アリソン・ニコル
下北沢で少し冷静になって考えようとしたが大した知恵は出てこない。二日くらいベットでだらけていると、リサから連絡がきた。候補者が見つかったようだ。その3日後にサンフランシスコで会うことにした。前回と同じレストランだ。リサはドイツ系でがっしりして、背も俺より高いが、彼女が連れてきた、アリソン・ニコルは俺より背も低く、とてもCIAのOGには見えない。茶髪で灰色の目の上品な婦人だ。
「アリソン・ニコルです。はじめましたて。」
「ショウです。お目にかかれてうれしいです。」
「ショウさん、アリソンはMBAでの同級生です。卒業後はCIAに入り、若いころはアフリカ南部担当で色々なつてがあります。お役に立てるかと思います。」
「宝石の原石を扱う仕事だと聞いています。よろしければ詳しく教えて下さい。」
俺はどんな商売をしたいか彼女に説明し、手伝ってくれることになった。
「それと、もう一つ力を借りたいのですが?」
「どのような事でしょう?」
「俺に銃の使い方を教えてくれる人を紹介して欲しいのです。」
「銃を使って何をするのですか?」
「アメリカでテロや犯罪など考えていません。あくまで自衛用です。」
アリソンは俺を見つめた。
「ショウさんの言葉を信じましょう。もう年ですが一流のプロをご紹介しましょう。」
「それは、ありがたい。」
翌日アリソンは俺をサンフランシスコ郊外のシューティングレンジに案内してくれた。
「ここは広いですね。」
「拳銃から自動小銃まで教えてますから、広い場所が必要です。」
そんな話をしていると一人の髭もじゃの大男の老人が近づいてきた。
「あの人は昔CIAの銃のコーチだったんです。」
アリソンが俺に囁く。
「よう、アリソン、元気そうで何よりだ。」
「カークさん、ご無沙汰です。忙しいところすいません。」
「いや、お前ももう引退したんだって。」
「はい、去年で引退して、別の事をしようと思いまして。こちらが新しいボスです。」
「は、初めまして、ショウと言います。」
俺は迫力のある大男にたじろいだ。
「銃の使い方を学びたいんだってな。ちょっと撃ってみろ。」
挨拶も早々にカークに銃を渡され、シューテイングレンジに連れていかれた。
俺はへっぴり腰で何発か撃ってたが、それを見ていたカークは、
「こりゃ、時間がかかるけど、やるか?」
「はい、お願いします。」
それから、毎週一日はサンフランシスコで鬼教官にしごかれた。
異世界でも3日がたち、リムたちが迷宮から戻ってきた。ロルは光魔法3,テクは闇魔法2を獲得した。
「今回もジェイパスに助けられたのじゃ。」
「気にせんでも良いぞ。わらわも干し魚で同胞に面目を施しとる。」
このうるさい二人が仲良くしてくれると助かるわ。
「ショウ、地上はどうじゃった?何かあったか?」
「いや、こっちは特になかったな。」
「それなら、これからどうするのじゃ。ずっと籠っているわけにもいくまい。」
「それはそうなんだが。」
「あの、いいでしょうか?」
ロルが声をあげた。
「どうした?」
「この前、隠れていた地下には奥の方に何冊か書物がありました。もしかしたらなにか役に立つものかもしれません。」
それはフリクリス公爵家の伝授か!ゲーマーとしては惹かれるな。
「そうなんじゃな?それは興味深い。我が公爵邸は全焼だからのう。ダメもとで回収するのじゃ。」
リムの掛け声でリショウムのゲートから、フリクリス迷宮に飛んだ。
「おお、これは。」
前回の殲滅戦でカソーピアの騎士を大量に殺したが、死体は魔物にすっかり片付けられていた。しかしそこらじゅうに防具が転がっている。溶かしたら金がとれる、お宝だ。
「後で回収部隊を送ろう。再建費用にできる。」
全員が頷いた。
「こちらも酷いな。」
テクがフリクリス公爵邸の焼け跡を見てため息をついた。
「必ずかたきは取るぞ、テク兄。」
リムが寄り添う。
「おう、当然だ。」
主力組がロルの隠れていた地下の穴を取り巻いた。リム、ロル、テクがその穴に潜った。俺が上から見ても真っ暗だが、妖精には見えるんだな。しばらくして三人は戻ってきた。手に小さな書物を何冊も抱えて。
「おお、やったな。」
全員が歓声をあげた。
「で、何が書いてるんだ?」
「それが、昔の空の民の文字で書いてあるようじゃ。ほとんど意味がわからん。」
「そうか、それは残念だな。」
「あの、よろしいですか?」
サイクスが出てきた。
「うちのは、昔から古代の言葉を研究しています。もしかしたらお役に立てるかもしれません。」
「おお、それはぜひお願いします。お義母さん。」
その後、主力は山小屋に戻り、南端砦でノームを率いていたフォンティオをフォイヘスが迎えにいった。
「おお、これは、」
10冊ほどの書物をぺらぺらとめくってフォンティオは小さく叫んだ。
「間違いなく、霧の民に伝わる書物と同じ文字です。」
「そ、それなら読めるのですか?」
「それが、長い間かけて解読は進めているのですが、まだ十分ではありません。一部は読めると思います。」
「お願いします!お義父さん。」
それからフォンティオは山小屋に籠って解読を試みた。そうして一週間ほどすると、なんとポポゼウルがゲートを通ってやってきた。
