アフリカの顔役
その後俺は下北沢に戻った。銃の弾丸を手に入れるのが俺にできることだ。こっちで時間を進ませないと、弾丸が手に入らない。もどかしいが仕方がない。そんな時にアリソンから連絡が入った。アフリカの宝石について交渉相手と連絡がついたらしい。打ち合わせの場所はなんとシドニーだ。俺は早速航空券を取った。三日後にシドニーに飛んだ。空港には早朝に着いたが、中国からの便とほぼ同時到着なので、入国審査が混んでいる。入国審査と関税を通り入国すると、アリソンが待っていた。
「人目につかないようにこの国でセットしました。すいません。」
「いや、オーストラリアは初めてなので楽しみです。アリソンさんこそ、直行便はないんでしょう?」
「そうですね、アルゼンチン経由で来ました。打ち合わせは明日なので、今日はゆっくりしてください。」
グローバルや。その日は日本でも有名なパンケーキ屋に行ったが、高くて驚いた。ホテルの部屋から下北沢に戻り、宝石をいくつか持ってきた。向こうの時間は進められないので、ゲートのカウント数が少し心配だ。シドニーはきれいな街だが、なんでも高い。
翌日、ランチで先方とオペラハウスが見えるレストランで会う予定だ。
「交渉相手は、南アフリカで裏社会の顔役です。昔何度か仕事をしましたが、まあ、そこそこ信頼できます。」
そこそこなのね、大丈夫だろうか。
「初めまして、ダニエル・ゴービンドと言います。」
「お会いできて光栄です。ショウと言います。」
身長は俺と同じくらいのアフリカ系だ。名前から考えるとインド系かな。
「アリソンとは何度も仕事をしています。色々助けられました。」
「私も、最近アリソンと仕事をしています。早速ですがこれを見て下さい。」
俺は個室のドアが閉まっているのを確認して、テーブルに原石を置いた。
「これは、素晴らしいですね。」
「このような石を毎月提供できます。買い取っていただければと思います。」
「このレベルの石を毎月ですか?それは素晴らしいですが、、、」
「すぐに信用していただくのは、むずかしいのは分かります。しかしアリソンとの仕事もそれをベースでやってます。」
「なるほど。」
アリソンが頷くのを見て、ゴービンドは心が動いたようだ。
「取り分は、私が60%、ゴービンドさんが35%、アリソンが5%でどうでしょう。」
「それは、魅力的ですな。支払いはどうしましょう。」
「アメリカドルと暗号資産を半分ずつでお願いしたい。」
「アリソンの分はいつもの通りで良い?」
「そうですね、ケイマン島の口座に。」
さすが元CIA、色々口座があるんだ。
「現金なら、場所はドバイが良いでしょう。」
「ドバイですか?」
「あそこは色々自由ですから、都合が良いと思います。ふた月に一度、ドバイにて直接取引で良いでしょうか?」
アリソンが頷くのを見て、俺も同意した。
「できれば前月にアリソンから品物の写真を送ってもらえれば支払いの準備しておきます。」
俺たちはその条件で合意した。今回持ってきた原石はゴービンドに渡して、その支払いはアリソンの口座に全額入れることになった。
「ショウさん、今回の代金はどうやってお渡ししたらいいですか?」
ゴービンドが帰った後に、アリソンが聞いた。
「今回のは紹介料と、ドバイで部屋を借りるのに使って下さい。」
「多すぎる気がしますが、お預かりしておきます。」
「それと、ケイマンとかの口座について教えてくれますか?」
色々裏の世界は深いな。
日本に戻って三日ほどすると、カークから電話があった。エンドツーエンドで暗号化されている。三万発ほど調達できたので、とりあえず取りにこい、ということだ。大きなスーツケース10個らしい。俺はサンフランシスコのマンションの防犯カメラに気を使いながら部屋に10個のスーツケースを運び込んだ。そこから直接モウル領に弾薬を運んだ。向こうでの時間経過は1時間ほどだ。時間が大事な時は頭を切り替えるのがむずかしい。
山小屋に戻って、メイガロマトンにも弾丸を渡した。とりあえず俺のできることはすべてやったかな。
「ショウさん、念のため南端の砦にも空の民10人と山の民30人を送りました。」
エリーンが報告しに来た。
「ありがとう、一応の準備はできたかな。」
「そうですね。レベル60の魔法勢はお嬢様以外コンポロ島に行ってもらうことになりました。」
何か頭の隅にひっかかったが、それが何かわからない。
翌日の朝、サイクスに率いられた100人ほどがみんなに見送られてコンポロ島に向かった。カソーピア襲来まであと二日だ。
山小屋に戻るとリムがいた。
「準備万端じゃな。」
「そう思いたいんだが、」
「どうした、何か気になるのか?」
「よくわからないが、なぜか落ち着かない。」
「ならば、モウルのところに行ってみるのがよかろう。」
「どうしてそう思う?」
「ペイニャとコンポロは近いぞ、必ずしもコンポロだけが目標とは決めつけないのがよかろう。」
リムはいつもぼーっとしてるようだが、この件についてはその通りかもしれない。
「リム、行くぞ。」
俺が服を脱ぎだしたので、リムが騒ぐが、構わず袋に押し込んだ。また頭の上に俺のパンツが投げ込まれたので怒っている。モウルの館に着いたが特に騒ぎは無いようだ。
「もっと、丁寧に扱うのじゃ!」
リムが騒ぐのを無視して、服を着て、隣のモウルの部屋に行った。
「あら、主様。お姫様まで、どうしました。」
「こっちは問題ないか?」
「はい、海と迷宮は監視していますが、問題ありません。」
「タンディは狙撃場所を決めたか。」
「はい、港を見渡せる山にもう行っています。」
「俺たちも行ってみよう。」
一時間ほどかけて、俺たちは海に近い山の上に着いた。こっちはもう深夜なので足元が危ない。




