カソーピアの暗躍
今回は結構忙しかったな。ちょっと休憩しよう。こっちばかりで生活してるとむこうで浦島太郎みたいになりかねん。下北沢のマンションに戻って、近くのカレー屋にいった。この辺りは旨いカレーが多いので助かっている。正直に言うと向こうの食事は質素で毎日はつらい。たまにこちらで食べるカレーやラーメンが俺の支えだ。安いけどな。翌日は宮脇先輩に進捗状況を聞いた。会社の登記と仮事務所は準備ができたらしい。宮脇先輩の会社の机一つらしいが。あとはシバ商会ともネットで打ち合わせを始めたそうだ。半信半疑で受けてくれた先輩もインドと打ち合わせをして信じたようだ。
「翔くん、最初は疑ってたけど、ほんとにすごいのね。シバ商会がしっかりやばい対応してくれるので驚いた。」
「たしかにやばいですよね。まあ、内密にお願いします。」
「これ以上深入りしたらやばそうだから、そうするわ。」
「それがいいと思います。雇われ社長で何も知らない方が良いです。」
やはり先輩は賢いな。
「ひとつお願いがあるんですが、コンサル時代の同僚で優秀な女性の英米人を紹介していただけませんか。」
「女性限定なのね。若くてピチピチが良いの?」
いやそれは間に合ってます。
「現在英米在住で、誠実なプロが良いですね。先輩のように清濁?み込んでくれそうな。」
「清濁呑むねぇ、コンサルはそんなのばかりだけどね。わかったわ、当たってみる。」
その後、シバ商会に飛んで今月分の宝石を渡し、日本円を受け取る。ついでにうまいタンドリーチキンカレーを食って日本に戻った。こっちで太りそうだ。寒いので箱根の高級温泉に平日2泊した。極楽だな。こんな自堕落な生活をひと月ほど送って異世界に戻った。1時間しかたっていない。毎日、懐中電灯や電池や果物の種を持ってきてるので、部屋は一杯だ。昼寝をした感じになってる。小屋を出るとみんなが忙しそうに働いてる、すまん!ミドリが俺を見つけて近寄ってくる。
「ご主人様、お話が、えっ、どうしました?皆さん大変です!ご主人様が!」
ミドリの悲鳴でみんなが駆け寄ってくる。どうなってるんだ!
「これは悪い疫病にかかったみたいですね。隔離しましょう。」
サイクスが冷静に言う。どういうこと?
「ショウ、なんか変なもの食べたのか?」
リムも聞きつけて飛んできた。涙目になっている。
「い、いや、そんなことないぞ。」
「じゃあ、なんで昼寝しただけで、なんでそんなにむくんでおるのじゃ!」
俺は二日間隔離された。これからは向こうでの食生活に気をつけんといかんな。
恒例のシェイトン島行きだ。きれいなお姉さんはともかく、ここでは男ばかりでばか話ができるので、気分転換になる。いつものようにロンドビー船長と酒場に向かった。
「これはショウ様、こんばんは。どうぞこちらの席に。」
スチャイは100%ここにいるな。いつ仕事してんのかな。
「スチャイさん、毎回お邪魔してすいません。」
「いえいえ、若くて元気な方の話は楽しくて良い。いつでも歓迎です。ああ、そうでした来週ホーヘンリ殿が南の船長を連れてきてくれるようです。ぜひショウ様もお越し下さい。」
「ああ、そうですか、それはありがたい。必ず参ります。ところで早速ですいませんが、牛や羊は買えますでしょうか。」
「牛、羊ですか。食用ですか?」
「羊は食用と羊毛ですね。牛は運搬と牛乳を考えています。」
「わかりました。それなら調達できます。ロンドビー船長、運んでいただけますか?」
「はい、数にもよりますが、大丈夫です。」
「輸送費を含めて、牛が五千コル、羊が二千コルくらいになります。」
「はい、これで買えるだけお願いします。」
俺は1キロの金塊をテーブルに置いた。ロンドビーとスチャイは顔を見合わせた。
「牛100頭、羊220頭ですな。これは輸送に3か月かかります。」
ロンドビーは苦笑しながら答えた。
「南では事件があったようですよ。」
「モーフィア島にカソーピアが手を出して、撃退されたという噂です。」
「モーフィア島ですか。その種族はなんですか?」
「あそこは大地の民ですね、上級種ですよ。大地の民はほとんど他との交流はありません。少数の谷の民が使用人として働いていますが、文明に興味がないようで自給自足の生活なので交易を拒んでいます。そのことでカソーピアはおもしろくないのでしょう。」
「そんな理由で攻め込んだのですか?」
「それがカソーピアなのですよ。私たちにはまったく理解できませんがね。」
「しかし、侵攻は失敗したのですね。」
「大地の民は物理防御が凄いですから、魔法使いを大量に動員しないと、成功はしないでしょう。甘く見たのですな。奴らも何か焦ってるのですかね。」
カソーピア、ほんとにいかれてるな。
「ショウ様、これは杞憂かもしれませんが、」
スチャイが声をひそめる。
「なんでしょうか。」
「もし、カソーピアが大地の民と本格的にことを構えるとなると、ショウ様にも無関係ではなくなるかも知れません。」
「えっ、それはどういうことでしょう。」
「大地の民を制するには魔法使いが大量に必要となります。それを出せるのは。」
「空の民か森の民ということですか!」
「考えすぎかも知れませんが、一応頭の片隅において下さい。」
「助言ありがとうございます。肝に命じます。」
色々むずかしいぞ、これは。
その後はいつものバカ話をして、来週の再会を約して俺は戻った。
山小屋に戻った俺は翌朝、リム、シュレンジュ、エリーンを呼んだ。そして昨日スチャイから聞いた話を伝えた。
「やはりそういうことになったんじゃな。」
リムが重い口を開いた。
「なにか思い当たることがあるのか?」
「もう1年前になるが、カソーピアから父上のところに使者が来たのじゃ。なにやら誼を通じたいような話だったようじゃが、父上は人間、その上評判の悪いカソーピアからの話だったので断ったようじゃ。」
「そんなことがあったんだな。」
「しかしそれ以来は何も言ってこんかったようじゃ。どうも他の3公爵家にも断られたようなのであきらめたんじゃろう。」
「よろしいでしょうか?」
また、シュレンジュが良いことを言うパターンだな。
「もし、私がカソーピアならば、今のところ不自由のない空の民の国に何かの工作をして国力を弱めて、弱みを握ることを目指します。」
さすが外交持ちだ、言うことが怖いな。
「そ、そんなことまでするのか!」
リムが声を上げる。
「外交というのは戦争ですから、手段は選びません。気になるのは、南の荘園で疫病が広がったのはその後ですね。」
確かにそうだ。
「証拠はありませんが、その時期が気になりますね。」
エリーンも同意する。
「ど、どうすればいいのじゃ。」
リムが涙目で尋ねる。俺は動揺するリムを抱きしめて言った。
「今は動きようがない。まずはこの荘園の力を溜めよう。」
シュレンジュとエリーンも頷いた。どうせ向こうでは金がどんどんはいる、俺は金塊を使いこちらをスピードアップすることを決めた。モウルに言って意味あるかは不明だが、シュレンジュから彼女にも状況を伝えることになった。
その後、トリニース、ペンディウル、ミドリを呼んで牛100頭と羊220頭の受け入れ準備を指示した。




