モウル領奇襲4
翌日の深夜、ジェイサーマスに率いられて30人の人魚が到着した。
「みんな、遠いところ、すまないな。まずは休憩してくれ。」
「海の民はこれくらいなんともありません。それより、あと6時間ほどで船団が近づくでしょう。」
「そうか、まずは干し魚焼いてるから、食べてくれ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
それは食べるんだな。人魚たちが干し魚を平らげてる横で作戦の説明をした。まず、沖合2キロでおおだこやカニでデモンストレーションをして、それでも進んでくるようだったら一度魔物を引っこめて、接岸のタイミングでおおだこやカニに船を襲わせることにした。そうすることで向こうの魔法職の場所をあぶりだして、タンディに狙撃させる作戦だ。
夜が明ける頃、100隻の船団が沖合にあらわれた。俺やリムたち橙の僧正を仕留めたチームはジェイパス達3人の人魚に乗って沖合から状況を見ることにした。
「羽に海水がかかると飛びにくいのじゃ。」
「俺の頭の上に止まってろ。」
「今日の方が波が荒い。もう気分悪い。」
サフィアスが既に根を上げている。みんなめんどくさいな。
そんななか、船は10隻が前に出てきた。その船の前におおだこやカニが現れる。船の上は騒ぎになった。船がどう動くか俺たちはじっと見つめた。しばらくして船は舳先をまわして沖合に向かった。そして船団は北に向かって去っていった。
陸から船団の動きを見ていた一同も歓声をあげている。危機は去ったようだ。5人の人魚が念のため船団を追跡した。俺たちは陸に戻ってモウル達と抱き合った。
その夜は戦士たちが領地を守り切った宴でみんなが騒いだ。人魚たちは港で干し魚を焼いて楽しんでいる。モウルの館には主だったものが集まりささやかに食事をした。
「今回は守り切りましたが、こんなことが続くのでしょうか?」
シュレンジュが心配そうにする。
「船も船団で来たら早めに分かるが、今回のように分散して、こっちの近くで集結されると事前にはわからんのじゃ。」
ジェイパスが干し魚を食べながら言う。
「一日前に分かっても、山の民たち戦士を送り込むには間に合わないな。リムたち主力の魔法職をゲートで連れて行くのが精一杯だ。」
「それなら、戦闘員は分散しておいたほうが良いですね。今回また多くの鎧が戦利品で手に入ったので、その処理にこちらに鍛冶場を設けてはどうでしょうか?」
シュレンジュはいつも賢い。
「それは良い考えだな。戻ったらビジェイと相談しよう。」
「私も良いと思います。」
ペルカも目をきらきらして賛成するが、お前は考え無しだから信用できん。
「最初に来た船50隻も35隻は無傷なので、使わないともったいないですね。」
サイクスが船の話をする。
「そうですね。コンポロでキャリアス船長に言って、引き取りにきてもらいます。」
「でも、こちらでできることはそれくらいですね。」
「南端の砦でもこちらの港でも、戦う場所をこちらで設定できているので楽に戦えましたが、攻め込むとなると、向こうの準備してるところで戦うことになるので、厳しくなるでしょうね。」
一同が頷く。
「そうなると当面はこちらの力を溜めることですか。」
「残念ですが、そうですね。少なくともリショウムの60階層にはゲートで移動できるので、できるだけ多くをレベル60にあげましょう。それと鎧も作り直しだと橙魔石もたくさんいるので、40階層下での採取も回数を増やしましょう。」
俺の方針はみんなの賛成を得た。
俺は迷宮で無双したくてこの世界に来たんだが、いつの間にか雑魚キャラが定着してる上に、いまは信長の野望みたいなシュミレーションゲームをやらされてる感じになってる、なんでやろ。その上、どっちかというと、強大な徳川家に抵抗する弱小真田的なポジションや、失敗すると家族の命が危ないという崖っぷちの状況や。やめてほしい。だが、リムやスティリアスやモウルの涙を見ると止める訳にはいかない。カソーピアめ、ぶっ殺してやる。




