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シンリアス島

二日後、ポンディアン号はモウル領を後にして、西に向かった。

「東廻りの方が少し近いのですが、なるべくカソーピアには近づきたくないのと、海流が良いので、西廻りで行きます。」

緯度は低いが、シンリアスはペイニャからはちょうど裏らしい、ということはジェローリアとは結構近いな。赤道は挟んでるけれど。船は順調だと2週間でシンリアスに着くようだ。海流はあるとは言え結構速いな。必要な補給を済まし、翌日船は出発した。

赤道に近い海の風は暖かくて気持ち良い。夜の甲板で風に当たっていると、下からペルカがでてきた。なんでいるんや!

「ちょうど、同胞をモウル領に引率してきたら、小舟を漕ぐのに同胞が乗ると聞いたので代わってもらいました。」

「おまえ、任務放棄してこっちに来てると怒られるぞ。」

「何かあったら、私もお役に立ちたくて。」

ペルカが俺の腕を握る。その気持ちはありがたい。

「それに、スティリアスとシュレンジュさんだけで2週間だと、ご主人様も飽きるかと。」

そっちが本音か。後でエリーンに言いつけよう。


2週間でシンリアスに着いた。

「今晩島に近づいて小舟を降ろします。準備をしてください。もし夜中にカソーピアの巡回船に見つかったら、ポンディアル号は離脱しますので、その場合我々は島に隠れて次に船がくるの待つことになります。」

みんなに緊張が広がる。小舟には全員の鎧や盾を隠しているが、上陸時は武装できない。ロストリンは武装に関係なく強そうだけどな。その夜は小さい方の月が出てるので、それほど暗くない。不運だ。小舟を降ろして、漕ぎ手のペルカたちドワーフ6人と上陸する6人が小船に乗り込む。ドワーフのパワーは凄い。どんどん加速して半時間で港に着く。シンリアス西の港はカソーピアの人間は常駐していないらしい。港に小舟が着くと、俺たち6人は素早く上陸して、キャリアスの手引きで小屋の一つに案内された。

「ここでお待ちください。長老を呼んできます。」

獣人は暗くても目がみえるので、キャリアスはそういうと出て行った。スティアスとロストリンも戸を少し開けてまわりを警戒している。さすがやキャッツアイ。一時間ちかくたち、俺たちがじりじりしていると、スティリアスが声をあげた。

「来ました。」

キャスリアがふたりのオークを連れて小屋にはいった。オークや人間は暗いと見えないので不便だ。手探りで座る場所を探す。

「こちらは西の長老、ビルブテント殿とご子息のコントルホーン殿です。」

女系だから名前が違うんだな。

「こちらはペイニャ荘園の長、ショウ様です。」

俺たちは手探りで挨拶をして、握手した。

「あまり時間もとれませんので、来る途中に大まかな話はお伝えしてきました。」

「それは、キャリアス船長ありがとうございます。夜中に突然訪問の無礼お許し下さい。」

「キャリアス船長からショウ様のお噂は聞いております。こんなに早くお目にかかれるとは嬉しいです。もっとも、見えませんが。」

なかなか腹がすわっている。気に入った。

「私はカソーピアが近いうちにまた事を起こすのではないかと懸念しております。今はジェローリアとペイニャに荘園を持っておりますので、国力の増強を図っております。こちらの島もカソーピアの抑圧に晒されていると聞いています。そんな状況に不満をもつ人がいれば、わが荘園に来ていただきたく、お願いに参上いたしました。」

「ショウ様がわざわざ直接来訪いただいたことは、重く受け止めております。カソーピアに不満を持つ者はたくさんおり、ショウ様の元に行きたいと考えるでしょう。しかしながら、」

「何か問題がありますか?」

「今日初めてお目にかかって、安請け合いするのも長老として少し躊躇するところがあります。お許しいただけるのなら、息子をペイニャの荘園に連れて行っていただくことは可能でしょうか?」

「それは、むしろ歓迎いたします。よく見て、ありのままを知っていただきたい。」

「宜しくお願いします。」

どうも最後はコントルホーンが言ったみたいだ。暗くてよくわからん。その後、人数や条件について詰めた。暗闇の交渉は新鮮だ。

「ひとつ伺ってよろしいですか?」

「なんなりと。」

「こちらの島では疫病などはやっておりますか。」

「いや、この島ではこの30年は疫病はありませんな。南半球には畑の民の島がここ以外にふたつありますが、その一つでは疫病が流行していると聞きます。それがどうかしましたか。」

「いや、それなら結構です。おきになさらずに。」

1時間ほど暗闇の会話をしたあと、俺たちは小屋を後にして小舟に戻った。

「私はひとりではもどれませんので、明るくなるまで小屋におります。」

コントルホーンを加えた7人はドワーフの漕ぐ小舟でポンディアン号に戻った。小舟を引き上げ終わった時に、それは起こった。

「ご主人様、船団です!」

スティリアスが小さく叫ぶ。なんだって!

「帆を上げろ。北に舵をきれ!」

キャリアスが次々と指示を出す。

2時間ほどすると夜が明けて、追走する船が鮮明にみえる。一キロほどに迫ってくる。6隻いるぞ。

「これは張っていたようですな。」

6隻の船はこちらを追い込むように追いかけてくる。これはまずいな。ペルカや護衛は防具を装備してMP薬を確認して、戦う気満々だ。むこうの6隻も戦闘員を満載してるな。これは楽勝とはいかない。獣人の船員やコントルホーンを守り切れないかもしれない。どんどん北に追い込まれて行く。

「これ以上北に行くと赤道ですな。進めません。反転して戦いますか?」

キャリアスが苦悩の表情をする。

「このまま前進しよう。」

「えっ、それは。」

「キャリアス船長、ご主人様の指示どおりでお願いします。」

「スティリアス様、それでは、赤道に。」

「私はご主人様を信じております。」

「御意に。」

キャリアスも腹を括ったようだ。20分ほど進むと前に大きな渦が出現した。追跡する船はその渦を見ると次々と反転していった。渦からおおだこが姿を現す。クラーケンだな、これはあかん。船員たちは恐怖で騒ぎ出し、ペルカ達は剣や斧を構えた。

クラーケンのまわりに小さな渦が次々と現れた。まだ来るのか。20体ほどの人魚がその渦から現れた。


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