カソーピア襲来5
荘園に戻った後にポートビアンの妖精たちの話を総合すると、ここを襲ったのは橙の僧正のようだ。強力な光魔法で襲われたらしい。
「兵たちは魔法防御の鎧を付けており、また奇襲だったので対応が遅れました。まさかこんなことになるとは、お詫びの言葉もありません。」
テクに聞かれて、スフォクが奇襲を受けた時の状況を振り返る。
「迷宮から出たら屋敷にまっすぐ来たんだな。」
「はい、迷宮で騒ぐ音が聞こえて、数分後には屋敷の近くまで迫っておりました。」
「父上、母上は逃げようとされなかったのか?」
「念のため、奥の隠し部屋に移動されたのですが、」
「それでどうした。」
「敵の攻撃がその隠し部屋に向かい、、、」
「そ、そうか。」
山小屋にはリムのふたりのいとこと生き残った数人の妖精が集まっている。
「フリクリスでもロル以外では屋敷は全滅だったんじゃな。」
「あまりに手際が良すぎるな。屋敷の場所は人間たちが調べられるが、屋敷の使用人には人間は居ないんだろう。」
「はい、ポートビアンにはいません。」
「フリクリスでもいません。」
スフォクとロルが答える。
「クリトアンだけが無傷だったんじゃな。それも気になる。」
「リム、仮定の話だが、ここの三人も死んでたら、空の民はどうなるんだ。」
「後継者がいないと公爵家は継続できんじゃろうな。」
「そうなると、クリトアンがジェローリア島を支配するということになるのか。」
「そ、そんなことは考えたくないが、そうなる。」
「フリクリスもポートビアンも食料不足だったようだが、どこから調達してたんだ。」
「クリトアンからです。」
ロルと、スフォクが同時に答えた。
「そうか、クリトアンだけが荘園は無傷だったんだな。実は荘園の疫病は南半球から誰かが持ち込んだ可能性があるんだ。」
「そうなのですか!」
スフォクが叫んだ。
「一年かかって、三公爵家の力を弱めて、使用人を減らして、今回の襲撃に至ったという可能性が否定できない。もしその仮説がただしければ、はじめからクリトアンは攻撃対象じゃないということだな。」
俺の意見に、一同は黙り込む。
「スフォク殿、わらわは荘園にいたので、最近の公爵家間での付き合いは知らないのだが、何か気になることはなかったか?」
「特におかしなことはありませんでした。」
「まずは、クリトアンがどう出るか見るのが良いかもしれません。おそらくクリトアンの使者がこの荘園に来るでしょう。それまではロル様とテク様が生存されていることは隠して。」
後で聞いていた、シュレンジュが発言すると、一同が振り返った。オークの発言にみんなが驚いた。
「一同、シュレンジュは我が家族で外交の特技持ちじゃ、決して軽んじることは許さぬ。」
リム、良いぞ。頭撫でてやろう。
「どうしてここにくると分かるんじゃ。」
テクが聞く。
「もし、カソーピアと繋がっていれば、リム様が健在なことを知っているからです。もうフリクリスとポートビアンは血統が絶えたと聞いているでしょう。」
その後、数時間にわたり話が続いた。
夕方になり山小屋の外にでると、鍛冶場に向かう道を牛車が続々と進んでいる。ちょうどスティリアスのいとこのモシューリアが通りかかったので聞いた。
「これですか、戦のあとビジェイさんが調べると敵の鎧はほぼ+5だったので、防具は回収して溶かして金を取り出そうということになりました。畑の民が死体から防具を脱がせ、我々が輸送しています。」
そうか、一体から金300グラム、2000体で600キロか、これは凄い。カソーピアの財力はおそろしいな。
「それはすばらしい。参加した山の民、畑の民、谷の民にひとり1万コルの褒美を与える。」
「それはありがとうございます。みんな喜びます。」
600億円か、町の再建に使えるな。
三日後、南端砦から連絡があった。クリトアン公爵が兵を率いて現れたと。
俺はサフィアスとシュレンジュをフォイヘスに乗せて密かに先行させた。主力はケンタウロスに乗って、南端砦に出発した。
南端砦に到着すると、クリトアン公爵の軍が橋の手前にいた。200人ほどだ。
「主様、公爵の波動きれい、問題なし。ちょっと気になることある。」
「なんだ?」
「たまに波動に揺れが起こる。」
「どういう理由か分かるか。」
「こんなの初めて、わからない。」
「そうか、ありがとう。よくやってくれた。」
「リム、第一案で対応だ。」
「わかった。」
リムが橋の手前に出て、話しかける。攻撃に備えて、加速持ちが廻りを固める。
「クリアトン公爵、ようこそお越しいただきました。非常時なのでご無礼な対応お許し下さい。」
「いや、皇女殿、こちらこそ遅れてすまない。一昨日夕刻、煙を見たという報告があったので、急いで軍を整えて参ったが、既にあのような状況であった。なんと申して良いやら。」
「攻め込んだ敵は殲滅しましたの、直ぐに再度の攻撃は無いでしょう。よろしければ中へどうぞ。」
「いや、この後、フリクリスとポートビアンにも行ってみようと思っておる。」
「私共が昨日参りました。残念ながらレンドルの町と同じ状況です。」
「な、なんと、あちらも同じなのか!」
「生き残った同胞は数十人保護しましたが、残念ながら両公爵はみつかりませんでした。」
「そ、そうなのか。」
クリアトン公爵は膝をついて、涙した。演技とは思えない。
「いったい、誰が何のために!」
「攻めてきたのはカソーピアです。目的の方は・・・分かりません。いつそちらに向かうかも知れません。奴らは魔法防御の鎧を揃えております。ご注意下さい。」
「な、なるほど、そのような装備で奇襲してきたのじゃな。それでは申し訳ないがこれで失礼して、手配をする。そちらも十分に気を付けられよ。」
クリアトン公爵は兵を率いて戻っていった。




