獣人の王
キャスリア船長が来たらそのまま、シンリアス島のオークと直接交渉しようとしたが、その件で揉めた。
「ショウは弱いんだから、しっかり護衛をつけねば、わらわも行くぞ。」
リムの同行はエリーンとシュレンジュに即座に却下された。いつものことだ。
「初めて会うのですから、あまり威嚇的になってもいけませんね。ここは中級種も避けた方が良いかもしれません。」
シュレンジュの発言にエリーンが反応した。
「逃げる事態も考えると、私がいた方がいいと思います。」
「いや、シュレンジュの言う通りじゃな。」
リムは自分がいけないのでエリーンも道連れにしようとしてる。小学生並みや。
リムとエリーンが本題以外で言い合ってるが、それは無視して話を進めた。結局、シュレンジュ、ファロメイリン、スティリアス、ロストリンが同行することになった。俺は危機の際、雌7歳のファロメイリンに背負われて加速で逃げることになった。また心が折れる。
10日後にキャスリア船長のポンディアル号がモウル領の沖に現れた。すでに200人近いモウル領の人々は歓声を上げる。大きな船を見るのがみんな初めてだ。カティーサ号より一回り大きいな。ドワーフたちが小舟を出して、沖合のポンディアル号に接舷した。キャスリア船長はほどなく上陸して俺と握手した。
「船長、ありがとうございます。ようこそお越し下さいました。」
「ショウ様、なかなか素晴らしいところですな。まずは穀物を順次搬入します。」
キャスリアをモウルの館の応接室に案内した。モウルも挨拶に出てくる。大丈夫やろか?
「キャスリア船長ようこそおいでくださった。私はここの領主、モウルです。どうぞごゆっくりして下さい。」
棒読みだが、やればできるじゃん。後で聞いたら前日一日シュレンジュに詰められたらしいが。
「これはモウル様、キャリアスと申します。ご挨拶申し上げます。」
モウルは喋らないとすごくちゃんとした領主にみえる。もう喋るなよ。
「今回は危険を冒して穀物搬入ありがとうございました。少しご相談があるのですが。」
「はい、どういう件でしょうか?」
「カソーピアからの脅威が高まっているので、この荘園の強化を急ぎたいと考えております。ついてはシンリアス島からの移住をお願いしたいのです。」
「なるほど、シンリアス島はカソーピアの圧政に苦しんでますから、それに応じる者は多いでしょうな。名案だと思います。」
「それで、よろしければ私どもをシンリアスまで連れて行っていただけませんでしょうか?」
「直接ショウ様がシンリアスに行くということですか?それはどうでしょうか。今回の輸送もカソーピアの巡回船を危うくかわしてなんとかなりました。ショウ様を危険に晒すのは上策ではありませんな。」
「いままで、自ら役目を果たしてきました。今回も時間がないので自ら行きたいと考えております。」
「お気持ちは理解しますが、そんな危険な航海をすれば、シェイトンの友人にも顔向けできません。私どもで安全なタイミングで繋ぎますので、今回はあきらめて下さい。」
その後も押し問答が続いたが、キャリアスは譲らなかった。これ以上はゴリ押しできないので、俺もあきらめた。その後南半球のカソーピアの動きなどを聞いて応接室をでた。廊下には今回同行予定の4人が控えていた。応接から出てきたキャリアスに挨拶した。
「こ、これは。」
キャリアスの目がスティリアスのペンダントに釘付けになった。
「失礼ながら、このペンダントはどうされました。」
「あの、祖母の形見ですが、どうかしましたか?」
スティリアスはきょとんとしている。やはりかわいいな。突然キャリアスは土下座して号泣した。
「ま、まさか、血筋の方が生きていたとは。私も生き延びてきて今日ほどよかったと思うことはありません!」
キャリアス、鼻水でてるぞ。
「どういうことでしょうか?」
モウルや他の者は凍り付いてる。
「このペンダントには、コンポロ島王家の紋章が描かれてます。」
え、えっー!!!
キャリアスを起こして俺たちは応接室に戻った。全員ついて来た。
「もう少し説明してもらっても良いでしょうか?」
「カソーピアはコンポロ島を攻めとったあと、徹底的に王家の関係者を殺戮しました。その探索は島の外まで及んだと聞いております。それなので、王家の血統は絶えたと考えられています。しかしそのペンダントが密かに受け継がれているということは。」
そこまで言うとキャスリアはまた泣き出した。ハンカチ使えよ。
「それはスティリアスが王家の血筋だということですか?」
「王は代々、異能の人が多かったと伝わっています。」
うん、確かにスティリアスは異能だわ。ガチャの達人だし。
「姉さま、そのような話を聞いていたのですか?」
ロストリンがスティリアスに尋ねる。
「いえ、私が覚えているのは、祖母が病床でお前はこのペンダントを持っていなさい、と言われたことだけです。」
「王家の継承は順番ではなく、先代が異能の子孫を指名したと伝えられています。」
少しの間沈黙が支配した。
「それで、ご主人様、シンリアス行きはどうなりました?」
スティリアスの言葉にキャスリアが反応する。
「い、今、ご主人様と言われましたか?」
「はい、ショウ様は私の夫です。」
別の意味でキャスリアがまた倒れた。そうなるわな。
「それは、危険なので無理だと、船長に言われたんだ。」
「そうですか。」
スティリアスがキャスリアをじっと見つめた。
行くことになった。
「我が家は代々、王家の槍と呼ばれておりました。王家の望みに逆らう訳には参りません。たとえそれが無謀でも、王の意思は絶対なのです。」
キャスリアが熱く語る。もう勝手にしてくれ。
「キャスリア船長の家も貴族だったのですか?」
「貴族の端の置いていただいていたと聞いています。」
「どうしても行くならば、万全を期す必要があります。王ご夫妻の護衛は3人ですか。」
「私もご主人様の護衛ですよ。」
キャスリアが怪訝な表情をするので、シュレンジュ以外の能力を告げた。
「谷の民や、畑の民が、そんな戦闘力を持っているのですか?信じられません。」
見世物じゃないが、三人が踊るようにその動きを見せるとキャスリアは口を閉じた。
「一番危険なのは停泊中です。港に着けると敵の船から逃げるのに時間がかかりますから、今回教えていただいた方法で、ポンディアン号は沖に泊まります。小舟で上陸して畑の民の長老と会う段取りに致します。時間的には夜に沖について、夜が明けるまでに島から離脱する段取りになるので、島に滞在できるのは2、3時間でしょう。」
「それで結構です。小舟を早く進めるために、山の民を同乗させていただけますか?」
「はい、なるべく船を軽くしたいので、こちらの船員を半分、ペイニャで預かっていただけますか。」
「その手配をします。」




