モウルの叙勲
翌週、またシェイトン島に飛んだ。今回は南半球の船長と会うのが目的だ。
まず、ロンドビー船長に会い、牛、羊の搬入スケジュールを受取った。そのあといつもの酒場に向かう。今回はスチャイが個室を取っている。
「ようこそ、ショウ様、ちょっと目立つので、今日はこちらでお願いいたします。」
個室にはスチャイ、ホーヘンリに加えて獣人が一人いた。
「キャリアスと申します。ポンディアル号の船長です。」
「ショウと申します。ジュローリアとペイニャで荘園の管理をしております。」
俺たちは握手した。
「ショウ様のお話は良く伺っております。色々規格外の方のようですね。」
「それは、過大評価ですが、ペイニャの荘園の開発も加速したくお力を貸していただきたい。」
「お聞き及びかもしれませんが、南半球はカソーピアの侵攻で大きく揺れ動いております。しかしカソーピアの横暴を止めるために、お力になりたいと考えております。」
「失礼ながら、昔のカソーピアが侵攻した島のご出身ですか?」
「はい、先祖はペイニャの南西にあるコンポロ島で船を作っておりましたが、カソーピアの侵攻を受けて、島から脱出しました。今でもコンポロでは多くの同胞がカソーピアの暴政に苦しんでおります。」
「それは、なんと申し上げてよいやら。」
「武力での奪回は難しいので、恥ずかしながら交易で細々と機をうかがっています。いまは小島に拠点を移して一族で生活しております。」
「それなら北半球への移動も簡単ではありませんね。」
「小島なので迷宮がありません。今日はホーヘンリ殿の手引きで参りました。」
「それは、申し訳ありません。ペイニャの荘園にはキャリアス船長と同じように故郷の島から避難した民の子孫が多くいますので、他人事とは思えません。」
「そうですな、ペイニャには多くの同族が助けていただき感謝しております。今回のご用命はペイニャへの穀物輸送ですな。」
「はい、ペイニャの北に新たな領地を得ましたので、そこにお願いいたしたく。」
「ペイニャの北は山地が多かったような、港はありましたかな。」
「瀬取りでお願いいたします。将来的には港を作りますが。」
「瀬取りですか?」
「キャリアス船長、実は私もジェローリアに内密に穀物や人を運ぶときにショウ様に教えていただいた方法なのです。船は沖合で停泊し、小舟に積み替えて陸揚げしました。」
「ほう、そんな方法があるのですな。」
「小舟はこちらで用意できますので、沖まで来ていただければそこで受け渡しができます。」
「なるほど、それなら港は無くとも何とかなりますな。量はいかほどでしょうか?」
「穀物だけではなく、家畜や、干し肉など、色々をこれでお願いします。」
俺は1キロの金塊を二つテーブルに置いた。
ホーヘンリとキャリアスが顔を見合わす。
「これは金塊ですか?」
「はい、お確かめください。」
「これだけあると、ポンディアル号は貸し切りですな。物資の調達は私の方で何とかしますが、船の都合が付きますかな。」
ホーヘンリが首を捻る。
「同族の荘園です。最優先で船をまわします。お任せください。」
キャリアスは力強く言った。
「物資はどこで調達するのですか?」
「赤道近くにシンリアス島という畑の民の島があります。カソーピアに余剰はすべて輸出するように指示されているのですが、反抗する島民もいて、私はそこから仕入れております。すこし割高にはなりますが。」
「赤道は流れが速く船が渡れないのが不便ですね。」
俺の言葉に、キャリアスは声を落として反応した。
「昔赤道越えを目指した船は一隻も戻りませんでしたが、それは流れのせいではないとの説があるのです。」
「えっ、どういうことですか?」
「私も先祖からの言い伝えなので、確かではないのですが、赤道付近で助けられた同族が死ぬ間際に、海の民にやられたと言ったそうです。」
「海の民ですか?そんな種族がいるのですか。」
「誰も見た者は居ないのですよ。見た者は全て海に引き込まれて殺されるという者もいますし、そもそもそんな種族はないという者もいます。よくわかりません。数年前にカソーピアが懲りずに赤道越えを企んで3隻の船を失ったのは事実のようですが。」
「どちらにしても、我々が赤道を越えるのは、やはり無理なのですね」
「そう考えるのがよろしいでしょう。」
その後、最近のカソーピアの動きや物資引き渡しの段取りを決めた後、いつもの飲み会に突入した。
