16話:屋上の熱戦
「荘介!さすがに屋上で兆能力はまずい!」
善永は動揺しながら荘介に言う。
「大丈夫だ!この学校のオーラ感知機はザル警備もいいところだぜ!」
荘介は鞭を出現させている。
『お、おい!あれって大丈夫なのか!』
『あー、とりあえず見なかったことに…』
実況の方もざわざわしている。しかし、オーラ感知機が機能している際に発せられる音が聞こえない。つまり、
「セーフ!いけるぞ!善永!」
ということだ。だが、それを知って都合がよいのは2人だけでない。
「いいこと知ったぜ。ありがとな!」
黒部も兆能力を発動していた。
(こいつ…宮ケ瀬の殺人パスを無傷で受け止めていた…一体、どんな兆能力なんだ?)
善永は、マークの攻防を繰り広げながら、宮ケ瀬に尋ねる。
「宮ケ瀬、あの黒部って奴の兆能力は?」
「教えませんわ!」
「教えてくれたら、ハグの一つでもしてやるんだがな。」
「『アンチ・スケープゴート』。死に至らないものである限り、自身が受けた痛みを兆能力範囲内にいる別の誰かに押しつけることができる兆能力ですわ!今頃、どこかで誰かが泣いていますわ。」
「園田先生!大変です!」
グラウンド近くにある剣道部の道場、そこが少しざわついていた。
「どうした!」
「早明浦さんが、泡吹いて倒れました!なんかすごい傷だらけです!」
「何!?」
雄康が早明浦の容態を確認する。死んでこそないものの、かなり酷い切り傷だ。
「こいつはブルーム・ファウンテンによるものだな…それにしても、見事だ…じゃなくて!保健室に運べ!」
早明浦にとっては災難だったろう。
宮ケ瀬がべらべら喋っているのを聞いて、黒部が叫んだ。
「てめえ!何話してんだ!」
黒部がボールをキックする。
「善永様とのハグ…そのためなら、容易に仲間を売りますわ!」
「お前の方がスケープゴートだったようだな。」
黒部にとって踏んだり蹴ったりだったのは、そのボールが荘介の鞭に捉えられていったことだ。
『荘介さん、ボールを奪いました!』
『どうやって奪ったかは解説できないほど、上手でした!』
「善永!先に裏門の方に蹴っておくぞ!」
「そうはさせませんわ!」
宮ケ瀬が花びらを舞わせる。
「させるか!」
善永はアイビームで花びらを燃やし尽くす。これで安心…ではない。荘介と黒部が熾烈なボール争奪戦を始めている。
『これはすごい!Jリーグさながらの熱戦です!どっちが制するのでしょうか!足と足の縺れ合い!その間を縫うように転がるボール!あの足にボールを通すことよりも、針に糸を通す方が簡単でしょう!』
「荘介!俺はこの女を食い止める!だから、気にせずボールの保持に集中してくれ!」
「まあ!「食い」止める!?召し上がってくださいまし!」
「すまん!やっぱり、早めに蹴ってくれ!今すぐにでもこいつから離れたい!」
「んなこと言われたってよ!」
荘介は苦戦している。いや、むしろサッカー部相手に善戦している方だ。
「やるね。クイズ研究会にしては!だが、これで終わりだ!」
黒部はついに荘介からボールを奪った。
「しまった!」
『黒部さん、荘介さんからボールを奪った!』
黒部はボールを保持したまま動かない。
「ここで下手に蹴れば、またお前にボールを取られる…」
黒部はボールが低めに飛んでいくように蹴った。
「くそ!」
「やはり、低いボールは難しいよなぁ!」
善永をドン引きさせることでマークをかわした宮ケ瀬が、そのボールを受け取る。
「さあ、ここから私の必殺シュートが光りますわ!」
宮ケ瀬が花びらを舞わせ、必殺シュート『ブロッサムシュート』を放とうとする。そのときだ。荘介が宮ケ瀬の方に走っていくのが見えた。
「荘介!?どうした!」
「善永!お前は裏門が見える位置に行け!」
善永は困惑している。
「いいから!早く行け!」
おどおどしながら善永は言われた通りにするのであった。
「もう遅いですわ!それに、鞭ごときで私のシュートが止められると思って?」
宮ケ瀬が笑いながら言った。それを見て、荘介もにやっとしている。
「馬鹿野郎…鞭じゃなくて、この足で取ってやる!」
「!」
宮ケ瀬がシュートしようとしたその瞬間、荘介は後ろを向きながら屋上のフェンスを飛び越えた。
善永の挑戦状:贖罪のため山羊に罪を背負わせて野に放ったということに由来する、身代わりやいけにえといった意味合いを持つ言葉は何?
前回の『善永の挑戦状』答え:水島武蔵




