カソーピア襲来4
その後俺はリムを自分の小屋に連れて行き、袋に入れ清里に飛んだ。下北沢だと、刺激強すぎるからな。
「ショウ、ここはどこじゃ?」
リムは目をみはる。
「ここは俺の家の一つだ。」
「こんな緊急時にどうして?」
「安心しろ、ここでの時間は荘園の時間と進み方が違う。こちらで1日が向こうで3分ほどだ。」
「そ、そんなことがあるのか!」
「俺を信用しろ。昨日からリムは領主としての役目と、家族の心配で一杯だろう。ここで俺とすこし話をして、心を休ませるのがいいぞ。3日いても向こうでは8分ほどだ。」
「そうか、そんなに気にかけてくれているのじゃな。」
「当たり前だ。リムがすべてに優先だ。」
俺はリムをしっかり抱きしめる。まだ裸だけど。
「ショウ、ありがとう。」
そういうとリムは号泣した。そして延々と俺の腕の中で泣きつづけた。
「思いっきり泣け。俺がついてる。」
少ししてリムは泣き止んだ。
「ここは寒いのう。」
「山の上だし、まだ春だからな、ちょっと待て、ストーブつけよう。」
「そ、それはなんじゃ、焚火ではないな。」
「ああ、燃える水だ。」
「そんな魔道具が!」
「ああ、気にするな。服もそれでは寒そうだな。おれのを着るか?」
「わらわのサイズのはないのか?」
そんなの人形用しかないわ。
「こっちには空の民はいないからな。人型で我慢しろ。」
しぶるリムを一度向こうに戻って人型にして連れ帰る。俺のトレーナーを着せた。ぶかぶかだ。もちろんブラジャーはないので、乳首がめだつ。これは落ち着いたら、色々使えるな。
「家族の思い出を聞かせてくれ。」
「聞いてくれるか?」
「もちろんだ、一緒に思いを馳せよう。」
ストーブの前でリム(人型)を後ろから支えながら、話をきいた。
「父上も母上も優しい人であった。しかし空の民としての役目を常に意識していた。」
「空の民としての役目?それはなんだ?」
「一言では言えんが、たとえば上級種として、昔から知られている地の民は他の種族とはあまり交わらない。我らが他の種族と交わることで、種族間のいさかいを収める役割を果たしていたようじゃ。種族の事を知らないと仲介もできんからな。」
「そんな役割も担っていたんだな。」
「それと文字についてもそうじゃ、ショウは字が読めんから、知らないだろうがな。空の民の文字と人間の文字が広く使われている。人間の文字は主に商売など日常生活で広まっており、空の民の文字は歴史や伝統を残すのに使われている。霧の民が伝承を集めているのも我らが文字なのじゃ。」
「確かに俺は字が読めないから、初耳だ。」
「公爵家では代々伝わる歴史や伝承を保存して後世に伝えることも役割だと、常々父上は言っていた。そして歴史の解釈なども手掛けていたのじゃ。」
「幅広いな。忙しかっただろうな。」
「そのなかでどうしても確かめたいことがあって、下層の攻略準備をして、サフィアスなどを雇ったと聞いている。」
「お父上は何を確かめたかったんだ?」
「それはわらわにはわからない。しかし兄上はその思いを受けて、迷宮探索に力をいれていたのじゃ。兄は本当に勇敢で優秀じゃった。」
「リムも父上の思いを受け継ぎたいのだろうな。」
「それはそうじゃ、しかしもうできん。」
「書いたものは残っていないのか?」
「さあ、屋敷があの状態だからのう。もう見つからんじゃろう。」
「落ち着いたら探してみよう。」
「そうじゃな、頼む。」
リムから家族の話を聞いていると、リムの心もすこしずつ落ち着いて来た。数時間もたっただろうか。
「リム、何か食べるか?」
「そうじゃな、ショウの島の食べ物があるか?」
「ちょっと待て。」
俺は冷蔵庫からコンビニで買ったプリンがあるので持ってきた。冷蔵庫は見せない方がいいからな。
「ほら、食べてみろ。」
「なんじゃ、これは?」
「食べれは分かる。」
「大丈夫か?」
