領地争奪戦1
「フォイヘスが即死回避とったからこれで万全だな。」
「ありがと、主様、お礼にまた無理やり、、」
とりあえずモウルの口を塞いでおこう。
「サフィアスが酔わないように鍛えろよ。」
俺は捨て台詞を残して走り去った。
少し早いがロンドビーに会い行くことにした。南半球の件、相談せんとな。コンペペの部屋に翌朝飛んだ。この前はゆっくり部屋を見なかったが、明るいところで見るとなかなか味がある。木に年季が入っているが、良いつくりだ。一人で居たいときはこっちに来るのも良いかも。あ、下北沢で十分だな。ベットに転がって天井をしばらく見上げていたが、廊下を歩く音に気付き、ドアを開けた。ロンドビーがいる。
「これは、ショウ様。予定より早いですな。」
「少し相談事がありまして来ました。お時間ありますか?」
「もちろん、コーヒーいかがですか?」
「ありがとうございます。いただきます。」
ロンドビーの出してくれるコーヒーは旨い。これだけでも来る価値があるな。
「ロンドビー船長は南半球に伝手はありますか?向こうで物資の運搬を頼みたい件がありまして。」
「南半球ですか?知り合いはいますが、南半球は色々と複雑なのです。南には人間の大国、カソーピアがあります。彼らは人間だけが神の加護を受けている、という宗教を国民に押し付けています。そして船を大量に保有していることを良いことに海の通行にも介入しています。」
「つまり、自由に物を運べないということですか。」
「どのような目的で何を運ぶかにもよりますが、正規の手続きでは色々大変です。その為に南半球では島の間での交易が先細りになっています。」
「なるほど、そのカソーピアは何のために交易を統制したがるのですか?」
「自分の島の物資だけを使えということでしょうな。自分勝手な話です。」
「しかし人間は下等種なのに、中級種や上級種に盾つくということですか。」
「無論、迷宮ではそうかもしれませんが、国単位になると、そう簡単ではありません。頭数だとカソーピアの人間はペイニャの森の民の百倍いるでしょう。消耗戦になるのは人間の思う壺です。」
「船を持ってるのが人間だけというのも厄介ですね。」
「そうなのです。しかし蛇の道は蛇ですから、監視の目をかいくぐって輸送を受ける奴もいますよ。リスクが高いので値段も高いですが。」
「なるほど、ぜひ紹介していただきたいものです。」
「それでは折を見て参りましょう。ここだと迷宮が遠いので次にトロンビアに荷揚げしたときで宜しいでしょうか?」
「それほど急ぎませんので、その時にお願いいたします。」
「残りの畑の民の輸送ですが、少し前倒しでできそうです。20日後に港で良いでしょうか?」
「はい、その予定で受け入れ準備をします。」
いままで、いろんなところで人間の評価を聞いたが、同じ人間のトロンビーの冷静な分析は特に心にのしかかる。どうして島の中でおとなしく、平和に暮らすという考えにはいたらないのだろうか?それが人間の本質なのかも知れない。
シェイトンから戻った後、オーク第2陣の受け入れの段取りを指示した。今回は日程が決まっているので準備は楽だ。エリーンの義兄トリニースに運営を任せる。新しい人が増えたからいろいろ試さんとな。
北の監視所兼鍛冶場ではドワーフたちが住居や作業場を建設している。南の草原ではオーク達が住居と畑を作っている。ケンタウロスたちは物資運搬に頑張ってくれている。みんなが働いているなかで申し訳ないが、俺は山小屋の前の広場でまったり過ごしている。今日はリムがエリーンと鍛冶場に出かけたので平和だ。シュレンジュ親子とファロビンス親子がやってきた。
「おう、シュレンジュ親子は経営のプロなので期待しているよ。」
新たに経営を手に入れたシュレンパウスは少し緊張している。
「母さんに色々教えてもらって頑張ります。」
「まあ、そんなに肩に力入れずに、ゆっくりでいいよ。シュレンパウスも字が読めるようになったの?」
「はい、突然字の読み書きができるようになり、驚きました。」
ほんとに、どうなってんねん。
「私はモウルさんの領地経営の支援を中心にして、こっちは娘にまかしていこうと思います。」
既にモウルが領地を手に入れるのが前提なんだな。
