ジェイパス祖母の拉致
シェイトンに飛んで、ロンドビー船長に赤道付近まで運んでもらう算段をした。一週間後にジェローリアで拾ってもらうことになった。その後俺はポポゼウルに会いにトロンビアに飛んだ。
「ショウ様、海の民を見つけられたのですな。もう何があっても驚きませんぞ。」
ポポゼウルが笑顔で迎えてくれた。
「今日はその関係でお知恵を借りに来ました。」
俺は7大僧正と神器についてポポゼウルに話した。
「この前お伝えした、伝承のひとつにこんなのがありましたな。」
{神の御技は海で作られる}
「あ、確かにあります。」
「海の民に神器という特技があるなら、その関連は疑ってよいでしょうな。しかし不思議なのは、仮に海の民がそれを作ったとしてなぜカソーピアの手にそれがあるかですな。」
「そこなんです。少なくともカソーピアの船も大渦を見たら逃げましたから、その二つが連携しているとは思えません。」
「ショウ様の傘下は恐るべき使い手が揃っていますが、相手が神器となると一筋縄ではいかないかも知れませんな。くれぐれもお気をつけてください。それとご依頼の品ですが、これで良いでしょうか。」
「ああ、ありがとうございます。」
「青の渓谷の一族はショウ様とともにあります。存分にしてください。」
約束の日にカティーサ号はレンドル領の港に入港した。ハルカが穀物店を買収したので、正式な取引の船として、今回からは昼間に堂々入港できる。物資の積み下ろしの合間をみて俺とリムは船に乗り込んだ。みんなに言うと反対されるので、内密だ。
「お姫様、ショウ様、カティーサ号にようこそ。」
「ロンドビー船長、世話になります。」
「なにやら、色々動きがあったようですな。ホーヘンリ殿も詳しくは聞いていないようですが、大変だったようですな。」
「確かに、大変でした。ロンドビー船長にはお話しておきましょう。」
南へ向かう航海の途中に南半球での出来事をロンドビーに伝えた。
「いつものように、ショウ様は規格外ですな。もう驚きませんが。それで今回は海の民に会いにいかれるのですな。」
「カソーピア攻略の鍵があるかもしれないので、ダメもとで行きます。」
「それでは赤道までお供いたしましょう。」
「いや、それではこの船に危険が及ぶかもしれません。途中で小舟で降ろしていただきます。」
「ショウ様、海の上は板一枚の下は死が待っております。仲間をそんなところに放り出すようなことはできません。それに一人で漕いでもなかなか着きませんよ。まあ、ショウ様の冒険に付き合い命を落としたら、それも一興かと。」
一日の航海で俺たちは赤道に到達した。暖かい風が吹いている。船員たちが周囲を見張っているがひとりが声を上げた。
「渦です。」
俺たちは声のする右前方を見た。そこに人魚が顔を出した。
「よう参った。ショウよ。このイルカに乗れ。船はそのまま帰ってよいぞ。帰りは送ってやる。」
俺には区別できないが、海の民も妖精と同じ言葉を話すようだ。ロンドビーは理解できており、こちらを見た。
「ロンドビー船長、あれが海の民です。危険はありませんので、ここまでで結構です。」
「わかりました。十分お気を付けください。」
俺はリムを肩に乗せ、船をロープで降りイルカに乗った。イルカは高速で水面を進みほどなく、岩礁に着いた。
「わらわはレンドル公爵家第一皇女リム、空の民である。」
「わらわは第5地区総裁ジェイパス、海の民である。」
ふたりは岩礁の上で名乗る。お互い圧がすごいわ。それに翻訳の関係で大奥のお局の会話みたいだ。3分ほどにらみ合いは続いた。
「あのー、そろそろ中に入ろう。」
俺は二人ににらまれる。なんでや。きりが無いので俺が先に洞窟に入ると二人が付いて来た。
「おぬしが、ショウの最初の妻だな。海でショウを見つけた時に空の民を家族にしてると聞いて興味を持った。」
「そうか、ショウはわらわだけでなく、多くの種族の妻を持っておる。」
「ショウのあの呪いは恐ろしいのう。」
「おぬしもそう思うか?」
なぜかふたりは俺にはわからない話で距離が急速に縮まった。
「人型の雌があのような欲望を抱えてるなど、想像もつかなかったわ。そもそも海の民には雄はいないのでな。」
「雄がいない?どうやって子供を作るの。」
この前は、逃げるように帰ったのであまり会話ができてなかった。よく見るとこの人魚は結構かわいいな。ピンクの髪の毛で、青い目だ。どっかの国のアニメに出てきそうだ。なんか着て欲しいが。
「海の民の寿命は200年ほどだが、100歳ほどで一人の子を産む。」
「それじゃ、増えないのか?子供産む前に死んだら、減るばっかりだな。」
「たまに双子が生まれるので、微増じゃな。また海の民は海では死ぬことはほぼないからのう。」
「しかし、おぬしらも上級種なら、魔石が要るであろう。」
「それは問題ないのじゃ。赤道上にはこのような岩礁が8か所ある。そこの深いところに迷宮がある。そこで魔石は手に入る。」
海底に迷宮があるのか!