リムは恐る恐るプリンに手を付けた。一口食べると、
「おう、これは美味じゃ!もっとないのか?」
この状況でそのリアクションどうなの。
夜も更けてきたので、俺たちは寝た。リムも少し落ち着いたようだ。良かった。
翌朝、リムはまずトイレで絶叫を上げた。ウォシュレットオフにしてなかった。この時期別荘地は人がいなくてよかった。その後、雰囲気が荘園に似ているので、家から出たがったが、中学生を拉致していると通報されても困るので、思いとどまらせた。買い出しに行くわけにもいかなないの、冷蔵庫の冷凍チャーハンや、餃子を食べさせたが、うまいと言っている。味覚は同じなんだな。
「ショウ、ここに連れてきてもらって、心も落ち着いた。本当にありがとう。もう大丈夫じゃ、領主としての仕事に戻る。」
「そうか、それは良かった。じゃあ戻ろう。今回の事は誰にも言うなよ。」
「むろんじゃ、ショウとわらわの秘密じゃ。」
俺は重大なミスに気付いていなかった。その後、昼に時間が空くと、リムが清里に連れて行けとしつこくねだってきたからだ。まあしょうがない。
翌朝、主力だけでポートピアンに迷宮経由で行った。コンポロの援軍は迷宮を開けておくと心配なので、スティリアスとともに島に帰した。それ以外は南端砦と鍛冶場に駐留してもらった。妖精も不意打ちを受けなければ強力なので、持ち場についてもらった。
ジェイパスとその部下には山小屋に居てもらった。魔物が一緒なので、前線では味方が怖がりそうだからな。干し魚を堪能しているようだ。
ポートビアンもジェイパスの報告通り、他の公爵領と同じ状況だった。避難していた妖精たちは姿を現したが従者がいないと非力なので、呆然としている。レンドル公爵家の旗を掲げた我々は歓迎された。
「レンドル家の皆様、こんなことになりました。無念です。私は侍従のスフォクと申します。」
「これはスフォク殿、わらわは、」
「もちろん存じ上げております。お姫様。それにフリクリスのお姫様まで。」
「そ、そうか。レンドルもフリクリスも同じ状況じゃ。」
「そうですか、それは残念です。」
「テク兄もダメだったのか?」
「実は襲撃の時に公爵様から、テク様に知らせるように命を受けて荘園まで行ったのですが、着いた時には既に襲撃を受けておりました。」
「そうか、無念じゃ。」
「それが、荘園の館の焼け跡には従者の死体が無いので、もしやと昨日は探したのですが、見つかりませんでした。」
「そうか、これから行っても良いか?」
「はい、ご案内します。」
ケンタウロスが多くいるので、2時間ほどで着いた。歩いたら1日かかる。
確かに荘園の館は燃え落ちている。
「フォイヘス、サフィアスを乗せて廻りを走ってくれるか?」
リムが言い出す。
「わかりました。」
しばらくして、フォイヘスが戻ってきた。サフィアスがつぶやく。
「南の林かな。」
みんなで南の雑木林に分け入る。
「どうされました。」
スフォクが心配そうに言う。
「テク兄は逃げ足早いからな。」
笑いながらリムが答える。ペルカが先頭で木をなぎ倒しながら進んだ。20分ほど進むと前が開けた。武器を構える一団がいる。
「テク兄、大丈夫か?」
「お、おお、リムか!」
一団の後ろから妖精が飛び上がる。
「助けにきたぞ。」
「本当か!弱いお前が来てくれたのか。」
「テク兄には、言われたくないわ。しかし、逃げ足は相変わらずじゃな。」
「準備はしっかりしておるからの。」
「さすがじゃ。どうじゃうちに来ないか?強いのが守ってくれるぞ。」
「リムの強いは信用ならん。」
「何をいう、侵略者を殲滅したぞ。」
「そ、そうか、それでは世話になろうか。しかしそなたの使用人には種々の種族がいるのう。」
「いや、使用人ではない、わらわの家族じゃ。」
そのあと、色々紛糾した。
ポートビアンからは妖精30人とテクの使用人20人が荘園に避難してきた。