「おう、そうだな宜しく頼む。それと、外交って特技はなんなの。」
「それはまだ良くわからないんですが、ひとつ変わったのは、どの種族の言葉でも理解ができるようになりました。」
「え、それは凄いな。字も分かるの?」
「はい、ですからご主人様のお手伝いもできます。」
これも滅茶苦茶や。助かるけど。
「シュレンビータも採掘2だね。よろこんでるだろ?」
「もう鍛冶場にいって、山の民と一緒に働いています。山の民も一目置いてくれるので楽しいようです。」
「それはよかった。ミドリも農業2って凄いね。どんな特技なの。」
「説明には、どんな植物でも育成できるってあるんですが、具体的にはよくわかりません。」
「そうなんだな。こんど何か珍しい植物を持ってくるよ。ファロピピンも調薬2まで行ってすごいな。森の民もびっくりだぞ。」
「モウルさんに色々教えてもらって、感謝してます。これからもっと役にたてるように頑張ります。」
「まあ、あんまり頑張らずに、徐々にな。」
オーク達も元気にやってくれてる。
そうこうしてるうちにモウルの領地競技が近づいてきた。競技に参加する4人に加えて、見物や事後に備えてペイニャに渡りたい人が何人もいる。リムも行きたがったが、上位種は入国できない。
「リム、どうしても行きたいなら、人型で行くか?」
「わ、わらわが人型でずっといるということか?そんな恥ずかしいことはできんぞ。」
「じゃあ、留守番だな。」
「そ、そもそも人型の時はいつも裸なので、服がない。」
やや不穏当な発言だが、確かにそうだ。
「ハルカがこっちに何着か人型の服を置いてます。体型的には着れるんじゃないでしょうか。」
シュレンジュが横で聞いて口を挟む。確かにやせ型Bカップという意味ではそうだな。
「そ、それならちょっと試すだけ、試してみるのじゃ。」
「どうじゃ。」
「今回は目立たないほうが良いから、ちょうどいい感じだ。かわいいぞ。次は人型用のドレスを買ってやろう。」
休日に部活に行く女子中学生といった感じではあるが、リムは黒髪の美形なので悪くない。
「そ、そうか、約束じゃぞ。それなら今回はこれで行くことにしよう。」
競技参加の4人に加えて、俺、リム(人型)、エリーン、シュレンジュ、ミドリ、シュレンニトル、ペルカがペイニャ島に移動した。ペイニャ島は10年に一度のお祭りムードで迷宮のゲートも混雑している。宿泊施設はペイニャには多くないがモウルの実家がコンテルフォ(島の東の迷宮)のホテルを取ってくれていた。
「皆さん、ようこそお越しいただきました。モウルの父のゴンフィと申します。本来は屋敷でおもてなしすべきですが、なにせここから遠いのでこの宿でお許しください。」
「ジェローリアで荘園の管理をしておりますショウと申します。今回領主は上級種なので、入国できず、代わってご挨拶申し上げます。」
一行の後ろのほうでリムは人型でリラックスしてる。
「今回フォロス家は領地競技に参加できないものと思っていたところ、モウルが予選を突破してくれただけで一族の面目は保たれました。そのうえそちらで競技メンバーまで用意いただき恐縮です。無理をせずに参加いただければと思います。」
「父上、今回一番とるよ。」
親にもため口か!ゴンフィは娘を無視して続ける。
「今回はペイニャ最大の貴族が傭兵を雇い、万全を期しております。娘は加速を習得して予選は走り抜けましたが、中層ではそうはいきません。くれぐれも無理はお控えください。」
また走り抜けるんだけどな。更にモウルが何か言いそうだったので、後ろから尻をつねる。
モウルは嬉しそうに振り返る。勘違いするなよ。
「今は島の宿はどこもいっぱいです。すいませんがこの大宴会場を皆さんでお使いください。」
百帖はある大きな部屋だ。これはゆっくりできそうだ。
「リム、人型はどうだ。」
「そうじゃな、普通はあまり歩くことがないので足がつかれるのじゃ。」
「それは大変だな。魔法は使えるのか。」
「魔法は使えそうじゃが、MPの保有量が減るので、やはり火力は下がる。それと、シュレンジュが人型を避ける理由がわかったのじゃ。」
「どういうこと?」
「人型じゃと、なんというか、いやらしい気持ちが、溜まって、」
「わかったそれ以上言うな。」




