コンポロ島攻略戦
翌朝、会議はモウルの屋敷の前にテーブルを並べて屋外だ。屋敷に入りきらない。
「いよいよ、コンポロ奪回作戦を開始します。スティリアス王の下、みんなで勝利を勝ち取りましょう。」
俺の言葉に参加者は歓声を上げた。
「皆さん、本日は多くの方にご参加いただき感謝いたします。私は未熟で王と名乗るなど思いもよりませんが、故郷の同胞を解放したいという思いは皆さんと同じです。一兵士として皆さんの先頭に立って戦います。」
そういうと、剣を抜いて、空に向かって掲げた。かっこいいぞ!広場が更に大きな歓声に包まれた。上々のスタートだ。俺が作戦を説明する。
「今回はコンポロの3か所の港に同時に侵攻します。主力は北のコンポロ港に8隻、南のセウィート港と西のインペクト港には2隻ずつです。それぞれの船から50名が上陸します。谷の民からは船員200,モウル領から100、モウル領以外のペイニャから100、山の民60、霧の民40,森の民30,畑の民30などです。それぞれ10名で小隊を作り、山の民が小隊長を務めます。コンポロ港には7大僧正がいる可能性があるので、主力を投入します。他の二つの港では海の民が魔物を先行させますので、おそらく制圧は容易だと思います。」
海の民に言及すると、みんなが蟹に乗ってる人魚の方をみる。誰も近くに寄ってこなくて寂しそうだ。
「あの、よろしいでしょうか。もし7大僧正がいた場合はどのように対処いたすのでしょう?」
船長の一人が聞く。
「それは私の家族にお任せください。皆さんは避難して下さい。決して7大僧正とは戦わないで下さい。」
「いや、そういう訳には参りません。微力ながら戦わせて下さい。」
「スティリアス王は犠牲を最小にすることを望まれています。私たちは王の家族としてこれは守らなければなりません。」
獣人の参加者には動揺が走った。
「皆さん、もし私を王と認めていただけるのであれば、ショウ様の言葉に従って下さい。」
スティリアスの言葉に何人かが涙を流した。
「わかりました。御意に従います。」
翌週12隻の船がモウル領に勢揃いした、壮観だ。鍛冶場で作った防具が持ち込まれて、兵士に配られる。最低でも鎧と盾と兜で物理+7がついている。それと旗を配った。
「こ、これは。」
キャリアスが目を見張る。
「スティリアスのペンダントにあった紋章です。船の前後と各小隊に持たせて下さい。王の帰還を住民に知らせるのです。」
3時間ほどで武装した兵士を満載した船は次々と出航した。船の後ろを人魚たちが泳いで続く。コンポロまで2日の航海だ。
「7大僧正は居るでしょうか?」
キャリアス号にはケンタウロス用に簡易テントを甲板に張っている、エリーンたちケンタウロスは全員この船だ。
「まったくわからないが、できればいて欲しいな。」
「どうしてですか。」
「個別に撃破した方が楽だろ。コンポロには恐らくいても赤だけだろうからな。」
「奪還しても、遠からず攻めてくるでしょうね。」
「そうだな、その対策も必要だな。」
「どうするんですか?」
「一応考えはあるよ。心配しないで。」
エリーンの尻尾を触ると、危うく蹴られそうだった。
二日後の夜にはコンポロ島に到着した。各船は日の出と同時に作戦を開始した。
まず、人魚たちが蟹を港に上陸させる。ジェイパスには中級種は使わないように指示してある。魔物をみて港に混乱が起こるのに乗じて船は次々と接舷していった。セフィートとインペクトではカソーピア側の人間も少ないので短時間で港を制圧した。しかしコンポロ港ではカソーピアも兵力を備えているので、戦闘になった。
「魔法使いがいたらすぐ報告しろ。」
小隊長はトランシーバーを付けているので、連絡は容易だ。普通の兵士との戦いはこっちに物理+7があるので、圧倒したが、何人か魔法使いがいて、被害も出る。しかしすぐに連絡が来るので、家族たちが素早く殲滅する。午前中でコンポロ港での戦いも決着がついた。旗を見て住民たちが歓声を上げている。
「迷宮のオーナーは誰だ?」
降伏した人間に尋問する。
「さ、先ほどの戦闘で死んだ僧侶です。魔法を使っていました。」
ケンタウロスに指示して魔法使いの死体を集めさせた。10体の死体がすぐに集められた。
「どれがオーナーだ?」
「この男です。」
「リム、7大僧正は居ないみたいだが、一応警戒してくれ。俺は何人は連れて迷宮を押さえる。」
「わかった、こちらはまかせるのじゃ。」
スティリアス、サイクス、死体を積んだ運搬車を曳くエリーン、それとジェイパスの部下の人魚2人で迷宮に入る。ジェイパスの部下がそれぞれ8体蟹を出して魔物を殲滅するので、30階層まですることもなく進んだ。
