人魚の涙
「着いたぞ。」
荘園の俺の小屋で袋を開けるとふたりの上級種は絶句した。その声を聞きつけてエリーンが飛んできた。裸の俺と、裸の人魚(そもそもいつも裸だが)とリムがいるのを見て、
「何してるんですか!」
続いてサイクスやサフィアスも顔を出す。
「さすがショウさん、お盛んですね。」
「主様、最低。」
いや、違うんだって。
エリーンがあわててハルカの小屋に行って人型の服を持ってきたが、胸のサイズがあわないのでペルカの小屋から別のを持ってきた。そうなるわな。
「どういうことでしょう、お二人は町に行ってたはずでは。」
これはエリーンにすごく怒られるパターンや。とりあえず山小屋に移動した。ジェイパスはエリーンが運ぶ。動けなくはないが凄く時間かかるしな。
「この方はもしかして、」
「わらわは第五地区総裁ジェイパス、海の民である。」
状況についていけず、声が震えてるぞ。
「この人は透明で大きく、優しい波動、すごい。」
サフィアスが目を丸くする。
「実は、ショウと海の民に会いに行ったのじゃ。」
「お嬢様、そんな危険なことをなさっては困ります。」
エリーンの美しい眉がつりあがる。美人や。
「それで赤道にいたのじゃが、気が付いたらここに戻っていたのじゃ。」
「ショウも神器をもっておるのか?」
ジェイパスが尋ねる。
「い、いや俺は神器などもってない。ちょっとした力だ。」
一同はあきれて言葉も出ない。
「ジェイパスさんもショウさんの家族になったのですね。歓迎いたします。」
サイクスが助け舟を出してくれる。いつもすいません。
「う、海の民は家族を持たないので、実感がわかないが、よろしく頼む。」
「そうじゃ、ジェイパスも家族なのじゃ、歓迎の宴会じゃ。」
「わらわは魚と魔石しか食べないのだが。」
「干し魚がありますが。」
「試してみよう。」
荘園にいたペルカやミドリも呼んで、宴会が始まった。
「陸だと移動が不便ですね。」
ペルカが空気を読まずに聞いてる。
「でも海だと早いぞ、人間の船の3倍で動ける。」
「こちらにいる時は人型にしたらどうですか?」
「いや、それはいろいろ都合が悪いのじゃ。」
「ジェイパス様、よくわかります。私も本来、畑の民なので。」
ミドリが応じる。
「そうなのか、よくあの呪いを我慢できるのう、意思が強いんじゃな。」
「いえ、確かに困っています。」
思わぬところで話があってるな。
「あの岩礁は迷宮があるって言ってよな。帰りはそこにゲートで行けば早いな。」
「わらわだけだと、そうじゃな。」
「他の人はいけないんですか?」
エリーンが聞く。
「水の中だから、迷宮出るまでに窒息するぞ。」
「あら、それは無理ですね。」
「せっかくきたので、神器を少し試してみるか?」
「それは問題ないが、1なのでそれほど大したものはできんぞ。それに成功確率も三割ほどだが、良いのか?」
「ショウさん、ジェイパスさんは覚醒してるんですか?」
「いや、まだだけど。」
エリーンがMP薬を取り出した。
「お、おい、これはどういうことじゃ。ステータスが倍になって、神器が2にあがってるぞ。」
ジェイパスが騒ぎ出した。
「ショウさんのスキルですよ。」
「幸運があがったのは大きいかもしれんな。」
夕方だったがみんなで鍛冶場に移動した。むこうには素材がそろってるからな。ジェイパスはエリーンの背中で移動だ。ジェイパスは魔物を出そうとしたが、止めた。足が無いから跨がれないので、籠をつけた。
「えー、この方はどなたでしょうか?」
ビジェイが恐る恐る聞く。
「ああ、海の民のジェイパスだ、素材を使っていいか?」
神器の製作をするというが広まり、ドワーフが続々と集まり廻りを取り巻いた。
「伝わっている製法の物を作ってみよう。金10グラム、銀10グラム、橙の魔石を頼む。」
ドワーフたちが素材を準備すると、ジェイパスは台の上の素材に気を集中する。スキルではないがMPを消費するらしい。台が激しく光った、それが収まるとネックレスが現れた。
「成功のようじゃな。涙のネックレスじゃ。」
俺は即座に鑑定した。
{人魚の涙 即死回避する 1回のみ使用可能}
おお、これだ。
「こ、これは凄い。即死回避だ。」
「しかし 神器1の道具は使い捨てじゃからな。大したことはない。」
「連続して作れるのか?」
「MPさえ戻ればできるぞ。」
俺はMP薬をエリーンの袋から取り出した。まわりではドワーフたちが歓声を上げている。
それから10回連続で試したところ7回成功した。
「これは凄い確率じゃのう、伝承とは異なるな。幸運があがったからかもしれん。」
橙魔石の在庫が尽きたので今日の作業は終了した。
「神器1でも凄いものができるんですね。これは期待できます。」
エリーンも目を輝かせている。
「こんなのでよければいくらでも作るぞ。また言ってくれ。」
そのあと、ジェイパスは迷宮から岩礁に戻っていった。帰る前に干し魚が気に入ったので土産に欲しいといったので、入れ物の調達にドタバタした。そのまま持って帰ったら干し魚でなくなるしな。