翌日は昼までシェイトンの部屋でごろごろして、直接ペイニャに飛んだ。二つの島には7時間くらい時差があるので、時間調整のようなものだ。ペイニャにも小さな小屋を作ってくれたので、そこにマーカーはセットしてある。部屋をでると、村はいつものように活気に満ちていたが、すこしざわついている。
「なにかあったのか?」
ちょうど、シウロデールが通りかかったので尋ねる。シウロデールはスティリアスの従兄でレベル40で放牧を取っていたが、レベル50で経営を更に手に入れていた。こちらではシュレンジュの片腕として修業中だ。
「これは、ショウ様、おはようございます。先ほど王からの使者が来訪し、モウル様の叙勲が伝えられました。それでみんなが喜びあっていたのです。」
「おう、それはめでたいな。モウルも喜んでるだろう。」
「そ、そうですね。」
なんか反応がおかしいな。
「シウロデールも実質この国を差配するのだから、頑張ってくれ。期待している。」
「俺みたいなのが、ショウ様のおかげで素晴らしい特技をいただきました。恩返しできるように頑張ります。」
これでシュレンジュの負担が減ればいいんだが。俺はモウルの様子をのぞきに屋敷にむかった。この前は仮だったが、結構いいのが出来ている。屋敷には一応門番も立っている。
「モウル、おめでとう。叙勲の使者が来たんだって。」
おおきな会議室にモウルはドレスを着て、ひとり座っている。着飾るとモウルの金髪や美貌が映えて更に美しい。俺が見とれているとモウルが立ち上がって俺に抱きついた。天国や。
「主様、さびしかった。」
「どうしたんだ。大丈夫か?」
「私は領地なんかいらなかった。荘園で主様やみんなとワイワイする方が良かった。ここだとみんな距離がある。」
モウルが泣くことは珍しい。我慢していた感情が爆発したんだろう。俺はやさしくモウルを抱きしめ、頭をなでる。
「さびしい思いをさせたな。すまない。毎週飛んでくるから許してくれ。」
「主様ほんと?お姫さまに怒られるよ。」
痛いところついてくるな。
「だいじょうぶだ。モウルは大切な妻だからな。」
モウルはじっと俺を見る。ほんとだって!
「今日は屋敷に泊まってくれる?」
「お、おう、もちろんだ。」
「うれしい、主様。」
なんか策略に引っかかったような、気のせいだろうか。
その後シュレンジュ、シウロデール、タンディ、ペンディウルを呼んで色々話した。
「ペンディウル、来週にもこっちにメイガヘリスをよこすから、小舟の製作を進めてほしい。小舟が6隻できるまで、港の建築は停止してくれるか。メイガヘリスは技巧2だからうまくやってくれ。昨日、こっちの船長と相談して、小舟で物資を受け取る約束をした。」
「ショウ様、それはありがたいです。港が使えるようになるには半年はかかりますから。」
「こっちは技巧が多いから頼もしい。できればひと月くらいで上げてくれ。そのころには物資の準備ができるから。」
「はい、メイガリスさんに指導いただきます。」
みんなより年下だけど、まあいいな。
「物資はどれくらい契約されたのですか?」
シュレンジュがしっかり詰めてくる。
「穀物、牛、羊、干し肉などを金2キロだ。あまり期待するなよ。こっちは闇ルートだから高いらしいから。」
「それでも相当な量ですね。倉庫や厩舎の準備を進めます。」
「そうだな、よろしく頼む。それとカソーピアの侵攻の話はした?」
「はい、昨日話しました。ここは島でも北なので、カソーピアから見ると一番遠い場所なので危険は少ないと思いますが、タンディさんとサウサさんが交代で警備の指揮を執ることにしました。」
「私も警備するよ~」
「モウル、領主はどっしりしとけ。」
モウルはふくれっ面だ。リムとおんなじや。
「ご主人様、今日王様から正式に迷宮解放と領地交換を認められました。その結果迷宮は島の人々に開放する必要があります。もちろん入場料をとったりできますが、運営ルールを決めたり、警備を準備しなければいけません。レンドル領の迷宮運営を入手しましたので、それを参考に作っても良いでしょうか?」
「なるほど、色々めんどくさいな。それで頼むよ。警備を雇ったりゲートの施設を作るのに費用がかかるから、この前の金をまず使ってくれ。足らない分はまた出すから言ってくれ。金はいくらでも出すからスピード第一で頼む。」
「はい、ありがとうございます。さっそく取りかかります。」
「シウロデールも良い経験になるから頑張ってくれ。」
「はい!シュレンジュさんに色々教えてもらいます。」
みんな新しい環境でしっかりやってくれてる。
その夜はモウルの屋敷でしっかり対応した。リムにはシェイトンに泊ったことにしとこう。




