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ゴンフィーネス

俺たちは日が暮れると三つの小屋を取り囲んだ。

「サフィアスどうだ。」

「右の小屋は人間ばかり50人。真ん中と左の小屋は部屋がいくつか。そこに畑の民がいる。」

「真ん中と左は何人くらいだ。」

「人間20人はいる。両方とも右端の部屋が畑の民みたい。」

「スリニーは真ん中の小屋の右の部屋、ペルカは左の小屋の右の部屋に合図をしたら飛び込んでくれ。まず、外の監視役だが、何人だ?」

「6人います。」

スティリアスとティティマオが同時に言う。

「4人はここから銃で狙えますが二人は陰になります。」

「それは、私とティティマオで対応します。」

「そうだな、谷の民は山の民に続いて人質の部屋に行ってくれ。おそらく真っ暗だから人間にはは大変だろう。」

そうして作戦は始まった。

タンディの狙撃銃は威力が高い。カソーピアの騎士を次々倒していく。スティリアスたちは音もなく後ろから近づき残った監視を倒していった。次の合図で山の民が人質でいると思われる部屋に斧で窓をたたき割った。

その音を聞きつけて、右の小屋から騎士が出ようとするが、XM5が連射で騎士たちをなぎ倒していく。中央の小屋と左の小屋でも異変に気付いて騎士が動き始めるが暗闇なので動きが鈍い。すでにペルカとスリニーは人質の部屋に突入して、スティリアスたちもそれに続いている。大勢は決した。隊長らしきものが出てきて加速で反撃しようとしたが、モウルの2丁拳銃に蜂の巣にされた。凄い。


後方で戦況を見つめていたセイトロバクスが呆然としている。オークも暗闇は見えないのでどうなっているのかわからないのだろう。

「長老、ご家族は無事取り返しましたよ。」

ペルカやスティリアスたちに囲まれて15人ほどのオークが小屋から出てきた。

「ショウ様、このご恩は私の命をかけてもお返しいたします。」

セイトロバクスは泣きながら家族と抱き合った。

俺は雑魚だが、家族は凄いぞ。みんななぜか涙を流してる。うれし涙だな。

「いえ、家族を助けるのは当然のことです。」

「この15人は私の子や孫です。ありがとうございます。」

「あの子、凄い。」

サフィアスが小声で指をさした。指さしたらあかんぞ。後ろで震えている雌のオークに視線が行った。それに気づいたセイトロパクスがその雌を呼んだ。

「ゴンフィーネス、おいで。」

「はい、おじい様。」

「こちらがショウ様だ、お礼を言いなさい。」

「あっ、この方がショウ様ですか!」

「そうだ、カソーピアの人間と同じに考えてはいけないぞ。我々の王になる方だ。」

「いや、それはまだ、」

俺が異議を唱える暇もなく、セイトロバクスが続ける。

「そして、お前のあるじになる方だ。」

それはまだOKしてないぞ!ゴンフィーネスは土下座して口上を言った。

「ゴンフィーネスと申します。ショウ王にご挨拶いたします。私の命は王のものです、なんなりとお申し付けください。」

そういうと、こちらを大きな瞳で見つめた。なかなか美人だ。

「いや、まだそれは決まったことではないので、」

俺が小さな声で言うと、ゴンフィーネスはその大きな瞳から涙が溢れ出た。まわりにいるスティリアスやペルカやモウルの視線が痛い。スティリアスがゴンフィーネスに近づいて、立ち上がらせた。そしてかがんでゴンフィーネスの背中を撫でた。

「大丈夫ですよ。ショウ様は優しい方ですから、きっとお傍に行くことができます。安心してください。」

「主様、最低。」

「確かに、最低ですね。」

俺が悪いんか!しかしこれで家族会議の時に色々風向きが良くなった気がする。やはり俺は最低かもしれない。


ここでカソーピアの100人を殲滅したということは、実質開戦だ。これはことを急がないといけなくなった。俺は招集した家族以外のメンバーを元に戻した後、セイトロバクスを呼んだ。

「これで、実質開戦になりました。時間を空けると、カソーピアの守りが硬くなることでしょう。すぐに南北の町に兵を送ることになると思います。」

「おお、ショウ様、立っていただけるのですね。」

「はい、これから西の港に戻っていただくので、各長老に状況をお伝えください。長老の皆さんは内陸のフィンゼィク殿以外は人魚で送るので町で準備をお願いいたします。準備は避難の準備だけで結構です。戦いはこちらで進めるので。」

