35隻の戦利品
サイクスの率いてきたドワーフやノームはカソーピアの鎧や盾の回収に数日留まるようだ。
俺はリム、ロル、テクを連れて荘園に飛んだ。小さいから袋に入れるのも簡単だ。彼らからには不評だが。
「ポポゼウル殿、なんとか被害なく橙の僧正を倒しました。」
「おお、それはおめでとうございます。さすがです。」
「サフィアスも活躍してくれました。」
「それはショウ様の指示が良かったからですな。」
「いえ、そんなことはありません。しっかりやってくれています。」
「それなら良いのですが、ところで、こちらでは少し60階層のゲートについて分かってきました。」
「おお、それは凄いですね。」
「ゲートの通過条件は厳しいようです。ゲートを開けたショウ様がいないと通行できないようです。」
「それは不便ですね。」
「まあ、それほどレアだということでしょう。それと第二の扉についても読み解きました、少し推測も入りますが。」
「伺いましょう。」
「条件を満たす15人以下のパテで挑戦できる。そのパテを二つ揃えて両方で踏破する必要があります。条件というのはやはり、光魔法を使えるものと、闇魔法を使えるものを揃えるということだと推察します。試練の迷宮は1層だけで、今まで出てきた魔物がすべて出る可能性があるようです。そして最後にボスを倒さなければダメなようです。」
「それはなかなか厳しいですね。今はサフィアスの予測が大きく貢献してますから、サフィアスがいない方はきつい。」
「私も同感です。」
フォンティオが相槌を打つ。
「全体としてはまだ余裕があるので、戦力をサフィアスがいない方に集めるのが良いかもしれません。」
フォンティオの言う通りかもしれないが、不安だ。
「もう少し準備が必要ですね。」
「よろしければ、60階層に設備を整えるのをお手伝い致します。」
ポポゼウルが提案してくれる。ありがたい。
「そうですか、ありがとうござます。60階層の広場が安全であることを確認してからお願いします。」
引き続き支援してくれるようだ。そこは甘えよう。ポポゼウルが望んだので、その後60階層のゲートに案内した。
「このようなところは見たこともありません。長生きしてきた甲斐があります。」
60階層の広場に立ったポポゼウルは周囲を見回し驚きの声を上げた。
「おじい様、魔物が来ないの。」
サフィアスの声に反応して、ポポゼウルが6本ある道の一つに近づいた。まもなくしてゴーレムが道の奥に現れた。しかし広場の1メートルほど前で反転して道を戻っていく。
「ほ、ほんとうにそのようですな。」
「お父様、この階層の魔物は全て冒険者のパテを感じて追いかけてきますが、この広場にいるとその気配も感じさせないようです。」
サイクスが説明する。試しにサイクスが道に入ると、幾つかの魔物がちかづいてくるが、広場に戻った途端に、その行動が変化した。サフィアスにその状況を説明されて、ポポゼウルは呆然と言う。。
「安全地帯は初めて見ました。凄いことです。」
その後、ポポゼウルはゲートのそばにある説明のプレートに近づいた。
「ショウ様、この第二の扉を開く動作をしてもらえますか。」
「えっ、そんなことしたらまずいのでは?」
「今までの研究ではすぐ迷宮に飛び込むということにはなりますまい。」
ポポゼウルは自信ありげに言う。本当か?
「わ、わかりました。そうおっしゃるなら。」
俺は第二の扉を開ける動作をした、そうすると新たな説明が浮かび上がった。
{深淵に向かう扉は光と闇によって開かれる。武を試す道と知を試す道の二つを制覇する者が扉を開くことができる。試みるか?}
ポポゼウルが文字を読み解く。さすがだ。
俺がいいえ、というと、説明は消えた。
「最後のヒントですな。」
「確かにそのようです。長老のおっしゃる通りでしたね。」
「ここで、はいと言うと第二の扉の迷宮が開くのでしょう。」
「もう少し装備を準備して進んでいきます。」
「そうですな、ショウ様の一族であれば必ず突破されることと思います。」
ポポゼウルは1時間ほど広場をじっくり見て帰っていった。俺が連れて行かないとゲートがつかえないので面倒だ。ポポゼウルは感謝の言葉を残してトロンビアに帰っていった。
俺はコンポロに飛んだ。続き部屋のドアを開けるとスティリアスがいる。
「ショウ様、向こうはいかがでしたか?」
「100隻の船は戦わずに帰っていったよ。橙の僧正は倒した。こちらに犠牲者はいない。」
「まあ、それは何よりです。」
スティリアスはすこし涙ぐむ。優しい奴だ。
「警戒は解いても良いと、みんなに連絡してくれ。それと船長たちを呼んでくれないか。」
「はい、直ぐに呼びます。」
スティリアスが主だった者を集めて、戦いに勝って,橙の僧正を倒したことを伝えると、一同から歓声があがった。西の海上に避難していた船も狼煙を見て、順に戻ってきた。
船長たちも館に集まった。
「ショウ様、大勝利とのこと、お喜び致します。」
キャリアス達が全員で喜んでいる。
「今回も家族が助け合ってなんとか勝ちました。気は抜けませんが。ところで、今回の戦でカソーピアの船が35隻ほど無傷で手に入りました。」
「35隻ですか!」
船長たちが声を上げた。
「それで、すいませんがこっちで引き取ってもらいたいのですか。」
「コンポロで使って良いということでしょうか?」
「はい、モウルのところには船長だけでなく、船員もいないので。」
「それは誠にありがたい話ですが、我々のところにも船長の特技を持つ者はおおくないので、それほどの数を運用できますでしょうか。」
「船は船長特技がないとダメなんですか。」
「いや、経験豊富なものならば、船長職はできますが、昔から5隻の船団に一人は船長特技がいると言われています。現時点では船長特技を持つのは私を含めて6人です。」
「船員の募集はむずかしいのですか?」
「こちらは昔から船乗りが多い国ですから、乗りたいものはたくさんいます。」
「それなら、とりあえず20隻ほど船を引き取ってもらい、順次船員を育成してください。船長特技についても、増やせるかもしれません。」
「どういうことでしょう。」
俺は60階層のゲートを解放したことを伝えた。船長たちは安全地帯のある広場に驚いた。
「そ、それなら確かに多くのもののスキルや特技を解放できるかもしれません。信じられません。」
キャリアスの言葉が震えている。
翌日、船員を満載した船4隻が人魚に護衛されながら、モウル領に向かった。




