戴冠式
ハルカが帰ってしばらくすると、妖精たちがやってきた。セーフだ。
「ショウ、良いか?」
「ロルとテクも一緒だな。広場で話そうか?」
「誰か中にいるのか?」
「いや、いないぞ。散らかってるし、3人だからだよ。」
「そうなのか。」
リムの視線が痛い。しかし問題ないぞ。
「移住の件だが、ロルもテクも同意してくれたのじゃ。」
「そうか、それは良かった。」
「ショウ様には色々助けていただきお礼の言葉も見つかりません。本当にありがとうございます。」
「いえいえ、お二人には迷宮探索やカソーピアとの戦で大いに活躍してもらい、こちらこそ感謝しています。引き続きよろしくお願いします。」
「お任せください。次は扉攻略ですね。」
「ロルにはモウル領、テクにはコンポロに行ってもらうことにしたのじゃ。」
「そうですか。テク殿が移住する時にはスティリアスに言って、迷宮を開けるようにします。」
「宜しく、頼みます。準備があるので、少し先になると思いますが。」
「カソーピアを倒して、またお二人の領地をこちらで開けるように、共に進みましょう。」
3人の妖精が力強く頷いた。
「向こうに行く前に、リム姉さまの公爵就任にも参列したいです。」
「そうだ、日程は決まったのか?」
「いや、色々立て込んでおるしな。」
「早速するぞ。ロルさんやテクさんにも出てもらいたいしな。」
シュレンジュとエリーンを呼んで日程を決めた。
「シュレンジュ、荘園の財政は大丈夫か?」
「はい、農作物も人が増え、放牧も順調ですので、こちらで生活する基本的な穀物は自給できるようになりました。カソーピアとの3度の戦いで1200キロほどの金と銀が手に入っています。ロル様とテク様に100キロずつ、戦に参加した者への報酬に10キロ、新たに雇用した者への賃金に10キロほど使っていますが、問題ありません。」
「そうか、シュレンジュがしっかり見てくれてると安心だ。山の民や草原の民を更に雇っても良いか?」
「そうですね。シンリアスの税を今の三分の一にしても相当の量ですから全く問題ありません。すこし別の心配はありますが。」
「え、何が心配だ?」
「同族の事ですが、シンリアスはいまは税が重くて食料が不足しており、子供が多く死ぬので人口が安定しています。税を大幅に下げると、食料が増えるので人口も爆発的に増えます。元が100万人もいるので、そんなことになるとコントロールできなくなるかもしれません。」
「なるほど、そうなるのか。」
「私としては、シンリアスの同胞に最低限の生活をして急激に増えるのではなく、生活の向上を目指してゆっくり増えてほしいです。私自身こちらにお世話になってから、豊かな生活をさせていただき感謝していますが、そう思っています。」
「なるほど、俺は畑の民の考えを良く知らないが、避妊とかは無いんだな。」
「避妊、ですか?」
「俺がいたところでは、子供は2人が普通でそれ以上は養えないので作らないようにしているんだ。」
「そんなことができるのですか?」
「みんなは人間の雌が年中欲望に生きてるように言うが、ひと月に二日ぐらいしか子を為すタイミングは無いんだ。なのでその日を避ければ子はできない。」
「そうなのですね。畑の民は年に2回しか欲望が出ませんが、その時は常に妊娠します。」
それは、どうしようもないな。
「しかし、生まれた子を亡くすのは親にとって苦痛ではないのか?」
「それはもちろん悲しいことです。」
「10人産んで7人死ぬより、3人産んで全員元気に育てる方が良いんだな。」
「それは間違いなくそうだと思います。」
「なるほど、すこし考えてみるよ。」
これは色々むずかしいな。
「それじゃ、ビジェイとドロンに何人でも良いから新たに山の民と草原の民を雇えないか聞いてみてくれるか。」
「はい、早速いたします。」
