オークの王
それから1週間、俺はエレベータガールじゃない、エレベータボーイだった。毎日順番にレベル上げのために60階層に大量の人がくる。60階層の広場は六方向に通路があるので、その二つを使って常時レベル上げが行われている。サフィアスは一日16時間、二つの通路の後ろの広場から、メディーサの接近を伝える。そうするとレベル上げパテは広場内に退避する。そうしてメディーサを避けてレベル上げを進めていた。レベルが60になると30階層に帰って行くが俺がいないとゲートが使えない。シュレンニトルが60階層に俺専用の小屋を建ててくれた。二時間に一回はレベル上げメンバーが出入りするので、俺がゲートを開けないといけない。めんどくさいが戦力の増強は必須だからがまんだな。俺の場合下北沢に戻って休息するという手段があるので、向こうのメンバーから見たらずっとエレベータボーイをしているように見えるが、実はそれほどでもない。エリーンはそんなこと知らないので、心配して、様子を見に来てくれた。
「ショウさん、大丈夫ですか?他のメンバーは順に休憩してますよ。ショウさんも休んでください。」
「ああ、エリーン、気にかけてくれてありがとう。でも元気だから大丈夫だ。」
「無理して体壊したら困りますよ。」
「元気なのを証明しよう。」
俺はエリーンを小屋に引っ張り込んだ。
60階層だと4時間ほどでレベルが60に到達する、一回で10人、2パテで一日4組なので1週間で550人以上がレベル60になった。家族以外は確率は高くないが60人ほどが新たなスキルや特技を手に入れた。船長も3人手に入れた。非戦闘系の家族は漏れなく特技を手に入れた。
スティリアスのところの獣人2人とモウルのところの獣人1人が船長になったので、スティリアスのところにその話でいったところ、キャリアスが館を訪ねてきた。
「キャリアス船長、船のことでは手間をかけます。」
「ショウ様、とりあえず10隻はこちらに持ってきました。もう一度取りに行きます。今日は別件で参りました。」
「それはありがとうございます。別件とはなんでしょうか?」
扉を開けてコントルホーンが入ってきた。
「コントルホーン殿が折り入ってお話をしたいとのことです。」
「これは、コントルホーン殿、たくさん移民していただきありがとうございます。今日はどうされました。」
「ショウ様、またカソーピアを撃破されたとのこと、おめでとうございます。実はお願いがあって参上しました。」
コントルホーンは緊張している。なんだろう。
「まあ、お座りください。」
「お茶を準備させますから。」
スティリアスは誰かを呼びに行こうとしたが、
「スティリアス王にも聞いていただきたいのですが。」
俺たちは会議室に4人で席についた。
「シンリアスは大きく五つの地区に分かれて生活しております。先日カソーピアをショウ様がまた撃破したことを聞いて、五つの地区の長老が密かに集まりました。そこで5人の長老の総意を受けてこちらに参りました。」
コントルホーンはそこまで言って一息つき、俺を見つめた。怖いな。
「ぜひ、ショウ様に我々の王となっていただきたいのです。」
そういうと、コントルホーンは席を立って、床に土下座した。
え、えっ!!!
「えーと、まずは頭を上げて下さい。」
キャリアスがコントルホーンの横で慌てている。知らんかったのね。
俺はコントルホーンの手を取って椅子に座らせた。
「畑の民の国がどうして俺なんかを王に必要とされるのですか?」
「私はモウル領のその公平で効率的な運営を父に報告しました。そして今回の戦いでまたもカソーピアの僧正を撃破され力を示されました。すぐにとは申しませんが、シンリアスの長老たちはそのような指導者を求めております。時が来たらで結構ですので、我が島を導いていただきたく、お願いいたします。」
「シンリアスはどれほどの民がいるのですか?」
「確かなことは分かりませんが100万人ほどでしょうか。」
俺とスティリアスは顔を見合わせた。
「それは大人数ですね。とても私などでは務まりません。」
「今までシンリアスでは農作物を作ることだけをしてきましたが、それだけでは良い国は造れないことを実感しました。強力なリーダーが必要なのです。もちろん長老たちは全力でご指示を実行することを約束致します。それに直ぐにカソーピアから解放されたい、ということでもありません。ショウ様に余裕ができた時で結構ですので、お考えいただきたのです。」
これは結構真剣だな。無下にはできない。
「趣旨は理解しました。すぐにはお返事できませんが、またシンリアスを訪問させていただき長老方とお話させていただけますか?」
「そうですか!それだけでも長老たちは喜ぶと思います。ありがとうございます。お待ちしております。」
「今日は遅いのでこちらの館でゆっくりお休みください。」
スティリアスがコントルホーンに優しく声をかけた。
「驚きました。」
コントルホーンの部屋の準備を指示して戻って来たスティリアスがため息をついた。
「そうだな、俺もびっくりしたよ。」
「すいません。事前に聞いておくべきでした。」
「いや、キャリアス船長の対応はそれでよかったと思います。それより、どう思いますか?」
「私がシンリアスの長老だったら同じことを考えるかもしれません。ショウ様を近くで見ておりますから。しかしこの状況でそこまで面倒をみるのは至難の業ですな。」
「でも、その困難を何とかするのがショウ様ですから。」
スティリアスがキャッツアイで俺を見つめる。かぶりつきたくなるぞ。
「みんなで相談しよう。」
その日はスティリアスとじっくり相談したことにしておこう。
翌朝コンペペに飛んだ。コンペペはもう夕方だった。ロンドビーは事務所にいた。
「ロンドビー船長よろしいか?」
ドアを開けて尋ねた。
「これはショウ様、どうぞお入りください。コーヒーと言いたいところですが、酒場に直行しましょうか?」
「それも良いですね。」
俺たちはいつもの高級酒場に向かった。いつもの席にスチャイがいる。
「ショウ様、ようこそ。聞きましたぞ、カソーピアをまた撃破したそうですな。さすがです。」
「ありがとうございます。まだ決着がついたわけではありませんが。」
「そうですか?個室に移りませんか。」
スチャイは俺たちを個室に誘った。
「ショウ様、実は今まで取引の中心がスチャイ殿でしたので、例の件をスチャイ殿に相談しました。」
「そうですか、スチャイ殿に相談されたということは前向きに考えていただけるということでしょうか?」
「はい、信頼できる船長4人と共にお世話になろうと思います。」
「おお、それは吉報です。よく決断いただきました。ありがとうございます。」
俺はロンドビー船長の手を握った。
「船長なんて連中はわくわくすることに参加したいですからな。ショウ様の快進撃を近くでみたいと思います。」
「快進撃ばかりではないと思いますが。」
「それもまた、面白いです。」
俺たちは大笑いした。
「スチャイ殿にも引き続きよろしくお願いいたします。これからも色んなものを調達する必要がありますので。」
「ロンドビー船長は盟友ですから、引き続き調達はお任せください。」
「ジェローリアの復興もこれからですので、大いに頼りにしています。」
「それは大きな商売ですな。」
三人でまたばか話をして多いに盛り上がった。