「お義母さん、それではお願いします。」
サイクスは手順に従い、迷宮オーナーの変更手順を進めた。即時に切り替えるには現オーナーの血がいるらしい。
「さあ、スティリアス出番だ。」
「私でよろしいのでしょうか?」
「もちろんだ、王よ、早くしろ。」
スティリアスが迷宮のオーナーになった。
「それじゃ、迷宮を封鎖するんだ。」
「はい、わかりました。」
これで7大僧正が迷宮からはコンポラ島には入れないぞ。
地上に戻ると、船長たちを中心に戦いの後処理が進んでいる。
「ショウ様、ありがとうございました。おかげさまで犠牲者は10人で済みました。」
「そうか、10人亡くなったのか。」
それを聞いて隣でスティリアスが涙ぐむ。
「王の責任は重大だ。気持ちは分かるがしっかりしろ。」
「ショウ様、我々はこのように心優しい王をいただき、誇りに思います。」
キャリアス達がしっかりスティリアスを支えてくれそうだ、良かった。
その後、現地の長老が挨拶にきた。
「王を支えていただき、島を侵略者から取り戻していただき、感謝の言葉もありません。」
「いえ、島の外から思いを繋いだ船長方の功績です。」
「船長方とは、細々と連絡を取っておりましたが、王の血統が健在であることを知りました。そして小さな期待をしていましたが、このように直ぐに来ていただけるとは思いもよりませんでした。」
長老は細い手で俺の手をしっかり握ってくる。苦労したんだろうな。
「それで、ご相談なのですが、スティリアス様の戴冠式を早速執り行いと考えておりますが、お許しいただけますでしょうか?」
「戴冠式ですか?本人はどういってるのでしょう。」
「それが、スティリアス様は固辞されているのです。」
「そうですか、本人に聞いてみます。」
「どうか、お願いいたします。」
長老は最敬礼して立ち去った。俺は彼女の弟のロストリンを呼んだ。
「長老が言ってたが、理由を知ってるか?」
「直接は話してませんが、おそらくモウル様を見てそう思うのではないでしょうか?」
「モウルを見て?」
「モウル様は領主になってから寂しいとよく言われてました。そんな姿を見て決断できないのではないでしょうか?」
「そうか、俺からも話をするが、もし彼女が王になったらしっかりペンディウルと共に支えてやって欲しい。」
「もちろんです!お任せください。もっとも内政はペンディウルで私は荒事ですが。」
「そうだったな。」
スティリアスを探すと、小さな部屋で一人で座っていた。
「おう、スティリアス、みんなが挨拶に来るから疲れただろう。」
「ショウ様、私など何もしておりませんから。」
「戴冠式をしてくれと、みんな言うしな。」
「私などで混乱している国がまとまるのでしょうか?」
「優れた弟が二人もいるじゃないか。心配しなくていいぞ。二人とも全力で支えてくれる。」
「それはそうかもしれませんが、私はショウ様の元で戦士として戦うことに生きがいを感じています。」
「ここの王になったからと言って、俺の戦士で無くなるわけではないだろう。俺はスティリアスを頼りにしている。」
「まあ、嬉しいお言葉です。」
「スティリアスが寂しかったら直ぐに会いにくるぞ。」
「でも迷宮のゲートを閉めましたから、そういう訳にはいきません。」
「いや、俺には飛んでくる技がある。」
「それは、エリーンさんが言ってましたが、裸で飛んでくるという技ですね。」
エリーン、どういう言い方してるの。
「い、いや、その言い方はちょっと違うが、俺の部屋さえ用意してくれればいつでも来るぞ。」
「そうなのですね。」
「それにカソーピアの件が片付いたら、弟たちに王位を譲って戻ってくれば良い。弟たちも間違いなく異能だからな。」
「ショウ様、」
俺はスティリアスを強く抱きしめた。
なぜかリムがドアを開けて入ってきた。監視カメラ付けとるんか!
「スティリアス、モウルの時もそうだが、領主になっても我々の家族の絆は絶対じゃ。安心して良いぞ。」
「お姫様、」
スティリアスは声にならない。今日は珍しくナイスだ。
翌日急遽スティリアスの戴冠式が行われた。
空の民、海の民、森の民の貴族が一族として出席し、山の民や、畑の民、霧の民、草原の民も祝福する。とても素晴らしい戴冠式になった。
長老たちや船長たちは国の再建を誓った。
俺が国王の伴侶としてひな壇に並べられたのは想定外だったが。
海の民や船長たちに海上の警戒を頼んで俺たちは撤退した。防具も200ほどは残していた。その前にスティリアスはしっかり俺の部屋を確保して翌週来ることを約束させられた。
悪くないな。




