60階層1
51階層に降りるとドワーフがすこし前に出て、その先30メートルに人魚が使役するトラとクワガタが進んだ。
「青、来ます。」
サフィアスの声に全員が緊張し、前を凝視した。ブーンという嫌な音が聞こえてくる。蜂だ。目を凝らすと3匹の蜂が近づいて来る。トラはジャンプして蜂の攻撃を避けながら反撃する。クワガタは蜂の攻撃を受けっぱなしだが、物理防御2000があるので、問題なさそうだ。後方からリムやロルが射程の長い魔法を撃つが、どうも魔法は効かないようだ。
このクラスになると、霧の民の図書室にもデータがないようなので、魔物のステータスや味方の状態を見ながら相手を知らないといけない。
トラの攻撃は入るようだ。向こうはHP3000だが、虎の攻撃はそのまま900ダメが入ってる。蜂の攻撃は200ダメくらいだ。これなら楽勝だな。そう思っていると、虎が爆砕した。えっ!どうして。
「ショウさん、蜂の攻撃はそんなに強いんですか?」
「い、いや、ダメは確か200ほどでしたが。」
サイクスの質問にあたふたして答えたが、その間にも蜂3体のうち2体はドワーフたちに近づいて来た。
「カニ2体出して!」
「わかった!」
ジェイローリとジェイサーマスが一体ずつ、蟹を出して、ドワーフの前に送る。蟹は腕を振って蜂と渡り合うが、やはり2撃目を受けると爆砕した。
「アナフィラキシーだ。2回目のダメージが即死攻撃だ!」
俺が叫ぶと、みんなが凍りついた。
「ペルカ、スリニー、アカシュ、前に。人魚の涙確認してからだぞ!」
物理防御を持つ3人が前に出て、それ以外のドワーフは下がる。空から来るので、なかなかドワーフたちの攻撃は当たらなかったが、物理防御が切れる5分前になんとか、蜂2匹を撃破した。前の方では蜂が懲りずにクワガタを攻撃しているが物理防御2000のおかげでクワガタは無傷だ。
「弓持ち、向こうを狙ってくれ。」
メイガロマトンとタンディがクワガタ上空の蜂を狙い、数分で仕留めた。
「これは、どういう攻撃なんでしょう?」
エリーンが聞いてくる。
「俺の知ってる蜂の中にはアナフィラキシーという症状を起こすのがいる。最初に刺されたときは直ぐに治るが、2回目に刺されると重症になるんだ。それと同じで2回目の攻撃が即死攻撃みたいだな。」
「そんな蜂がいるんですか、ショウさんは物知りですね。しかし魔法が効かないのがやっかいです。」
「そうだな、クワガタだと時間稼ぎできるから、蜂が来たら出してくれるか?ジェイパス」
「わらわとジェイサーマスが持ってるから、蜂が来たら出そう。」
「しかし、即死攻撃が3体も来たら普通のパテじゃと直ぐ全滅じゃぞ。」
リムが不安そうな顔で言った。
「確かに、使役だとか、物理防御なんかがあるからなんとかなってますが、普通なら厳しいですね。普通の迷宮の51階層とは比べ物にならないくらい難しいですね。」
サイクスも同意する。
「それだけ上位迷宮の価値が高いということなんでしょうな。気が抜けませんな。」
フォンティオが表情を引き締める。
「緑、きます。」
サフィアスの声に、全員が会話をやめて、前を凝視する。カニを前面において敵を待った。
「見えないな。」
「カニの上まで来てる。」
サフィアスが言うと同時にカニが毒状態になった。
「え?」
「無数にいるのじゃ、全体魔法を撃つぞ。」
眼の良いリムが言うのとほぼ同時に、目の良いロル、メレンタス、サイクスが空中に全体魔法を放った。空中で無数の小さな火の玉が輝いた。
「虫が無数に飛んでました。まだ数匹残ってます!」」
一番暗いところで目が利くスティリアスが叫ぶ。声に反応して加速持ちが切ろうとするが切れない。物理耐性がありそうだ。
「みなさん、少し両側に寄って下さい。」
ロルが言いながら、弱い光魔法を放つ。光魔法はビーム状なので、我々は避けやすい。ロルがビームを操って、4匹の生き残りを撃破した。
