カソーピアの脅威
今回の戦での成果は投降者からカソーピアの情報が入手できたことだ。まとめると、
・カソーピアの人口は五百万人、生産年齢の者が二百五十万人いる。その中で百万人は迷宮に入ったことがある。スキル、特技持ちが十万人いて、その中で二万人が戦闘系だ。
・戦闘系の2万人は聖騎士団に所属して島内外の軍隊として働く。聖騎士の下に一般の兵が5万人いる。聖騎士の中で魔法使いは二千人ほどいて、優秀な者は僧侶として、各地の指揮官となる。
・7大僧正はその中でも選ばれた者で、各自が神器を操る。聖教会の運営は7大僧正の合議で行われる。島外の統治を二人、島内の統治を四人で分担している。最高僧正は人々の前には出てこない。
・カソーピアには500隻以上の大きな船がある。その7割はコンポロ島で製造された。
さすがに人間は多いな。なにせ欲望の呪いなんて言われるくらいだからな、子沢山なんだろう。今回殲滅したのはカソーピアの戦力の1%程度か、先は長い。船も40倍以上だな。
「実は何度もカソーピアに潜入させたんですが、一人も戻って来たものは居ないのです。今回初めて向こうの内情が分かりました。」
キャリアスが悔しそうに言う。むこうにもサフィアスみたいな奴がいるのかもな。
2日後ペイニャに戻り、軍は解散し、それぞれの地に戻った。ペイニャでも俺たちの成果は直ぐに広まった。これはカソーピアの耳にも遠からず入るだろう。もう猶予はない。
全面対決だ。
異世界での俺はほぼ休む間もなく動きまわっている。まわりから見たら鉄人にみえるな。夜も色々忙しくて、あまり寝てないし。ジェローリとペイニャを迷宮ゲートで移動するだけで、仲間たちは、星の裏側なので時差に悩まされる。しかし俺には下北沢に戻って休息するという裏技がある。ジェローリアからペイニャに移動したときは、下北沢でゆっくり眠って、おいしいカレーやラーメンを食べて戻るとちょうど時差調整になる。山小屋でエリーンが管理してるスケジュールをこなすときも、途中で別室から下北沢に戻り、一度しっかり寝ることで色々回復する。相手は寝かさない。みんな寝ないけど。なので、もし俺の下北沢の部屋にペットカメラみたいなのを仕掛けたら、延々と寝ている映像になりそうだ。それに片方の世界だけで生活してると他方が浦島太郎みたいになるのも困るので、時間配分も、少なくとも異世界での半分以上は地球側で過ごすようにしている。こっちにいる時はほぼ寝ているか、箱根の温泉のはしごだが、たまには働いている。インドに宝石を売りにいったり、宮脇先輩と話をしたり、最近はサンフランシスコに飛んで、リサと話もしている。リサも魅了3で本音の確認をしたが問題はなかった。そこで今度は別の依頼をした。リサをゴールデンゲートブリッジが一望できるレストランに呼び出した。
「リサさん、会社の方は準備できた?」
つたない英語で聞く、異世界みたいに言葉がすべて理解出来たらいいんだが。
「そちらは順調ですよ。」
「そうですか、それは良かった。今日は頼みがあるんですが。」
「はい、どんなことですか?」
「リサさんはハーバード出身だよね。その時の友人でCIAとかに女性の友人いる?」
「女性限定ですか?おもしろいですね。確かに何人かいますが、同期ももう年なので現場はリタイアしてる人が多いです。どういう御用ですか?」
「それが、大きな声では言えないが、武器とかを入手したいんだ。」
「それは、物騒ですね。この国でテロでもするんですか?」
「それはないよ。アメリカに迷惑をかける気はない。」
「そうですか、それならちょっと当たってみます。」
「ありがとう、恩に着るよ。」
「それと、少し提案があるんですが。」
「ほう、聞きますよ。」
「ショウさんは宝石の原石を持ってるんですよね。」
「ああ、確かに。」
「私も宝石業界について調べたんですが、原石をうまく処理するならアフリカに拠点を持つのも良いかと思います。」
「アフリカで?」
「そうです。実際採掘してる会社を手に入れて、そこに原石を紛れ込ませるといやり方です。複数処理先を持った方が万一の時に安全ですよ。」
「なるほど、それは良い考えですね。具体策はありますか?」
「すこし心当たりがありますので、また報告します。」
「そうですか、楽しみにしています。」
1ポンドステーキを食べながら、サンフランシスコの夜景を楽しんだ。むこうの家族には罪悪感があるが。
いよいよ、カソーピアとの戦いが始まりそうだ。異世界でできることはほぼ札を使い切った。そこで思ったのが、ボウガンの事だ。日本では規制もあって、威力のないのしか買えなかったが、それでも向こうでは結構な威力があった。むこうはまだ中世まっただなかなので、銃なんてない。それを使えば俺みたいな雑魚でも少しは役に立つかもしれない。ゲートで移動できるので、アメリカで入手できれば、そのまま異世界に持ち込める。これは日本の銃刀法違反にはならないのかな?
カソーピアが攻めて来るとしたらコンポロ島かペイニャのモウル領だ。コンポロは迷宮を封鎖しており、ショウム迷宮も迷宮名が知られていない。来るとしたら海からだ。ジェイパスの配下にカソーピアから西の海域で哨戒してもらって、船団が近づいたら連絡を受けるように頼んだ。人魚は早いので、船団到着の一日前には知ることができる。ジェローリアでもいつでも兵を送ることができる態勢を整えた。
人魚には干し魚が好評だったので、また礼を兼ねて、ロンドビー船長に赤道に運んでもらった。後で聞くと今回は第五地区だけではなく、第四地区と第六地区の人魚も直接受け取りに来ていたらしい。船の大蟹が乗り込んで木箱を次々と持って、海上で列をなして去っていくのを見て、船員たちは震えあがったそうだ。内密にな。荘園では鍛冶場で引き続き防具の製作を進めている。調薬所ではフェインとファロピピンが薬の製作でフル回転している。調薬には赤魔石がいるので、交代でドワーフや獣人たちはリショウム迷宮に潜っている。一度に20パテくらいがいくので、30階層付近は魔物の取り合いになっているようだ。まあ経験を積むのは大事だからな。そんなときにジェイパスがやってきた。毎週の事だが。
「おう、ジェイパス。この前はありがとうな。」
「いや、また干し魚をまとめて送ってくれて嬉しいぞ。」
「気に入ってくれたならよかった。」
「それが、まわりの地区でも好評でな、大変面目をほどこしたぞ。」
「聞いてるぞ、海に蟹の状列ができたんだってな。」
「それで、当面我が地域の監視は第四と第六でやってくれることになったので、第五の者は全員出動可能じゃ。」
「おお、それはありがたい。いつカソーピアがくるかわからないからな。」
「その上、神器を作っていることを聞きつけて、幾つかレシピも教えてくれた。それも試しみよう。」
「色々すまんな。」
俺はクラゲからすでに降りて、地面にいるジェイパスを抱きしめた。足が無いので重い。
しかし、俺の予想は全く裏切られた。




