7大僧正
翌日、リムはエリーンと公爵家に行き、俺はハルカを連れてドレスを買いに言った。リムとハルカの人型は体型が似ている、リムはBカッブでハルカはCだが。人間も多い町なので衣装の店もある。ピンクのドレスを選んだ。その日は町の屋敷でゆっくりだ。リムもいないし。
二日後リムとエリーンが帰ってきた。リムは前日に戻りたがったが、エリーンがハルカのことを考えて止めたようだ。グッジョブ。
「どうだった?」
「かなり深刻じゃな。」
リムの表情もくらい。
「南だけではなく東の荘園も疫病が発生したようじゃ。穀物不足がすすんでおる。」
俺はそれを聞いて温めていたプランを実行することにした。
「そうか、ハルカ、穀物店は買収できるか?」
「あ、あの、商売は苦しくなってるので、可能だと思います。」
「そうか、金額は高くて良いから、直ぐ買収してくれ。」
「はい、すぐにとりかかります。」
「ショウ、どういうことじゃ?」
「リムの荘園は建設中だから、そこから穀物を支援するのはおかしいだろう。ハルカに穀物店をしてもらって、そこに島の外から安値で穀物を卸すんだ。そうすれば公爵領の財政も助かるだろう。差額は俺が負担するから心配するな。」
「ショウさん、そこまでしていただけるのですか。私も感謝いたします。」
エリーンが涙ぐむ。リムも泣いている。
「家族の実家だからな、当然のことだ。」
「それに、そうすると港を昼間に使ってもおかしくないだろう。堂々と荘園にも物資を運び込める。」
「たしかにそうです!さすがご主人様です。」
ちょっとポイント稼いだな。
「このピンクのドレスとルビーを身につけるとなかなか良いんじゃないか。」
買ってきたドレスをリムに渡す。
「おお、ショウ、ありがとう。早速着てみよう。」
「お嬢様、それは山小屋でお願いしますね。着ただけじゃ済まなくなるでしょう。」
リムはふくれている。
「そうだ、今日、メイガヘリスはこっちか?」
「はい、呼んできます。」
ほどなく、メイガヘリスが顔を出した。
「突然ですまないが、このルビーに装飾を付けることはできるか?」
「はい、どのような装飾でしょうか?」
「レンドル公爵の紋章だ。リムわかるよな?」
「紋章か?たしか旗があったよう気がするが。わらわはそのようなものは必要ないぞ。」
「いや、俺の気持ちだ。受け取ってくれ。」
「スティリアスのペンダントで思いついてくれたのだな。感謝の言葉もない。」
「あ、そうだ。ドタバタしてて忘れてたが、スティリアスの紋章がわかったぞ。」
「なんじゃと、なんでそんな大事な事、忘れるんじゃ!」
「えーと、すまん。コンポロ島の王家らしい。」
リムとエリーンが卒倒した。ふたりを起こして、顛末を話した。
「さすが、ショウさんですね。やはり目が高いですね、手当たり次第じゃないんですね。」
エリーンの発言にリムの後ろに黒い何かが拡大する。やめろよ。
「キャリアス船長もこれからどう動くかわからないが、何か言ってくるかもしれないな。」
「そうですね。王をたぶらかした人間は火あぶりにしろ、とか。」
エリーン、それは無いだろ。
「とりあえずは静観しかないだろう。スティリアスも直ぐにどうにかしたい、という風でもなかったからな。」
俺の意見にリムもエリーンも同意した。
「メイガヘリス、旗とかの知識はあるのか。」
「親方の資料にあります。どういったことでしょう?」
「色とか大きさは決まっているのか?」
「ベースの色は種族によってほぼ決まっているようです。空の民は青、森の民は緑、谷の民は茶色、霧の民は灰色とかですね。大きさはいくつかあります。儀式用の大サイズ、戦闘時の中サイズ、歓迎用の小サイズ、などです。」
「作ることは可能か?」
「はい、染料さえそろえば難しくありません。」
「そうか、忙しいところすまんが頼まれてくれるか?」
俺の指示をリムたちは訳がわからないという感じで聞いていた。
昼過ぎには町を出て荘園に戻った。盆地南端の設備はほぼ完成していたが、俺はいくつか追加でシュレンニトルに頼んだ。
山小屋の広場でサイクスを呼び止めた。
「お義母さん、ちょっといいでしょうか?」
「はい、何ですか、またやらかしましたか?」
「い、いや、まだやらかしてません。霧の民の部族には旗なんかはあるんですか?」
「旗ですか、昔見たことはありますが、どんなでしたか、あまり覚えていません。どうしてですか?」
「戦に備えて、いろいろ準備したいと思ってます。ポポゼウル長老に聞いていただくのは可能でしょうか?」
「戦ですか。戦は嫌ですが、避けられないこともありますね。分かりました。聞いておきます。」
「それと、もうひとつ。」
俺はポポゼウルへの伝言を頼んだ。
その夜には、ペイニャに飛んだ。ふつうなら時差で大変だが、俺には下北沢で寝て時間を稼ぐという技がある。異世界のみんなは俺が寝ずに働いていと勘違いしているがそれはそうしておこう。ペイニャではまだ早朝だ。コントルホーンが色々と見て回っているようだが、モウルの屋敷の横に食堂があり、そこでコントルホーンを見つけた。
「コントルホーン殿、おはようございます。」
「これは、ショウ様、おはようございます。先日はありがとうございました。昨晩はお見掛けしませんでした、今お着きですか?」
「はい、さきほど。こちらは色々見ましたか?」
「まだこれから開発が進むようですが、畑にしても良い場所がたくさんあります。発展しそうですね。それに皆さんが目に力があります。」
「それはよかった。」
「自信を持って、父に進言できます。それにこれは別件ですが、迷宮を使って移動する際に、レベル上げまでしていただきまして、経営を手に入れました。」
「おお、それは素晴らしい。これからますます父上の助けができますね。」
「はい、なんとかカソーピアの支配を脱したいのですが、向こうには7大僧正がいますから。」
「7大僧正ですか?」
「はい、シンリアスでもコンポロでも駐留するカソーピアの人間はそれほど多くありません。しかし7大僧正が定期的に巡回しており、今までの反乱はすべて鎮圧されました。」
「7大僧正とは何者ですか?」
「さあ、私たちにもわかりません。ただ神から賜った聖なる神器を操り人間を高みに登らせる、と言われています。」
「それは人間が神から祝福を受けているというカソーピアの宗教ですね。」
「そうだと思います。確かに7大僧正がくると、我々は全く歯が立ちません。」
7大僧正か、強そうやな。
「我々も迷宮で力を付けてはいますが、その大僧正に勝てるかはわかりません。」
「いや、皆さんにご迷惑をかけるわけにはいきません。」
気になるのは、神器というのだ。人間に作れるとは思わない。本当に神の祝福なんてあるのか。それとも、あの海の民の特技と関係あるのかな。あいつのところにまた行きたいとは思わないが。
「来週にはキャリアス船長がこちらに来るでしょう。その時にシンリアス島にお戻りください。」
「はい、もう少し勉強させていただきます。」




