領地争奪戦2
本番までまだ数日あるので参加する4人とリムは中層の下見に出かけた。エリーンはシュレンジュたちと、北の新迷宮周辺を見にいった。気が早い。迷宮競技までは迷宮ゲートの使用料がタダなのも嬉しい。ペルカは迷宮解放要員なので、俺と二人大部屋に取り残された。
「鍛冶場はどうだ。」
「住むところがほぼ完成したので、これから鍛冶場にかかります。」
「弟子たちはどうだ。」
「30人も働く大きな鍛冶場がみんな初めてなので今はわくわくしてます。ビジェイともう一人の鍛冶2で、設計をやり直してます。」
そうか、やはりペルカの案は却下なんだな。
「アカシュは鍛冶する気で来て、ペルカと同じ壁役スキルでショック受けてないか?」
「アカシュお姉ちゃんも結構武闘派ですから、レアスキルには飛び上がって喜んでましたよ。ペルカちゃんと2枚壁だ、とか言って。」
「そうか、それならよかったな。」
そんな話をしているところにゴンフィが現れた。
「ショウ様、ちょっとよろしいでしょうか?」
何度も経験した危機がまた来たな。大部屋の外に出るともう一人エルフがいる。
「モウルの兄、ロフィと申します。今回は色々ありがとうございます。」
「ロフィは人見知りでして、皆さんの前には出にくかったのですが、ショウ様にはぜひお礼を申したいということで連れて参りました。」
確かに優男で戦闘向きではないな。俺が言えることじゃないけど。お、でも調薬2持ってるな。
「モウルからはショウ様が大変すばらしい方だと聞いております。親として娘が尊敬する人と結ばれることは嬉しい話ではあります。娘はああ見えて人を見る目はあるので、その点は安心しております。末永く宜しくお願いいたします。」
モウルは人を見る目があるのか、知らんかった。
「しかしながら森の民は閉鎖的な集団です。ご存知かもしれませんが、カソーピアの横暴もあって、人間に対しての感情は良くありません。貴族の娘が人間と家族になるというのは残念ながら周りから祝福されないでしょう。ですので、娘にはジェローリアでひっそりと幸せに暮らしてほしいと考えております。」
ゴンフィも色々考えたんだろうな。頭が下がる。
「ゴンフィ様、お考えはよくわかりました。寛大なお心に感謝いたします。ここでひとつだけお約束致します。モウルがフォロス家の面目もたて、個人的にも幸せに暮らせる道を切り開くことを。」
ゴンフィと俺は硬く手を握り合った。良かった、理解ある父親で。
そして領地競技当日を迎えた。まだ暗いうちにコンテルフォ迷宮の入り口に参加パテがすべて集まる。ここで抽選が行われて、どの迷宮で何番目にスタートするかが決まる。結構ケンタウロスが多いな。スピードが勝負だから傭兵なんだろう。抽選結果が大きなボードに張り出される。読めないけど。枠から見るとどの迷宮も7パテが入るようだ。
「スフィージアの6番目になった。」
2時間ごとに次のパテが出るので、モウルの出番は夕方だ。リム、ペルカと参加メンバーはいったん宿に戻る。昼過ぎまでゆっくりして、いよいよモウルたちは迷宮へと向かう。
「悔いのないようにな。」
「はい、主様。」
モウルを抱きしめると、離れない。それを見てリムが騒ぎ出す。いつもの光景だ。
午後になると、コンテルフォの迷宮入り口のボードに各パテの結果が次々と張り出される。
コンテルフィの2番で出た、最有力パテの数字が張り出されるとどよめきが起こる。2時間35分。ゴンフィとロフィの親子もその数字を見てうなだれる。やはり期待してるんだ。
そして日が暮れる頃にモウル達の数字が掲示された。1時間18分!会場全体にどよめきが広がった。ゴンフィとロフィは口を開けたまま、凍り付いている。リムは当然のことのように笑顔だ。俺はゴンフィとロフィと握手した。
「ショウ様、言葉がありません。」
「実はこれでも予定より遅いんです。」
少ししてモウルのパテが地上に戻ってきた。
「すいません。前パテに追いつきそうになっちゃって少しスピードダウンしたんです。」
サイクスが顔を合わせるなり謝る。
「いや、みんなよくやってくれた。」
俺も最後は言葉にならない。
「ゲロ、大丈夫だった。」
サフィアスお前は喋るな。
ゴンフィはモウルを抱きしめる。
「モウル、お前は素晴らしい仲間を持ってるんだな。大切にしなさい。」
モウルは次に俺に抱きついて来た。
「主様、みんなすごく頑張ってくれた。嬉しい。」
モウルは泣いている。今日だけはリムも一緒に泣いている。ペルカは号泣だ、鼻たらすなよ。