10日後に各地の領主とエリーン、ミドリ、ケンタウロス10人、ドワーフ20人を連れて、ショウビアの迷宮に向かった。そこから全員がケンタウロスに乗って島の真ん中を目指した。
「ここはずっと平地なんですね。」
「はい、この島は北と南に東西に広がる大きな山脈がありますが、その間にあたるこの地には大きな山はありません。草原に民ですと、二日ほどで中央まで行けますね。素晴らしい。」
コントルホーンは俺と一緒にエリーンの背中に乗ってる。。
「コントルホーン殿、この島の宰相をお願いしたい。」
「宰相、ですか?」
「この島全体の統治をするということだ。」
「島全体ですか、私などにそんな大役は無理です。」
即答かよ。
「俺が仮に王になったとしても、ずっとここに居る訳にはいかない。同じ価値観で国を治める人が必要なのだ。」
「それは分かりますが、私のような若輩には、」
「コントルホーン殿は多種族が協力する国の素晴らしさを理解している。そんな人が適任なのだ。それに経営の特技もある。」
「いや、私など経験不足です。」
「それは、シュレンジュがサポートする。他に適任はいない。」
コントルホーンは俺の背中を握る手に力を込めた。
「わかりました。命を懸けて頑張ります。」
その後、俺が考える構想を説明した。
二日後夕方に島の中央の町に着いた。カソーピアからの監視者たちはドワーフたちが既に排除していたが、騒然としている。
「これは、どうなっているのでしょう。」
5人の長老が俺を迎えてくれる。
「騒がしくて申し訳ありません。戴冠式の準備と、仮の王宮の建築が進んでおります。」
「戴冠式ですか?」
「ショウ、民を安心させるためにも必要じゃぞ。」
リム、お前が言うなよ。
「そうです。みんなが認めているのです。」
スティリアスも乗っかってくる。お前はいつもかわいいな。五つの部族から多くの人がここに集まっているようだ。目いっぱい着飾っている気がする。なんかどんどん話が進んでるぞ。翌朝、広場に多くのオークが集まった。
「ここにシンリアス初代王、ショウ様の戴冠式を挙行する。」
フィンゼィクの声に全員が最敬礼をした。
「我ら五部族はショウ様の元で一つの国として結束して国づくりを進めることを誓います。」
五人の長老が進み出て俺の前に跪く。
「王の命には絶対服従致します。」
五人が唱和した。よく準備してあるな。その言葉に多くの参列者から歓声が沸き上がる。期待しすぎとちゃうか。
「それでは、ショウ様からのお言葉である。皆清聴せよ。」
「シンリアスの皆さん、ショウです。この度は長老の皆さんから推されて王になりました。俺が目指す国はみんなが笑って暮らせる国です。今までカソーピアの暴政に苦しめられていた皆さんと笑顔で暮らしたいと思います。そのためにみんなで力を合わせて豊かな国を目指しましょう。」
屋外の会場だが、全員が歓声を上げる。
「まず、この国の税は今までの三分の一にします。税はこの国発展のために使います。具体的には山の民や草原の民を雇って、防衛や物流をしっかりしていきます。道や学校を作り民の生活を向上させます。他国から物資を輸入して生活を高めます。飢饉に備え穀物を備蓄します。新たな耕地を開拓します。そのようなことに税金を使っていきます。」
さらに歓声があがる。
「そのような政策を進めるために、ここにコントルホーンを宰相として指名します。コントルホーンの元に政府を作り、共にしっかり国つくりを進めようではありませんか。」
コントルホーンの任命にどよめきがおこるが、歓声にかわった。
「カソーピアの脅威は去ったわけではありません。しかし私たちには強力な仲間がいます。ここに居る、空の民リム公爵、海の民ジェイパス総統、草原の民モウル伯爵、谷の民スティリアス王、この仲間たちと共にカソーピアに打ち勝つまで頑張りましょう。」
4人が手を振ると、場の歓声は更に大きくなった。




