7人の船長
確かにその翌週にはキャリアスがポンディアル号でモウル領に現れた。しかしながら少し想定を超えていた。7隻の船を率いてきたのだ。
「キャリアス船長、ようこそ。えー、船がたくさんいますね。」
「ショウ様、誠に、申し訳ありません。赤道のことは内密にしておりますが、スティリアス様のことを同胞に話すと、元々貴族であった者たちが是非ともご挨拶を、と言ってすべての仕事を棄ててついて来たのです。」
「あー、そうですか。それは歓迎いたしますが、あいにくスティリアスは今、向こうにおります。急いで迎えを出してもこっちに来るのは明日になりますが。」
「もし、お許しいただければ、こちらで待つことは可能でしょうか?」
「それは問題ありません。それでは迎えの小舟を出しましょう。」
「ありがとうございます。空船で来るのももったいないので、それぞれ物資を積んでおりますので、お受け取り下さい。」
「それは助かります。お支払いはキャリアス船長にまとめてでよろしいか?」
「いえ、今回は突然押し掛けたので、それは結構です。」
「そういう訳にはいきません。それは別で考えて下さい。」
ここで押し問答になった。めんどくさい。
使者を出すと時間がかかるので、俺が荘園に飛んだ。むこうは真夜中なのでリム、エリーン、サイクス、スティリアスをたたき起こす。
「どうしたのじゃ、こんな夜中に。」
「モウル領にスティリアスを慕って船が7隻も来た。みんなスティリアスに挨拶したがってるのですぐに来てくれるか?」
「それは、嬉しい話じゃが、」
「そうだ、対応を間違えるとまずいので、みんな来てほしい。いま向こうでシュレンジュが対応している。」
「そうですね。みんなで行きましょう。」
サイクスが言う。
「みなさま、お手数をかけ、申し訳ありません。」
スティリアスが頭を下げる。
「気にするでないぞ。家族のことはみんなで助けるのは当然じゃ。」
あとで頭撫でてやろう。俺はモウル領にトンボ返りした。
下北沢でゲートカウントを回復して、モウル領に戻ると、モウルの屋敷に7人の船長が案内されるところだった。7人の船長にモウルが定型の挨拶をする。これだけはシュレンジュの教育でできるんだな。その後はシュレンジュがうまく対応している。
「みなさん、今日の夕方にはスティリアスは参ります。」
当然、キャリアス以外の船長も全員獣人だ。一人が口を開く。
「ありがとうございます。どのようにご連絡いただいたのでしょう?」
キャリアスがすかさず言った。
「ご一同、ショウ様は規格外なので、いろいろ秘密があります。そこは詮索せずによろしく。」
「さすが、王の見染めた方、感服致します。」
なんか微妙な空気になってる。
「船長方はコンポロ島の貴族の方々ですね。」
「今さら貴族と名乗るのはおこがましいと考えております。しかし王がおられるのであれば、命に代えてお仕えしたいです。王家のご恩はそれほど深いのです。」
「今までに一度、故郷奪還を図りましたが、7大僧正に阻まれました。残念でなりません。」
「やはり、7大僧正ですか。」
「ご存じなのですか。」
「いえ、さきほどシンリアス島の幹部の方と話して、初めて7大僧正という名前を聞きました。神器を使い、強いとか。」
「ショウ様であれば何とかなるかもしれませんな。」
「いえいえ、私は弱いんです。家族に助けられて生きております。」
「スティリアス様にですか?」
「もちろん、スティリアスにも助けられております。」
「私も少し助けてる。」
モウル、お前は喋るな!船長たちが首をかしげたが、
「ご一同、先ほど申しましたとおり。」
キャリアスがフォローしてくれる。
「これは失礼いたしました。お許し下さい。」
みんな大人で良かったわ。モウルはつまみだそう。
「それでは、半日ほどありますので、よろしければシュレンジュがこの荘園をご案内いたします。」
「それはご親切に、お言葉に甘えます。」
シュレンジュに船長たちを預けると安心だ。俺も自分の小屋に戻って一息つく。
俺なりに状況を整理すると、この獣人の船長たちをこちら側に引き留めるのは必須だ。しかし、安易にコンポロ島奪還の勢いに乗るのも考え物だ。なにせ敵の力がみえない。総力を動員すると、獣人やオークの千人以上の力はあるが、それで勝てるのか?
答えの出ないまま、時間がたったので、遅い昼食に食堂に向かった。そこでは7人の船長と、コントルホーンが一緒にテーブルを囲んでいる。俺もそれに加わった。
「ショウ様、こちらの荘園は多くの種族が力を合わせ、本当に素晴らしい運営をしておられますな。感服しました。」
「私も同様の感想です。まさに理想の国つくりです。」
船長の言葉に応じるように、コントルホーンが続けた。
「それはありがたいお言葉です。まだ始まったばかりですが、そのように努めております。」
「7大僧正についても情報交換をしました。」
「それは興味深いです。」
「赤い僧服に黒い鎧を付けているということで、同一人物かも知れません。」
「武器はどうだったのですか?」
「そこまでは古い話なので確かではありませんが、攻撃が凄いというよりは、こちらの攻撃が通らないという点は共通しています。」
「魔法は使わなかったのですね。」
「こちらも向こうも魔法は使わなかったようです。」
まあ、獣人やオークだから魔法使いはいないよな。
「今も巡回してくるのは赤い僧服のようですから、人間の寿命的には同一人物とは考えにくいですね。」
「シンリアスには稀に橙の僧服も来ます。」
「それは魔石の色でいうと、7色のうち、下二つですね。」
「確かにそうですな、大僧正の中でも下っ端二人ということでしょうか。」
俺の推論に一同は更に希望を失った感じになってる。まずかったかな。




