シンリアス奪還
翌日の夜にはシンリアス攻略部隊がジェローリアの港に集結した。今回は僧正もいないようなので、ドワーフ中心の編成だ。魔法職はいるが、万が一の為と言っていいだろう。
「すばらしい山の民の兵団ですな。」
船に乗り込むドワーフたちを見て、ロンドビーが声をあげる。
「そうですね、全員レベル60ですから、カソーピアの普通の兵では問題になりません。」
北の港にはリム、俺、ペルカ、メレンタス、スティリアスなどが向かう。南の港には、ロル、エリーン、サイクス、モウル、サフィアス、スリニーなどが向かう。ドワーフたちは船が初めての者も多いので、甲板は夜中でもドワーフで一杯だ。俺も甲板で暖かい風に当たるのが好きで、リムが肩に座っている。
「風が気持ち良いのう。」
「そうだな、みんな航海を楽しんでるな。戦前とは思えない。」
「それだけ、国が強くなったのかしれんな。過酷な状況の民を助ける余裕ができただけでも良いことじゃ。」
「リムの家族を助けられなかったは済まなかったな。」
「いや、あれはどうしようもなかったぞ。ショウが気にせずともよい。それにショウがいたから、わらわは立ち直れた。」
リムが俺の首に抱きついて来る。かわいい奴や。
赤道を越えるところでジェイパス達が合流した。30人ほどの人魚が並走している。半日で北の港に近づいた。サイクスたちの船もそこから一日かけて南の港に向かった。
「さあ、いくぞ。」
俺の号令に応じて、まず100体ほどのカニが港に上陸していく。既にオークの作業者は港から逃げ出しており無人だ。カニが迷宮に向かう道を進んでいき、その間に50名が次々と小舟から上陸していった。
「カソーピアはこの辺りにはいないみたいですね。」
眼の良いスティリアスが俺の横で廻りを警戒している。1時間ほど進むと迷宮のそばに出た。そこにはカソーピアの建物が迷宮を取り巻いている。カニが襲いかかってきたのに反応して、カソーピアの魔法職が攻撃してくる。リムはその場所を特定して闇魔法で次々と撃破していった。カニも何体かが爆砕したが、カソーピアの魔法職も早々と全滅した。そこからはドワーフたちが10人4組でカソーピアの騎士を押し込んでいく。ドワーフたちが囲まれそうになると、リムが全体魔法で支援攻撃した。ここの騎士はそれほど高い魔法防御防具は持っていないので、次々と倒されていく。
「リム、死体は残してくれよ。」
「わかっておる、少し弱めているのじゃ。」
後方の俺たちに向かってくる少数の騎士にはスティリアスが即座に対応して、切り刻む。俺とリムはフォイヘスの背中に乗っているが、横でペルカが目を光らせている。全く危険はない。2時間ほどでカソーピア勢は沈黙した。
「終わったようじゃな。」
「そうだな、ゲートのオーナーは恐らく魔法職だ。どこだか分かるか?」
「ちゃんと、場所を覚えておるぞ。」
リムが8人ほどの死体を指さしたので、フォイヘスはそれを運搬車に乗せた。ドワーフ20人を地上の警備に残して、俺たちは迷宮に進んだ。そしてゲートでオーナーの切り替えに成功した。仮に俺がオーナーになって、迷宮を閉じた。
「よし、これで大丈夫だな、地上に戻ろう。」
俺たちは迷宮を出ると、緑の狼煙を何発も打ち上げた。それを合図にオーク達が町に戻ってきた。
「ショウ様、ありがとうございます。」
カルトノファンは涙で言葉が詰まる。
「いえ、まだ残党がいるかもしれませんから20人の山の民はこちらに残ります。」
「それは助かりますが、よろしいのでしょうか?」
「はい、一緒にがんばりましょう。それと迷宮のオーナーをこちらの人に切り替えたいのですが。」
「それは、ショウ様でよろしいかと。」
「いえ、そういう訳にはいきません。早速切り替えたいのですが。」
「そ、そうですか、それなら愚息でお願いいたします。」
「明日には南の迷宮も奪回できるので、その後また長老の皆さんに集まっていただきたいのですが、場所どこが良いでしょうか。」
「そうですね、毎回海の民の手を煩わす訳にはいかないので、やはりフィンゼィク殿のところが良いでしょう。」
「道は通っているのですか。」
「はい、北と南からは山越えになりますが、道は通じております。10日ほどかかりますが。」
「そうですか、次回来るときには何人か草原の民を送りますので、そうすれば早くなりますね。」
「そこまでしていただくわけには。」
「違う種族が来るのは問題ですか?」
「いえ、決してそうは思いません。コントルホーンが見た、各種族が協力する国が理想だと、長老たちで合意しております。」
「それは良かった。色々な種族を呼んで豊かな国にしていきましょう。」
「はい、ご指導ください。」
俺たちはドワーフ20人を警備に残してジェローリアに戻った。翌日には南の攻略部隊も目的を達して、戻ってきた。
「ロンドビー船長ありがとうございました。これからは西の迷宮経由でシンリアスにいくので、次はモウル領の船10隻の引き取りに行ってもらえますか?」
「はい、シェイトンでも船員募集したので、その連中を連れて、なんとか10隻受け取れるようにします。」
「ご苦労をおかけします。」
「いや、今回のことで船長に昇格したり、組頭に昇格する者も出てますから、みんなやる気ですよ。やはり組織が大きくなることは良いことですな。」
シンリアス攻略組は持ち場に戻った。俺たちも山小屋に久しぶりに戻った。
山小屋に戻ると、ハルカとメイガヘリスがやってきた。
「ショウ様、よろしいですか?」
「おう、入ってくれ。」
ふたりは木箱をいくつか持ってきた。
「モイナムさんから受け取った宝石ですが、」
なに?パチモンをつかまされたか。
「凄いものでした。」
「そうなのか?」
「すぐにでも融合につかえそうな大きな宝石が30ほど、そして小さい宝石が30キロほどありました。」
「それは凄いな、さすがモイナム殿だ。早速研磨を進めてくれるか?」
「はい、そのように致します。小さい宝石はここに置いておきます。」
「ありがとう、確かに受け取った。ハルカ、ちょっと話をするか?」
「はい、嬉しいです。」
ハルカは部屋に残った。
「長老一族を家族に迎えることになったが、あの場ではなかなか意見はいえなかっただろう、ハルカはどう思っている?」
「苦しんでいる同族が救われるのは、本当にありがたい話です。その上長老の一族を家族に迎えるのも良い話だと思います。ただ、」
「何か、心配か?」
「私たち3人はすでに何人も子を為して、ショウ様のお傍に参りましたが、この前のお話では、新たな5人はまだ幼いと思います。最初は大事に扱っていただければと思います。」
俺をどんな性癖やと思ってるの?
「おう、そうだな、そうしよう。」
その後、俺の性癖を思い知らせたのは言うまでもない。




