カソーピアの船団
山小屋に戻ると夕方だった。60階層突破のささやかな宴が準備されていたので俺も参加した。みんなが笑顔だ。カソーピアの脅威はそのままだが、つかの間の穏やかな時間を過ごした。夜は穏やかではなかったが。
翌朝、なんとポポゼウルがフォンティオと共にやってきた。早いな!
「これはポポゼウル殿、ようこそおいでになりました。」
「ショウ様、上位迷宮60階層制覇おめでとうございます。昨日フォンティオが60階層の説明の写しを持って帰りましたが、その件で参りました。」
「それは、ありがとうございます。」
「空の民の文書解読とわが部族に伝わる話をすり合わせて確認したいことがあります。そちらに行ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ、お進みください。」
そんな会話をしていると、鍛冶場から赤い狼煙が上がっているとの報告が来た。みんなに緊張が走る。
「フォイヘス頼む!」
リム、サイクス、俺はフォイヘスに飛び乗り鍛冶場に向かった。鍛冶場にはジェイパスがいた。
「カソーピアが動いた。100隻ほどの船がコンポロ島に向かっている。あと4日ほどで到着する。わらわの部下もコンポロ島に向かわせておる。」
「迷宮から戻って直ぐなのにすまないな。こちらからも援軍を出すよ。」
「私がコンポロに行きましょうか?」
「お義母さん、すいませんが、よろしくお願いします。俺が飛んで、迷宮を開けさせますので、二日後の昼にメンバーを揃えてゲートに来てください。」
「分かりました。こちらの戦力の半分ほどで良いですか?」
「はい、それでお願いします。」
「ジェイローリアを連絡役に残していくので、わらわは海に戻るが良いか?」
「そうだな、緊急の連絡があったら、俺がそちらに飛ぶよ。ジェイサーマスはおおだこ持ってるんだったら、コンポロ島に送って欲しい。」
「了解した。」
「リム、空の民も20人くらい送る段取りをしてくれ。」
「わかった、わらわも行くのじゃ。」
「リムは本拠を守ってくれ。」
リムはふくれているが、無視した。
「お義母さん、ポポゼウルさんにも緊急事態なので、対応できなくてすいませんと、謝っておいてください。」
「はい、父も援軍を出すと思います。」
「感謝します。」
俺はコンポロに飛んだ。向こうはもう夜だった。俺はスティリアスの隣の部屋から連結ドアを開けてスティリアスの部屋に入った。俺の様子を見て、スティリアスが目を見開く。
「ショウ様、どうされました?」
声が震えている。
「カソーピアが船団をこっちに向けている。」
スティリアスは声もなく立ち尽くした。俺はそんなスティリアスを強く抱きしめた。
「大丈夫だ、この島は家族全員で守る。シウロデール、ペンディウル、船長たち、長老たちを直ぐに招集してくれ。」
「はい、ただちに。」
「2時間後にこの館の大会議室に集めてくれ。俺はモウルのとこに行ってくる。2時間後までには戻る。」
スティリアスが部屋の外に駆けだした。俄かに館は騒がしくなった。俺はモウル領に飛んだ。ペイニャはまだ夕方だ。
「主様?」
モウルも俺の様子にすぐ気づいた。
「カソーピアが動いた。シュレンジュ達も呼んでくれ。」
モウルはモードが変わって素早く行動に移った。
少しすると、大会議室にモウルとシュレンジュ、獣人とオークのリーダーが集まった。
「みんな、カソーピアが100隻の船をコンポロ島に向わせた。4日後には到着するようだ。こちらも念のため警戒態勢を取って欲しい。」
「援軍は出さなくて良いですか?」
「シュレンジュ、それは荘園から出すから大丈夫だ。一応迷宮と海の警戒を厳重にしてほしい。」
「私も行きたい。」
「だめだ、お前はここの領主だろ。民を守るんだ。」
モウルは涙目になっているが、俺が頭を撫ぜると少し落ち着いたようだ。
「昨日持ってきた銃の弾丸は残っているか?」
「半分以上使った。」
「そうか、数日のうちには補充を持ってくるから、特にタンディの銃を使える場所を考えといてくれ。敵が来るなら海からだから、海岸を狙撃できる場所だ。万が一に備えてな。」
「わかりました。」
俺は警戒態勢を話し合う面々を残して、コンポロ島に戻った。
スティリアスの館には煌々と松明が灯されている。窓から見ると人が続々と集まってきている。大会議室にいくと既に10人以上集まっており、更に人が入ってきている。
スティリアスがすわっている席の隣に俺は座った。
「大丈夫だ。みんなを信じるんだ。」
「ショウ様、また民が死ぬのかと思うと。」
「しっかりしろ、王が気弱だと士気が落ちる。後で聞いてやるから、ここは堪えるんだ。」
「はい、分かりました。」
しばらくして30人ほどが集まった。
「みんな、夜中にすまない。海の民からカソーピアの船団がこちらに向かっているとの報告があった。4日後にはこちらに到着するだろう。」
座がざわめいた。
「その規模はいかほどでしょうか?」
長老の一人が訊いた。
「100隻ほどのようだ。」
「兵力は5000ほどですな。」
「おそらくインペクトとセウィートの港は無視してコンポロに戦力を集中してくるだろう。こちらは船は失いたくないので、船は西の海に避難して欲しい。」
「お言葉ですが、船でも戦い、上陸を阻止したいです。」
船長のひとりが異議を唱える。
「気持ちは嬉しいが、我々には僧正の使う神器に並ぶ魔法使いが今は何人もいる。岸壁から長距離戦でも火力では負けない。それに海の民も多く参戦してくれる。」
空の民20と海の民30が待ち受ける海岸に上陸するのは簡単ではない。
「二日後の深夜にゲートから援軍が到着する。そのタイミングでスティリアスにゲートを開けてもらいたい。念のために戦力を揃えて行ってくれ。」
「わかりました。そうします。」
「コンポロの海岸線はある程度防壁はあるが、それも後3日で点検と強化をしてほしい。」
「早速、手配します。」
ペンディウルがしっかりと答えた。その後1時間ほど議論があったが、全員がやるべきことをしっかり認識した。
「みなさん、祖国を守るために全員で力を合わせましょう。私も先頭に立って戦います。」
スティリアスの言葉に全員が雄たけびを上げた。惚れ直したぞ、スティリアス。
「よくがんばったな。」
部屋に戻ったスティリアスを抱きしめた。
「あれでよかったでしょうか?」
「素晴らしかったぞ。でも先頭で戦うのはダメだ。お前が死んだらどうなる?」
「黙って民が死ぬのを見ているのですか?」
「人には役割があるからな。つらいだろうが我慢するんだ。」
スティリアスはキャッツアイで俺を見つめる。食べてしまいたい。




