リムの里帰り
しかし俺の危機は去っていなかった。その夜、山小屋に、リム、エリーン、サイクスが集まり、俺と、スティリアスとペルカが呼ばれた。
「ペルカはどうして船に乗っていたんですか?」
エリーンが詰問する。ペルカは得意の泣きながらの土下座攻撃をはじめた。今日は逃げれんぞ。
「すいません、すいません。ご主人様が心配で。許して下さい。」
「おおだこが出たときはペルカさんが前に出てくれて頼もしかったですよ。」
スティリアスがかばう。お前はやさしいな。美人だし、キスしたい。すったもんだはあったが、最後は3か月スケジュールからはずすと、夜のスケジュール管理担当のエリーンから判決が下った。しょうがないな、船でカウント稼いだし。
「それで、どうやって赤道を通過できたのじゃ?」
いよいよ本題に入った。脇汗が止まらない。
「赤道の管理は海の民がやってたんだ。」
「海の民は本当にいたんですね。」
サイクスが驚きの声をあげる。
「はい、上級種でした。」
「どうして上級種とわかったんじゃ?」
「俺の鑑定スキルで確認した。」
嘘だけどね。
「どんな種族なんですか。」
「船から見ると上半身は人で下半身は魚のようでした。」
スティリアスが証言する。
「おおだこを自由に操るのか?」
「使役という特技があるようだ。いままで赤道を渡ろうとした船はそのおおだこに沈められたようだな。」
「どうしてそんなことをするのじゃ。仮にも上級種なら知性はあるんじゃろう?」
「それが、その種族の伝承で、奴らの存在意義は北と南を分けて秩序を守ることらしい。」
「北と南を分けるというが、ゲートを使えば行き来できるではないか。」
「よくわからないが、たしかに北と南が自由に行き来できれば、カソーピアみたいな奴らが船で侵攻してくることにはなるな。それと、」
「それと、なんじゃ。」
「俺の推測だが、一番の意味は空の民と大地の民を分けておくことにあるんではないかと思うんだ。」
「どういうことじゃ。」
「上級種は強力だ。それが戦ったり、協力すれば、世界のパワーバランスは崩れる。世界の秩序というのはそのことではないかと推測してる。」
「なるほど、それはあるかも知れんのう。」
みんなが少しの間沈黙してそれぞれ考えた。ペルカは違うようだが。
「それで、どうして、船は助かったのですか?」
いよいよ本丸にエリーンが切り込んできた。
「そ、それは、向こうのボスと話し合ってな。」
「話し合ったんですか?」
みんなの目が痛い。
「そ、そうだぞ。」
「どんな、話をしたんですか?」
「それは色々な。」
「スティリアス、海の民のボスは雄でしたか雌でしたか?」
エリーンが逃げ場を塞いでくる。
「よくわかりませんが、胸は大きかったような。たしか裸だったような。」
「ショウは胸の大きいのが好きだからのう。」
リムの後ろに黒いものが現れる。これはあかん。
「まあ今回は、緊急事態でしたからね。ショウさんもそれしか手がなかったんでしょう。スティリアスさんの時とは違いますから、許して差し上げてはどうですか?」
さすが、お義母さん!天使に見える。リムは納得していない感じだったが、今回は執行猶予になった。
夜の裁判はなんとか切り抜けたが、カソーピアの脅威は変わらずだ。その夜リムと風呂に入りながら、
「そろそろ、実家に警告したほうが良いんじゃないか?」
「そうじゃな、ちょっと行ってくる。ところで人型の服はいつ買ってくれるんじゃ?」
「じゃあ、一緒に俺も町に行って買おう。」
翌朝、エリーンに乗って、俺とリムは町に向かった。
「この3人だけは久しぶりじゃな。」
リムは嬉しそうに言う。こうしているとほんとにまだあどけない。そんな子が領主の重圧を担っているんだと改めて思う。
「そうですね。あの時踏み潰さなくて良かったです。」
俺がそれに反応して、エリーンを後ろから色々触ると、リムが怒り出す。束の間の楽しい時間だ。夜には町に着いた。ハルカが町の屋敷で出迎えてくれる。
「お姫様、ようこそおいでくださいました。」
「おう、これは素晴らしい屋敷じゃのう。ハルカは町で頑張っていてくれて感謝しておるぞ。」
ハルカはリムを二階の奥の部屋に案内した。
「これがお姫様の部屋です。ごゆっくりしてください。」
「この部屋も豪華じゃのう。」
「お嬢様、この部屋は今日だけですのでしっかり味わって下さいね、明日からは公爵領に泊まりますので。」
「どうしてじゃ、わらわはこっちが良いぞ。」
「えーと、ハルカはずっとこっちなので、回数が溜まっていますので、お嬢様は向こうに泊まった方が良いと思いますが。」
エリーンがスケジュール表を見ながら呟く。リムが涙目で頷いた。俺がリムの頭を撫でながら大部屋にいくと質素な食事が用意されている。メイガヘリスとメイガニィールも参加して食事が始まった。
「メイガニィールも商売は慣れたか?」
「はい、お姫様、店の運営を任せてもらっています。」
「それは、すごいのう、まだ4歳じゃろう。」
「先週5歳になりました。トラブルの時だけ母に相談してます。」
「私は最近、情報収集に力を入れています。」
ハルカが飲み物を注ぎながら言った。
「ほう、どんな感じじゃ。」
「畑の民の疫病は、レンドル領だけではなく、ポートビアン領やフリクリス領でも広がっているようです。どちらでも穀物の不足が深刻になってきています。」
「それは大変じゃのう、輸入を始めてるのか?」
「それが、この数十年は自給していましたから、それぞれの町の商人は昔の伝手を使って輸入先は探していますが、値段が高いのです。」
「そうなると使用人を減らさないといけないということじゃな。」
「そうですね。その影響で町でもすこしずつ飲食店が閉店しています。」
「ハルカの商売も苦しいのか。」
「売り上げは落ちてますが、使用人を減らしてなんとか。」
「薬は利益が大きいから、無理しなくていいぞ。情報収集の効果は大きいからな。」
俺の言葉にハルカはにっこりした。リムの視線がちょっと怖い。
「メイガヘリスもペイニャまで面倒みてくれてすまんのう。」
「いえ、色々経験出来て楽しいです。港を作って造船所を作るなんてなかなかできませんから。」
「あまり無理するでないぞ。」
「エリーンさんから専任の草原の民を付けていただいたので、助かっています。」
6歳で社有車付きだな、凄いわ。
「それと、これをどうぞ。」
メイガヘリスが大きなルビーを取り出した。
「これは凄いな、カットが美しい。じゃあリムのドレスを買ったらつけてもらおう。」
リムが嬉しそうにしてる。これで駄々こねずに公爵家に泊まってくれそうだ。