「ショウ様、お姫様、皆様、このたびは、お見舞い申し上げます。多くの同胞を亡くされ言葉もございません。」
ポポゼウルは深く頭を下げた。
「いや、ポポゼウル殿には多くの援軍を送っていただき大変感謝しております。このご恩はどこかでお返しします。」
リムがポポゼウルの手を小さい手でしっかり握った。
「いえ、私共は迷宮の真理を追うために存在しております。皆様がその希望です。先日空の民に伝わる書物が発見されたと聞いております。フォンティオが解読に取り組んでいると聞いておりますが、もう少し極めた者たちを今日は連れてきております。よろしければお使い下さい。」
ポポゼウルの後ろに3人のノームが控えて、頭を下げる。
「おお、それはありがたい!」
フォンティオと3人は別の小屋を与えられそこで解読を進めた。ポポゼウルには別の小屋を用意して数日滞在することになった。
「娘とフォンティオの喧嘩も収まったようですな。」
「はあ、フォンティオさんを覚醒したら納得してくれました。」
「しかし、空の民にそのような書物があるとは驚きました。われわれの伝承にこのようなものがあります。」
{大地が迷宮を支配し、空が秩序を守り、海に神の意思が宿る。}
「そ、それは。」
「いままで、意味が分かりませんでしたが、もしかすると空の民が秩序を守るという意味かもしれません。大地の民と海の民は他の民と交わりませんが、空の民は他の民を雇い入れています。それを通じて秩序を守っていたのかも知れませんな。」
「な、なるほど。そう言われればそうですね。」
「公爵家の人々は敢えて、古代のいい伝えをそのまま伝承していたのかも知れませんな。それが秩序だとすると、我々はその秩序を犯そうとしているのかもしれません。」
「そうですが、俺は家族をこんな目にあわせたカソーピアを許すつもりはありません。そのためには何でもします。」
「ショウ様ならそう言うと思っていました。我ら青い渓谷の民はショウ様に従います。共に進みますぞ。」
「ありがとうございます。」
「ポポゼウル殿はカソーピアの状況をどうみますか?」
「確かなことはわかりませんが、おそらく空の民の3公爵家を絶やして、操れるクリトアンを通じて空の民を支配しようとしたのでしょう。しかしながらお姫様が想定外の戦力で反撃されたので、計算が狂ったということですな。」
「俺もそうだと思います。次はどう出てくるでしょうか?」
「待ち受ける空の民を武力で攻略するには相当の犠牲を覚悟せねばなりません。私ならば、南半球の抵抗勢力の排除に向かうでしょう。しかしコンポロ迷宮は閉鎖されており、モウル殿の迷宮は一般には知られておりません。そうすると海からくるでしょうな。」
「やはりそうですか。」
その翌朝コンポロ島に飛んだ。飛び先はスティリアスの部屋の隣だが、まだ夕方なので執務中なのだろう、スティリアスは部屋に不在だ。この屋敷はもともとカソーピアの僧侶が使っていた大きな屋敷だ。2階は王の私的エリア、1階は公的エリアとして使っている。下に降りて王の執務室には護衛が立っており、俺を認めると敬礼した。
「スティリアス、援軍助かったよ。」
「いえ、お役にたてて良かったです。それに赤の僧正を倒すことができました。民も喜んでいます。」
「そうだな、スティリアスな暗殺は強力だから。ところで戻った後、異常はないか。」
「10隻の船はもうすぐジェローリアに穀物を積んで到着します。こちらを取り戻してから、ドックで修理中の船や停泊中の船を手に入れたので、後10隻使える船がいます。それを使って島の周囲を警戒していますが、今のところ問題ありません。」
「そうか、しかし準備が整えば、ここかモウル領にカソーピアが攻めてくることはあるので、引き続き警戒を頼む。」
「はい、その件で、島の長老がお話したいと言ってましたので、呼びますね。」
スティリアスと俺は長老を交えて半時間ほど話をした。
「今日はこちらに泊まって下さいますよね。」
長老が帰ると、スティリアスは俺に抱きついて来た。
「お、おう、そうだな。」
キャッツアイの魅力は怖い。
翌朝は、モウル領に飛ぶ。自分の小屋を出ると、既に多くの人が忙しそうに働いている。町は建設中で活気があるな。モウルの館に行くと、既に会議中だ。頑張ってるな。会議が終わりモウルも出てきた。
「主様、いらっしゃい。」
モウルはあいかわらずだ。
「おう、朝から頑張ってるな。」
「シュレンジュがしっかりやってくれる。私は座ってるだけ。」
「そんなことないぞ。偉いな。」
俺がモウルを抱きしめると、モウルはしっかり答える。
「明日、実家から魔法使いが何人か来る。船が2隻常駐してくれるので、そこに乗ってもらう予定。」
「そうか、海の備えはしっかりしないとな。荘園にも何人か避難してきた空の民がいるから、こっちに来てもらうようにするよ。」
「いつも、ありがとう。」
「家族だろ、当然だ。」
シュレンジュもその後やってきて、俺は色々忙しかった。すべきことを済ませて、夕方には荘園に戻った。凄く頑張ってるように見えるが、合間合間で、下北沢に戻って休息してるので、それほどでもないのが実情だ。荘園に戻ると、なんかざわついている。
「なにかあったのか?」
シュレンパウスが通りかかったので聞いた。
「フリクリスの書物からなにか分かったようです。」