「わらわでもその迷宮はつかえるのか?」
「それは無理じゃ、迷宮の中は水中なので、水中でも呼吸ができる海の民専用じゃ。」
「それじゃ、出てくる魔物も地上の魔物とはちがうんだな。」
「鮫とか蟹とかな。」
鮫は怖いな迷宮で出て欲しくない。蟹は共通なのね。
「わらわの特技の使役は倒した魔物を低確率で手下にできるのじゃ。この前のおおだこもそれだ。」
なんでもありやな。
「今日はその特技の件で聞きたいことがあってきたんだ。」
「なんじゃ、またわらわに、あの呪いをかけにきたと思ったんじゃが。」
ジェイパスが俺を睨む。
「お、おう。それも勿論ある。」
おれは二人の上級種に睨まれピンチだ。
「神器についてだが。」
俺の問いにジェイパスの顔が曇る。なんか変なこと言った?
「ショウ、おぬしにはそれが分かるのじゃな。」
「ああ、わかる。」
「昔の悪夢じゃ。」
「どういうこと?」
「このことはおぬしら二人に留めてくれるか?」
「お、おう、約束しよう。」
「知っての通り。海の民はこの星の南北を分けて、秩序を守るという役割を代々になっていた。そうはいうものの赤道を越えるものなど、長きにわたって出てこなかった。海の民は平穏な生活を送っていた。」
ジェイパスはそこまでいうと上を向いた。
「それが起こったのは170年ほど前だ。人間が船を発明して赤道を渡ろうとしたのだ。わが先祖は初めての事でもあり、人間に赤道わたるのをやめるように告げたのじゃ。そこからは詳細は分からないが、先祖は人間に拉致された。」
なんと、拉致!それも人間に。
「結局、先祖はかえって来なかった。その後は人間が赤道を渡ろうとすると、問答無用で殲滅することになったのじゃ。その先祖というのは我が祖母なのじゃ。むろん祖母が人間の手にかかったことは無念じゃが、それ以上に、」
そこまでいってジェイパスは言葉が出なくなった、俺は彼女の背中を撫でた。
「この数十年、カソーピアは各地を武力で犯している。その中で神器が使用されている形跡を見つけたのじゃ。我が一族は各島に偵察を出しているのじゃが、カソーピアの侵略は海から船で行うので、それが偵察で分かってきたのじゃ。本来秩序を守るべき我が一族の神器がカソーピアの暴挙に使われているのが無念でならん。」
「そんなことがあったんじゃな。」
リムも呆然としている。
「つらかったな、ジェイパス。俺にその思いを全部はきだせ。」
ジェイパスは俺に抱きつき号泣する。部下にはその思いを吐き出せなかったのだろう。
時間がたちジェイパスも落ち着いた。
「ジェイパスも神器がつくれるのだろ?」
「いや、祖母は神器3の特技じゃ。わらわとは比べ物にならない強力なものがつくれたはずじゃ。」
「そもそも神器とはどうやってつくるの?」
「鉄、金、銀、宝石、魔石などを原料とするらしい。できるものは上級ではランダムになる。そもそも海では金、銀、宝石など採れないので、わらわも作ったことはない。」
そうか、陸の種族と協力しないとできないようになってるんだな。その相手がカソーピアだというのが最悪だったんだ。
「ジェイパス、すまんな、つらいことを聞いてしまった。」
「いや、わらわも聞いてくれてよかったぞ。これが家族なんじゃな。」
「荘園にも来るがよいぞ、他の家族も紹介しよう。」
「部下からカソーピアの蛮行は色々報告を受けておる。海の民の総裁会議でもカソーピアを止めるべしとの方針が出ておる。本来、海の民は陸の出来事には介入しないのが原則であるが、わらわも協力しよう。」
「それはありがたい。ぜひ頼む。」
「わかった、しかし今日はその前に呪いを、、」
リムにはイルカに乗って観光にいってもらった。海しかないけどな。
2時間ほどしてリムが帰ってきた。ぶつぶついってるので抱きしめるとおとなしくなった。
「ちょっと試してみよう。」
俺はそういうと服を脱いだ。
「ショウ、なにをしておる。まさか上級種二人を同時に!」
リムが叫ぶ!違うわ。
「二人ともこの袋に入ってくれ。」
ジェイパスを持ち上げて、袋にいれ、その上にリムがとまる。
「なんじゃこれは、どうするのじゃ。」
「少しの間我慢してくれ。」
俺が二人のうえにパンツや衣服を投げ込むので怒ってる。そして下北沢経由で小屋に戻った。人魚や妖精がむこうにあらわれたら大惨事だから、素早くゲートを開いた。
「着いたぞ。」