夜も遅くなって、結果が発表された。文句なしの一番だ。表彰状を貰ったあと、新規領地の場所確認となった。みんなが当然フォロス家領地の隣接地を選ぶと思っていたが、モウルが北端の地を指定したので、また動揺が走った。ゴンフィも驚いている。
「ど、どういうことですかな、これは。」
「ゴンフィ様、草原の民を連れてきていますか?」
「はい、二人同行させております。」
「明日一日お付き合いいただけますでしょうか?ご説明します。」
「はい、わかりました。」
翌朝暗いうちに、俺、リム、モウル、ゴンフィ、ロフィ、ペルカ、サフィアス、サイクス、フォイヘス、ケンタウロス2人がコンテルフォからスフィージアに移動した。迷宮を出ると、そこにはエリーンたちが待っていた。こっちでも昨日の結果は掲示されている。
モウルパテのメンバーがエリーンたちとハイタッチしている。
「この方たちは?」
ゴンフィが尋ねる。
「荘園の仲間です。ここから走ります。」
4人のケンタウロスに分乗して一同は半日疾走して、昼には簡易テントのある所まで到着した。
「これが、モウルが選んだ土地です。」
「ここですか、山と海ですね。良いところですが、遠いですね。」
「こちらを登って下さい。」
シュレンニトルが既にケンタウロスも昇れる足場を築いていた。
「こ、これは。」
「そうです。モウルの新迷宮です。」
「主様、これは主様の、」
モウルの言葉をいつものように遮る。
「いや、これはモウルの迷宮だ。」
「こ、ここまで準備されていたのですね。」
ゴンフィとロフィは震えている。
「正式に土地がモウルのものになったので、これから開放してきます。」
「これから、ですか。もう進んでいるのですか?」
「いや、まだ誰も入っていません。」
「それなら、長期戦になりますな。」
俺は笑顔でそれをスルーした。
「それじゃ行こうか。」
「はい!」
俺、モウル、リム、エリーン、ペルカ、サフィアス、サイクス、フォイヘスは迷宮に入った。ここでリムは妖精に戻って思いっきり闇魔法を打とうとしたが、問題発生だ。妖精サイズの服がない。今回ずっと指をくわえて見物ばかりだったので、戦うと言ってきかない。結局サイクスのハンカチを裸の背中にかけて戦った。何してんねん。出てきた魔物がかわいそうなくらいオーバーキルで魔物は蹂躙されていく。二人のケンタウロスの背中にみんなが乗る、舐めプだったが、アッという間に30階層に到着した。モウルが色々言ったが、モウルにゲートを開けさせて、名前を付けてすぐに帰路についた。
ゴンフィとロフィは簡易テントでシュレンジュ達から昼ご飯を振舞われている。
昼ご飯が終わって少しすると、俺たちは帰ってきた。
「迷宮ゲート解放完了しました。オーナーはモウルで名前はショウル迷宮です。これでフォロス家も迷宮持ちの貴族ですね。」
ゴンフィとロフィはもう驚きが多すぎて反応できない。
「そこでお願いがあります。ここの開発に50人ほど一族の人を出していただきたい。先日お約束したとおり、モウルはここの領主として、私の家族として、しっかりと役目を果たすと思います。ここには迷宮があり、港も作ろうと思っております。それを果たすためには彼女を支える民が必要なのです。」
「ショウ様のようなとてつもない方に支援いただき、娘は幸せです。また迷宮持ちという素晴らしい名誉もいただき感謝しかありません。このご恩に報いるために当家はすべてを結集いたします。50人の件はお任せください。それとこの島には領地に関する法律があります。その一つは報酬制度です。迷宮を解放すると5ブロックを無条件で与えられます。なので、ここは迷宮競技報酬の3ブロックに加えて、迷宮解放を王に報告すると5ブロック追加で入手できます。」
それは初耳や。
「また、領地交換制度というのがあります。領地交換を王に申請すると、公告がだされ、異議がないと認められます。分家などを作ることに主に使われています。今当家は60ブロックを所有しておりますが、2ブロックをこの付近の土地と交換します。そうしますとここも正式に新たな貴族領として自立できます。」
「私はそんなの要らないよ~。」
「モウルは領主になっても俺の家族だ。」
「じゃあ、貰っとく。」
言い方無いんか!
その後色々と打ち合わせを行い、ゴンフィとロフィは帰って行った。
「さあ、俺たちも一度戻ろうか。みんなありがとう。」
ショウル迷宮からリショウム迷宮へ飛んだ。タダだからいいわ~。




