』
「まずいぞ!これは!」
「え!?ちょっと待ってくださいまし!」
それぞれが、それぞれ動揺している。それでも、宮ケ瀬はブロッサムシュートを放った。そして、放たれたボールを、フェンスを飛び越えた荘介の足が止める。荘介の足に花びらが襲いかかる。
「ぐうう!」
それでも荘介は、ボールを善永にパスするため、ボールから足を離さない。
「うおおおおおおおお!」
荘介は気力を振り絞り、ブロッサムシュートを打ち返した。そのボールは、善永の方に飛んでいく。
「善永ー!シュートしろー!!」
荘介は落下しながら言う。善永は、荘介を一瞥もせず、ボールだけを見ている。
「わかったぜ!荘介!お前の気持ちを無下にしない!」
黒部さえも荘介が飛び越えたフェンスの方に向かっている中、善永は足にオーラを纏わせている。裏門にボールをぶつけることだけを考えたのだ。善永は、飛んできたボールを裏門めがけて蹴った。ボールは勢いよく蹴り飛ばされ、裏門に衝突する。
『え、えーと!ゴールはしました!クイズ研究会の勝ちです!ただ、心配です!』
『ドローン!万が一のこともあります!一応、退避しましょう!』
ボールが裏門にぶつかったのを確認して、善永はすぐにフェンスの方に向かった。
「荘介!」
フェンスを見ると、何かが引っかかっていた。荘介の鞭だ。荘介は、鞭をフェンスに引っかけることで落下を防いだのである。
「ほっ…」
善永は安堵していた。ほっと胸をなでおろす。宮ケ瀬や黒部が鞭を引き上げて荘介を救出した。
「たく!いくらなんでも無茶が過ぎるぜ!」
「本当ですわ!心臓が止まるところでした!善永様!手を当ててください!」
善永は荘介に近づく。ぶん殴ろうとしたが、
「シュートは決まったよな?かっこよかっただろ?俺!」
荘介の一言に手が止まった。荘介は笑っていた。善永もつい怒るのを忘れて、つられて笑い始めた。しばらく笑っていた2人だったが、荘介がはっとする。
「そうだ!なぎさ!俺はそのために、あんなことをしたんだ!お前ら!なぎさを…」
「ああ、それなら、そろそろ…」
宮ケ瀬が正門の方を指差す。荘介と善永がその方向を見ると、なぎさと複数の女子生徒が歩いているのが見えた。
「なぎさ!…と、あれは?」
「女子サッカー部ですわ。なぎささんと遊びに行かせていたのですわ!」
「「はあ!?」」
2人は呆気にとられる。黒部が口を開いた。
「監禁でもしてると思ったか?そんなことできるわけないだろう。お前らが負けたとしても、なぎさちゃんは返すつもりだったし、クイズ研究会に入部するつもりだったんだ。」
2人は目を見開いていた。なんだよそれ!?とでも思っているのだろう。
「まあ、お前らが勝ったし、よかったよなあ?」
なぎさが屋上にいる2人に気がついた。2人に向かって手を振った。
「おーい!えいちゃん!そう君!」
2人はその場でへたり込む。
「「なんだよ~それ~!」」
2人は顔を見合わせて、再び笑いだした。もっとも、今度は苦笑であったが。
善永の挑戦状:その工事には171名の犠牲者を出した、富山県にあるダムは何?
前回の『善永の挑戦状』答え:スケープゴート