「分かりました。ご指示の通りいたします。」

サフィアスたち家族は直接荘園に送った。またゲロされても困るしな。

「スティリアス、荘園に着いたら幹部を集めて置いてくれ。」

「はい、仰せのままに。」

モウルやペルカよりはしっかりしてくれそうだ。

「ジェイパス、すまんが頼む。」

「任せるのじゃ。ここには部下を残していこうか?」

「そうだな、そうしてくれ。」

俺たちはまた1日かけて西の港に戻った。もう夕方だ。

「ロンドビー船長、このままジェローリアに戻って下さい。その後すぐにまたこっちに兵を積んで戻ってもらうことになりそうです。できればもう一隻お願いしたい。」

「そうなりましたか。わかりました。コリコラスに向かった船がちょうどジェローリアに寄るので、手配しておきます。」

俺が館に戻ると、長老たちがセイトロパクスから既に状況を聞いていた。

「ショウ様、本当によろしいのですか?」

ビルブティネルが心配そうに寄ってきた。

「まあ、遅かれ早かれこうなると思っていましたから、おまかせください。」

「何なりとご指示下さい。」

土下座しながら肩を震わす。俺は長老を立ち上がらせて、

「戦いは俺たちがするので、みんな怪我しないようにして下さい。それだけです。」

俺は笑顔で答えた。北、南、東の長老は打ち合わせをしたあと、人魚に乗って戻っていった。俺はエリーン、シュレンジュ、サイクス、ジェイパスをゲートで荘園に連れ戻した。


荘園はすでに夜だ。スティリアスが状況をリムたちに話してくれているので、主だった者が荘園に集まっている。スティリアスがいかにカソーピアが卑劣な人質作戦をしていたか強調してくれているので、シンリアスでの戦闘に文句を言う者はいなかった。

「カソーピアは直ぐにでも、人質部隊が全滅したことを知るのか?」

「わらわの部下が東の港は封鎖しているのでそうはなるまい。しかし遠からず異常は伝わるじゃろう。」

上級種二人がやり取りしている、喧嘩しないでね。

「早速、迷宮を押さえて、迷宮を閉じたいんだが、それで良いか?」

反対の者はいないようだ。

「今のオーナーをしっかり把握しないといけませんね。死体がないとオーナー変更に時間がかかりますから。」

サイクスが補足する。死体前提なのね。

「そうだな、魔法職があまり火力上げると、死体も残らないからちょっと弱めで頼む。明日にはロンドビー船長の船が戻るから、明日の夜には50人2チームで出発したい。」

俺の提案に基づいて動員計画が議論された。

「前にショウが言っていたが、取るのは良いが、守り切れるのか?」

リムがまっとうな質問をしてくる。

「それについてですが、この後家族会議を開きたいのですが。」

エリーンの言葉に俺の動悸が激しくなる。脇汗も凄いぞ。

「そうなのじゃな。」

リムがこっちを見た。目を合わせるのはやめておこう。動員計画が確認されて一同は散ったが家族は残った。

「・・・という提案を、シンリアスの長老達から受けました。」

エリーンが5人のオークの人身御供について話をした。俺はリムから離れようとしたが、エリーンに首を掴まれた。助けて~。

「そうなのか。」

意外とリムは冷静だ。よかった。

「いままでの者たちのことを思うと心が張り裂けそうじゃ。」

沈痛な表情だ。さすがだリム。スティリアスがゴンフィーネスとのことを付け加える。

「ショウ、どうしてもっとやさしく対応してやらんのじゃ。」

えっ、そっちなのか。

「いや、リムに了解を取らないと、軽々しくは言えないだろう。」

「なにを言う、わらわはショウの判断に文句をつけることはないぞ。」

それは嘘や、絶対に!

「そ、そうか、わかった。」

「それでは、5人の畑の民を家族に迎えるということで宜しいですね。お嬢様。」

「お、おう、手を差し伸べてやるのが良かろう。」

なぜか涙目だが、しっかりと答えた。さすがだ。

「分かりました。そうすると5人とも長老の一族なので兄弟もそれぞれ10人はいます。叔父や叔母、いとこを含めると100人ほどにはなるでしょう。その100人はシュレンジュさんたちと同じ確率で特技やスキルを手に入れるので、シンリアス防衛の戦力はお釣りがくることになります。」

たしかにそうだな。戦力は飛躍的に上がりそうだ。その夜はリムを清里に連れて行って丸三日一緒に過ごした。喜んでくれたのでよかった。プリンを大量にコンビニに買いに行ったが。


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