「カニは毒状態でステータスが下がってるぞ。毒はそれほど強くなさそうだ。」
「衰弱攻撃ですね。一体ならそれほど危険はないですが、最初に取りこぼすと面倒ですね。」
「最初の全体魔法の位置を決めておこうか?わらわは右のほうに撃つぞ。」
「私は左の方に撃ちます。ロル様は、撃ち漏らしたのを狙っていただけますか。」
「メレンタスさん、わかりました、そうします。」
魔法使い達が相談しておそらく蚊らしき虫の集団への対策を決めた。チームワーク良いな。
「黄色きます。」
サフィアスの警告にみんなが前を凝視する。人魚たちが使役するカニが何かと戦っているが見えない。
「何が来てるんだ?」
「スライムみたいですね。」
スティリアスが答えるが俺には見えない。蟹は300ずつHPを削られ続けられ数分で爆砕した。
「虹色のスライムです。」
リムやロルが魔法攻撃をするがダメが入らない。スライムからは火魔法や雷魔法が来て、前衛がすこしダメをうけた。スライムの色が赤になっている。今度はペルカが物理防御をかけて切り付けるが、これもダメが入らない。スライムはメタルスライムのような触手を出してペルカを攻撃するが、物理防御があるのでダメは受けない。色が青に変わっている。
「攻撃に応じて攻撃、防御特性を切り替えているようです。」
サイクスが相手を冷静に分析している。
「それなら、魔法と物理で同時に攻撃してみよう。」
闇魔法や火魔法は少し分散するので味方に被弾する危険性がある。ロルが光魔法で攻撃して、同時に物理防御持ちのドワーフたちが攻撃した。スライムは赤と青に色を変えながら反撃するが、徐々にダメが入り、数分後には爆砕した。
「あまり、脅威ではないが、他の魔物と一緒だと、めんどくさいのう。」
リムが感想を言ったが、ジェイパスはこの魔物に興味を持ったようだ。
「自動的に攻撃に応じて防御特性を変えるのなら、使役すると役にたちそうじゃ。」
「そうだな、できたら少し捕獲しておいて。」
「3種出ましたが、このまま進みますか?」
エリーンが聞いてきたが、ここは慎重に行くべきだ。
「もしかすると、5種かも知れないから、もう少しここで様子を見よう。」
2時間ほど、51階層の入り口で粘ったが、4種目の魔物は現われなかった。
「それじゃ、そろそろ前に進もうか。」
俺の言葉にサフィアスが反応した。
「ちょっと気になることある。」
「どうしたんだ。」
「今まで、魔物の動きはバラバラだった。蜂と蚊の大群はこっちに向かってくる。」
「そうなんだな、匂いか何かに反応してるかもしれない。。動きは早いのか?」
「それほど早くはない。でも確実に囲まれる。」
「蜂に囲まれるとまずいな。どうするかな。」
サフィアスと一緒にフォイヘスに乗って、マップ作りをしているメレンタスが提案した。
「多くの蜂に囲まれると対応が難しいので、蜂2組くらいを前に集めて順番に撃破してはどうでしょうか?」
「10分くらいかかるけど、更に囲まれないか?」
「戦う場所を選べば大丈夫だと思います。」
「みんな、それでいいか?」
一同が頷いたので、その作戦で進むことになった。
しかし、サフィアスの道選びは難しくなった。いままではスルー出来ていた魔物がジリジリと近づいてきて、振り切れない。敵と戦う回数が増えてきた。そんな中でもサフィアスとメレンタスは前にのみ蜂を迎え撃つ形を崩さずに進んでいく。
「なんとかなりそうだな。」
俺の言葉にメイガロマトンが反応する。
「それが、矢の消耗が多くて、帰りまで持ちそうにありません。」
「私も同じです。」
タンディが頷いた。
「わかった、俺も試してみるよ。」
「ショウ、おぬし何かできるのか?今日はボウガンというのも持ってきておらんじゃろう。」
リムが怪訝な顔をする。俺は戦力外に見られてる、悲しい。




